2008年3月27日木曜日

再治療


 この時期になりますと、治療終了して何年もになる患者さんから連絡がくることがあります。先日も、7年前に矯正治療を終了した患者さんから、「下の前歯がでこぼこしてきた」という連絡が来ました。矯正医としては、ちょっと緊張する同時にどうなっているか気になるものです。実際、みてみると保定装置を撤去して7年なるにしては、下の前歯が少しでこぼこしているだけでした。ほっとしたところです。当時中学生であった患者さんもすでに社会人になっており、ずいぶんきれいになったので、最初誰だがわかりませんでした。この程度のでこぼこでしたら、前歯部にブラケットとつけて3、4か月、あるいは時間がかかりますがインビザラインのような装置でも十分なおります。その旨を説明して検討してもらうことにしました。
 再治療の費用は基本治療費に含まれますので、装置の費用などはかかりません。ただ毎回の調整料は必要です。この患者さんの場合、県外にお住まいでしたので、再治療する場合もこちらでは遠方のため治療できず、近医の矯正医に紹介することになります。その場合は無料ということにはなりません。
 以前は再治療希望する患者さんはすべて無料(調整料除く)で治療していましたが、最近はこれも考えないといけないと感じています。矯正治療を終了した後は、必ず保定装置をつけていただき、1か月、3か月、6か月、1年、1年半、2年後に来院していただきます。保定装置の調整、歯のクリーニングをやり、その後は一応卒業ということにして、何かあれば来院してもらうことにしています。ところが治療終了後、こちらから何度も連絡しても来院せず、1、2年後に後戻りしたといって再治療を希望される患者さんがいます。当然、保定装置は全く使っていません。こういった患者に対しても以前は無料で再治療していましたが、今後はあまりひどいケースでは再治療費を請求しなくてはいけないのではと考えています。自己責任という部分があると思えます。
 保定装置についても、壊れたり、なくしたりした場合、もう一度作り直すことがあります。この場合も保定装置料に含まれますので、原則的には無料です。ただこれも、1、2か月おきになくす患者さんもいて、この場合はあまりですので、費用をとることにしています。そうしないとただだと思い、大事にしないからです。3、4回作りなおし、今度なくしたら有料になりますよと言うと、なくしてはこなくなります。
 矯正治療では後戻りはつきもので、とくに下の前歯の後戻りは避けられません。この理由として、矯正治療直後に起こる、単純な後戻りと、あごの発育、咬む力によるものがあります。後者はきれいな歯並びで矯正治療していないひとでも起こるものです。下の前歯は上の前歯に包まれるように覆われています。そのため下あごが成長すると下の前歯が中に入るような力がかかり、結果的にでこぼこになってきます。成長というと若いひとのみと思われるかもしれませんが、ミシガン大学の研究では20−40歳といった年齢でも筋力の変化によりあごの位置関係が変化します。あたかも成長したかのように下あごが前に出ます。そのためにゆっくりですが、とくに下の前歯がでこぼこしてきます。また上下の歯で咬む力も、ベクトル的には垂直力と水平力に分かれます。この水平力が奥歯を前に動かす力となります。結果的に奥歯が前に少しずつ動き、前歯がでこぼこになるというものです。
 後戻りと再治療、この課題はこれからも一生つきまとう問題です。やれる範囲で対応させてもらいます。矯正治療は高額ですが、実をいうとこの問題があるからです。ある著名なアメリカの矯正医が「後戻りのことを考えなくてもいいのであれば治療費は半分でもよい」と言っていました。床矯正装置などであごを広げて歯を抜かないで治療する先生もいますが、治療費の安さで決めてほしくありません。非抜歯治療で口元が出て、外見が気になる時、抜歯してもう一度治療する場合や、後戻りが出た時の再治療費はいらないのか、よく相談されたらよいと思います。それもすべて治療費に入っているならきちんとした歯医者さんなのでいいと思います。

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