1から4までは矯正治療必要なし、5から7は中程度、8以上が矯正治療を必要とする症例(イギリス矯正治療必要性インデックス)、日本人の場合はこうした出っ歯の不正咬合はメインではない。 |
最近は、歯並びについての関心が高くなり、ちょっとした不正咬合でも気になり来院される患者さんが増えています。以前、アメリカでの平均的な不正咬合の程度をアメリカ人の矯正歯科医に教えてもらったことがあります。ちょっとしたでこぼこ、いわゆる軽度の叢生、上顎前突が多く、こちらでの平均的な不正咬合、かみ合わせが逆である反対咬合や重度の叢生の症例を見せますと、驚いていました。さらに青森ではこうした患者さんでも実際に治療するのは半分くらいしかいないというとさらに驚いていました。それだけ、アメリカでは矯正治療が普及しており、ちょっとした不正咬合も治療の対象になるのでしょう。歯を抜かないで治療する非抜歯治療の割合も、アメリカでは70%くらいと言われていますが、日本では30-40%です。こうした不正咬合の程度も関連していると思います。
わたしは古いタイプの矯正歯科医なので、程度の軽い不正咬合は治療の対象とはしません。具体的には一般の方、10人が見て、みんなが歯並びが悪いと判定するような中等度から重度の不正咬合が治療の対象になると考えています。私の診療所では新患はまず、口の中を見て大雑把な不正咬合の程度、治療法を探ります。その上で、患者さんからどこが気になるのか、これまでの経過、当院にくるまでの履歴を聞くことにしています。通常、口の中を見て、ああここが気になるのだろう、口元が少し出ているので、抜歯して治した方がよいだろうと推測して、患者さん、親から主訴や病歴を聞いていきます。長らく臨床をしていると、自分の診断、治療法と患者の治してほしいところがほぼ一致しますし、実際の検査をしてもそれほど初診時の診断、治療法と異なることはありません。
ところが最近の患者さんの中には、口の中を見ても、ほとんど問題がなく、どこが気になるのか、頭の中で悩む症例があります。聞くと、下の前歯の部分のわずかなでこぼこ、上の前歯の少しのねじれが気になるとのことでした。こうしたわずかな、軽度の不正咬合は全く治す必要なないと思います。マルチブラケット装置という矯正装置をつければ、簡単に治せますが、すぐに後戻りします。保定装置をいれておけば、後戻りは防げるでしょうが、一生とまではいわないにしても十年間、保定装置を付け続けることは難しいと思いますし、固定式保定装置にしてもどこかではずれてしまう可能性も高いと思います。例えば、100点が理想咬合として、90点のレベルの人が矯正治療で98点にすることは容易ですが、保定装置をしなければすぐに90点に戻ります。逆にもともと30点の不正咬合の患者さんの場合、98点になり後戻りして90点になっても、30点から90点とプラス60点の大きな改善があるわけです。
理想的な咬合は1%くらいしかいないと思いますが、残りの99%はある程度の不正咬合を有します。私の場合は、上の真ん中の前歯に隙間がある、正中離開という不正咬合ですが、矯正治療をする必要なないと考えています。おそらく残りの99%のうち、60%くらいは、この程度のわずかな不正咬合と思われます。そして30-40%くらいが矯正治療の適用となる中等度、重度の不正咬合となるのでしょう。その人の口元、歯並びを見て、ひどい、あるいは悪印象をもつような状態は重度、歯並びがいい方ではない、でこぼこ、八重歯が少し目立つという状態で中程度、ほとんど歯並びが気にならないのが軽度と考えていいいでしょう。モデルさんのような全くでこぼこのない白い歯並びは理想的な歯並びであり、正常咬合という状態はもっと広い範囲を含みます。
さらに言うなら、いくら不正咬合がひどくても、本人が全く気にならないのであれば、矯正治療の対象になりません。不正咬合の治療の目的の一つの社会心理的な問題の改善、つまり人から見られてコンプレックスとなるような場合、治すことによりコンプレックスの解消になるばかりが、自慢になるのです。心理的にマイナス30点の状態がプラス60点になるわけで、大きな意味を持ちます。一方、歯並びが悪くても心理的にマイナスと考えていない場合、治療してもプラスにならないので、意味がありません。
親に相談してもあまり参考にはなりません。親しい知人に歯並びを見せて、治してもらった方がよい、ちょっと歯並びがわるいかなあという意見が多く、自分でも10年後、20年後の自分を想像して、きれいな歯並びの方が自分の人生にとってプラスになると思うなら矯正治療をしたらよいと思いますし、逆に「そんなに歯並びは悪くないよ」、「治療しなくてもいいのじゃない」と言われ、自分でもまあいいかと思えばそれはそれで治療は必要ないと思います。
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