2014年3月14日金曜日

佐藤慎一郎先生 父方のこと



 3月8日に、「人づくりフォーラム in 弘前 – HIROSAKI-」という集まりに参加しました。ノンフィクションライターの門田隆将さんの講演があったのですが、診療の調整ができず、5時半からの懇親会からの参加となりました。

 門田さんの著書は、「この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡」(角川書店)、「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日」(PHP)などを昔、読んだことがあります。とくに前者はあまり知らない事実で、興味深く、この本をきっかけに台湾でも根本将軍のことが知られるようになり、政府からも正式に感謝されたことは大きな功績でしょう。

 懇親会では門田さんに「是非、佐藤慎一郎先生の評伝書いてくださいよ」と頼みました。佐藤先生が亡くなって13年、まだ佐藤先生のことを知る人は多いのですが、これが20年経つと、知っているひとはほとんどいなくなります。今のうちにインタビューして情報を集めておかないと、一次資料でなく、伝聞を中心とした二次資料となります。戦記物を見ると、戦争から時が経るにつれ、直接的に関わった人物が死に、内容も次第に臨場感がなくなります。それ故、今のうちにインタビューをして、できればそれを本としてまとめてほしいと思ったからです。佐藤先生が中国問題を報告した歴代首相、福田、大平も亡くなり、今や中曽根元首相しかおらず、是非インタビューが必要です。

 佐藤慎一郎先生は、拓殖大学の名物教授で、今でも佐藤先生を慕う教え子は日本中に多くいます。政治家の鈴木宗男さんもそのひとりです。さらに時の首相に中国の現状を的確に伝えて、外交上の指針にしたことは、国益という観点からも大きな貢献をしました。本人は、名を残そうとする意思が全くなかったため、知るひとは一部の人に限られます。こういった人物を後世の人が紹介するのが我々の役目です。

 佐藤慎一郎先生のお母さんは、山田浩蔵の長女、なほで、山田良政、純三郎は伯父さんに当たることは以前のブログで書きました。今回は父方のことを書きます。佐藤先生の曾祖父の佐藤要八は士族で、私の家から歩いて2分足らずの弘前市徳田町17番に邸宅がありました。明治二年弘前絵図でも確認できます(写真上)。近所には明治初期に西津軽郡長を務めた蒲田昌清の家がありました。絵図では蒲田俊八となっています。二軒左隣です。佐藤要八と妻、つやとの間には男の子がなかったため、藩士猪股久吉の二男、要吉(天保11年9月生まれ)を長女、たき(弘化元年410日生まれ)と結婚させ、養子に迎えます。絵図では明治二年当時の戸主として要吉の名が載っています。ちなみに猪股久吉の名は同じく明治二年弘前絵図の片堀町にその名が見えます。

 佐藤要吉とたきとの間には、6人の子供がいて、長男、要一(はじめ茂助)の長男が佐藤慎一郎先生です。末っ子の淳一は、松森町で酒造業をしていた松本家に養子にいき、弘前の俳句の世界では有名な松本星陵(淳一)となります。この松本星陵の二男、静泉(浩、長男は早世)は優秀で、弘前中学卒業後に、弘前高等学校、京都大学法科、国文科で学び、故郷に帰った後は、短歌のリーダーとして活躍していていました。おしいことに31歳の若さで亡くなりました。佐藤慎一郎先生は松本静泉の一つ下の従兄弟の間柄で、弘前中学時代は非常に仲のよい親友で、ともに大いに遊んだようです。松本静泉に比べて佐藤先生は勉強ができなかったのか、弘前中学の5年生の時には、実家のある蔵主町(明治44年に父要一は徳田町から蔵主町18番地に引越、佐藤先生は明治38年生まれですから、生まれたのは徳田町だったと思います。慎一郎6歳の時に引越か?)から松木家に預けられ、静泉と同じ部屋で勉強したようです。勉強家の静泉と一緒に暮らした方が成績がよくなると親が思ったからでしょう。ただ遊び好きの二人を同室にさせたことが悪かったのか、松本静泉は弘前高校の受験に失敗し、また佐藤慎一郎先生も、健康がすぐれないため、青森師範学校の受験をあきらめ、長尾牛乳屋で一年働いた後に、親類の猪股文雄と一緒に青森師範二部に入学しました。猪股は祖父の実家の親類となります。

 写真には松本静泉の三回忌に出席した人たちが写っています。佐藤慎一郎先生は故人の遺影をかかげ、痛恨の表情です。静泉の亡くなったのは昭和9年1月ですから、当時、佐藤先生は中国の満州にいて、友人の葬式には出席できなかったのでしょう。帰国した折に三回忌に出席したのかもしれません。

 以上、「ここに人ありき 3 松木星陵、静泉父子」(船水清著、 小野印刷、昭和45年)」を大分、参考にしました。門田さんはプロの作家ですから、できれば拓殖大学あるいはOBから執筆依頼していただければと思います。現理事長、福田勝幸さんは、青森県藤崎町の出身ですから、同郷のよしみで何とかお願いしたいところです。



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