2024年8月22日木曜日

東京への集中を減らす まず東京大学の移転を

 



旦那さんが青森出身で、奥さんが東京出身の場合、例えば旦那さんが歯科医で、青森県で開業するというと奥さんは相当嫌がることが多い。ケースによっては離婚、単身赴任(奥さんは東京)に至ることもあり、東京出身の奥さんからすれば、青森で暮らすのはよほど嫌なのであろう。逆に旦那さんが東京出身で、奥さんが青森出身の場合はこうしたことは起こらない。

 

この原因として、東京での都会生活に慣れてしまうと、田舎での生活は退屈で、耐えられないということであろう。美術館に行ったり、デパートで買い物、銀座の名店で食事、こんなことができないという。また東京の方が青森より所得が高いのも原因かもしれない。ただ歯科医や医師の場合は、東京より地方の方が収入も多いこともあり、土地や物価も安いので、東京よりリッチな生活ができる。それでも奥さんが東京出身の場合はかなり嫌がる。

 

東京出身の一般的な家庭の子供ことを考えよう。まず小中高は、確実に東京の学校に行く。そして大学もよほどのことがなければ、東京の大学に行く。そして卒業して就職するのも、東京、つまり生まれてから就職するまで、ずっと東京から外に出ないことになる。青森でいえば、高校卒業までは地元にいるが、その後、就職、あるいは進学で。おそらく半分以上の人が県外に行く。さらにいうなら県内に残った人も、何らかの時期に東京などで働くことが多く、2/3くらいの人は県外に住む経験をしている。一方、東京出身で、小中高大学、会社も東京の場合、会社による転勤で初めて県外に住んだという人も多いと思う。転勤のない職場であれば、死ぬまで東京でという人も多いであろう。

 

東京の人に言わせると、東京には全てのものがあるので、わざわざ外に出る必要もなく、何もかも十分に間に合っているというだろう。しかし、ここで考えてほしい。これではまるで引きこもりと同じではないだろうか。家の中にいれば、全てのものがあり、何一つ不満のない閉鎖社会である。引きこもりの人々が外に出るのを極端に嫌うように、東京に人は地方、それも田舎での生活を嫌う。私なら外国にも住みたいし、違った環境、田舎暮らしもいいのではと思ってしまうが。生まれたところで生活し、そこで一生を過ごす、これはこれでいいのだが、東京の場合、こうした人が多くなると、都市としての活力が減るかもしれない。

 

地方の人にすれば、子供を大学に行かせようとなると、地元に国立大学あればいいのだが、私立に行かせようとなると、レベルの高い私立大学は地方になく、必然的に東京など都市部の大学を選ばざるを得ない。さらに言うなら福岡、名古屋、仙台、札幌のような大都市でも東京の六大学に匹敵する私立大学はない。授業料以外にも東京での生活費などを送金するとなると給与の低い地方の親の負担は大きい。一方、東京生まれの場合は、家から通学するとなると生活費は基本的にかからないことになり、大学だけでなく、社会人になっても給料の大部分を小遣いとして使える。地方の人が社会人になり、東京に住むとしよう、仮に25万円給料を貰っても、住居費、光熱費、食費、雑費などを差し引くと、純粋の小遣いはせいぜい5万円くらいであろう。一方、東京の親元に住んで会社に行く場合は、多少、家にもお金を入れたとしても、給料の多くが小遣いとなる。こうした金銭的に恵まれた環境にいることも、地方暮らしを嫌がる要因となる。

 

東京有利な状況を解消することはほぼ不可能であるが、少なくとも地方消滅を食い止めるためには官民含めて取り組みが必要である。実際に種々の取り組みがなされているものの、東京への一極集中はやまない。そのためには、まず若者人口流出の元となる大学入試を改善すべきであろう。大学も一時、国の政策に基づき東京郊外に施設を移転したが、結局、学生は東京都内でも生活を憧れ、郊外のキャンパスを嫌がり、再び、都内のキャンパスに戻った。東京の若者が地方に行く方法としては、地方に魅力的な大学を作ることがある。すでに私の地元、弘前大学の医学部にも多くの東京の若者が入学しており、また秋田国際教養大学にも都会からの入学者も多い。さらに通常の大学ではないが、沖縄科学技術大学院大学にも世界中の研究者が集まっているし、パイロットになりたい人は航空大学校に入学する。東京には、現在、11の国立大学がある。一橋大学は国立市、東京農工大学は府中市、東京外国語大学は府中市、東京学芸大学は小金井市、電気通信大学は調布市など東京郊外にあるが、東京工業大学は目黒、お茶の水大は文京区、東京藝術大学は台東区、足立区、東京大学は文京区と目黒区、東京医科歯科大は文京区、東京海洋大学は港区と江東区、など、いまだに東京都内に多くの大学がある。医科歯科大学は病院があるので都内にある必要があるものの、東京海洋大学が都内にある意味がわからないし、同じく、東京大学は日本の象徴であり、この本山こそ、都内を離れるべきである。東京大学も東京の西、あきる野市くらいに移転すれば、東京に憧れて入学する人は減るし、都内に住む人も、近くではあるが、アパート暮らしになる。東京大学の都内の敷地を売れば移転費くらいは余裕に出るだろう。他大学を郊外に移転させながら、本丸の東京大学については駒場キャンパスさえも移転させない、東京大学の傲慢さは恥ずかしい。駒場キャンパスには教養学部と理学部数学科があるが、ここを売って郊外に移転するマイナス面を教えてほしい。地方からの学生にとっては、東京都内より。例えばあきる野市の方が家賃は安く、生活しやすいはずだ。東京都内に住む学生に可哀想だというなら、地方から東京に来る学生はもっと可哀想だし、東京都内の方が勉強に向いているという人はいないであろう。歴史ある学校をという人は、東京師範学校、教育大学を平気で改名し、つくば市に移転させたことはどう思うのか。まず隗より始めよではないが、東京の一極集中を減速させる一つの方法として、東京大学の郊外移転を本気で議論してほしい。大学の都心回帰のきっかけは工場等制限法の廃止と、文科省の都心部の学部増設、定員増加の認可したことであり、これをやめればいいだけの話である。


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