2013年11月22日金曜日

専門家はウソをつく


 勝間和代さんの新著「専門家はウソをつく」。矯正専門医の私としてはタイトルにぎょっとなり、早速、紀伊国屋書店で購入して速読しました。勝間さんの本は、要点がきっちりと書かれていますので、読みやすく、速読できます。これまでも数冊読んでいます。

 結論から言えば、タイトルは著者も述べているように、商品として読者の注目を与えるためのもので、内容はそれほど過激なものではありません。専門家といえでも、何でも信用するな、よく考えて選択しろというものでした。確かにあらゆる分野に専門家がおり、これだけ情報が氾濫すると、選択する思考が停止し、安易に専門家という言葉に信用してしまう傾向があります。医者、歯科医でも専門医というシステムがあるため、その名称に信用してしまうわけです。著書にもあるように、専門家というのは、その分野に長けた人のことを言い、裏返せばそれ以外のことはあまり知らないということになります。同じことは医療の分野でも自分の専門以外はまり知らないというのが欠点でもあります。私は矯正専門医ですので、矯正の分野では他の歯科医よりは経験も知識もありますが、逆に一般歯科の治療は全くしていませんので、経験はありません。それで知識だけでもと、できるだけ一般歯科の雑誌、講演会にでるようにしていますが、いかんせん実践が全くなく、耳年増の状態であるのは事実でしょう。

 著者は、「信頼性の高い専門家を見抜くための9か条」として、
「1.詳しくない分野は、複数の詳しい人、およびネットに必ず当たること」。これは矯正治療をする場合もあてはまります。できれば矯正専門医院を何カ所か訪ねて意見を聞くべきです。ネットは派手な宣伝をしている医院が目につくので(上位検索やレビュを操作しています)、あまり参考にしない方がよいでしょう。
「2.専門医の実績を経歴ではなく、エビデンス、信頼できる他者評価で把握すること」これについては、経済学者と医者、歯医者とは違うと思います。少なくとも学会が専門医と認定するためには、数年間の専門教育を求めます。経歴で、専門分野での職歴、資格が全くない場合は、素人と考えてもいいと思います。
「3.専門家のアドバイスの裏をとる癖をつけること」あまり過激な宣伝をしている治療法は、インターネットなどで詳しく調べると、その失敗が多く載っています。矯正治療でいえば、非抜歯治療がそれに当たります。「早い、安い、歯を抜かない」と宣伝し、かなりひどい治療をしているところがありますが、どうも患者さんは多いようです。
「4.過剰な自信を持っている専門家は警戒すること」カナダの有名な医師、ウイリアム・オスラーの言葉に「medicine is a science of uncertainly and an art of probability 」というのがあります。医療における科学というのは、例を挙げると胃潰瘍の原因がピロリ菌と判明した途端、それまでの考え、治療法が一気に変わるようなuncertainlyなものなのです。これは多くの医師は知っていますし、そのために学会が雑誌などで新しい研究、理論を学ぶのです。過剰な自信はありえません。

「7.相手の専門性に市場性があるかどうかを確かめる」患者さんが多い、それも長年そういう状態が続いているところはそれなりの評価があるのでしょう。
「8.どんな専門分野でも、少なくとも3人の専門家にアプローチせよ」1と同じになりますが、医療法で広告制限がありますので、自分のところの症例をインターネット上で紹介するのは禁じられています(これを全く無視しているところも多いのですが)。できれば自分と同じような症例の治療結果を見せてもらったらいいと思います。
「9.誰を信じるかは、最後は自己責任、それが失敗しても、学びとすること」

といっても自分がガンになったとすると、どこで治療するかは悩むところです。6条にいうように、できるだけ複数の先生の意見を聞きたいところですし、セカンドオピニオンにも容易に応じてくれて、検査資料なども、気楽に貸してくれればいいと思います。矯正専門医はおそらく気楽に応じてくれると思いますが、一般歯科医では矯正歯科医にセカンドオピニオンをしてもらうので資料を貸してくれというと、抵抗されるでしょうし、肝心の資料もとっていないところもあります。また転医は転医先に自分の症例をさらけ出すことを意味しますので、きちんとした診療をしている自負がないといやがります。費用の清算なども含めて確認しましょう。

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