今年は映画監督、小津安二郎生誕110周年ということで、雑誌や本での特集があいつぐ。Brutusの12/1号でも「小津の入り口」と題して、小津について、様々な角度から分析をしている。こういった月刊誌はいつから企画して特集を組むのか、よくわからないが、相当な準備と時間がかかったに違いない。よくできた特集である。
その中で、有名な小津のローアングルについて、記事があった。色々な角度から写真を撮り、ごくわずかな差により小津らしい画作りが違ってくるのが、よくわかった。10cmのわずかなカメラ位置により、まったく写真の雰囲気がかわる。いわゆる小津らしい画面とは徹底した様式美で成り立つことを立証している。「Shall we ダンス」の周防正行監督の処女作、「変態家族 兄貴の嫁さん」というポルノ映画、私の数少ない、DVDコレクトのひとつだが、この作品も小津のバロディーではなく、完全のオマージュとなっているのが、その作品作りの細かい入れ込みにも現れている。予算が少なく、小津のローアングルを再現できる特殊な三脚がないというハンディにもめげず、よく研究し、再現している。確かに小津をポルノでやるという行為は、神をも冒涜する振る舞いなのかもしれないが、実に真面目に作っている。ただポルノとしては、全く失敗作で、全く興奮はない。
小津の作品については、以前生誕100周年を記念して、BS—NHKでほとんどの作品が上映された。DVDに録画してすべて見たが、印象としたあまりぱっとしない。うちの親父にいわせると、上映当時、あまり人気がなく、2本立ての映画で小津の作品が始まると出て行く観客も多かったという。私のように、いまだにコーヒには砂糖とミルクを入れないとおいしくないという味のわからない鈍感な人種には、小津の芸術性は理解できない。確かに東京物語は、これが世界の映画史上ベストテンかと思うと、すごいなあと感動するが、そういったキャプションがなければ、途中で寝ていたかもしれない。ブラックのコーヒの味がわからない私には、どうも白黒の映画は距離感がある。カラー作品は、「彼岸花」、「お早よう」、「浮草」、「秋日和」、「小早川家の秋」、「秋刀魚の味」の6作品があるが、これらはほとんど過去の作品のリメークに近い。昭和30年代のカラーは独特な色合いをしており、妙に艶かしく、ある意味現実離れしている。確かアグファーという会社のフィルムを使ったように思える。その後、昭和40年代は東洋現像所というキャプションが必ずあり、これもまた独特な色合いであった。モスラなどの怪獣映画の色合いである。
「秋刀魚の味」と「浮草」を載せた。カラーの作品になると、加藤大介や中村鴈治郎など個性派の演技も見られ、「浮草」の最後、中村鴈治郎と京マチ子が列車の中で酒を飲むシーンにはしびれる。映画としても色だけでなく、おもしろくなっている。
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