Fake Brackets おしゃれのためにこうした偽のブラケットをつける
矯正歯科医院では、その治療の70-80%はマルチブラケット装置によるものである。これは世界中の矯正歯科医院でもそうである。マルチブラケットというのは一本一本に歯にブラケットをつけてワイヤーの力を利用して歯を動かす装置であるが、日常臨床のほとんどがこれによる治療で、もっとも汎用性が高く、効果のある治療法である。成人で言えば、この比率はさらに上がり、ほぼ100%の治療がマルチブラケット装置による。
子供の治療をおいても、永久歯列の完成する中学生頃までの治療は一期治療あるいは早期治療と呼ばれるが、それだけで治る可能性は40%以下であろう。残りの60%以上は、永久歯列が完成した時にはマルチブラケット装置による仕上げの治療が必要となる。
こうしたことから、マルチブラケット装置による治療ができなければ、子供の矯正治療の60%以上、成人の矯正治療の100%は治療できないことになる。それ故、矯正治療をしようとすれば、まずマルチブラケット法を学ばなくてはいけない。ところがマルチブラケット法を学ぶのは非常に難しく、数回の講義を受けただけでは、ほとんど理解できず、少なくとも終日、矯正歯科のみをする環境で数年間の経験が必要となってくる。なぜなら大まかな治療法は決まっているものの、患者や不正咬合、年齢などによる治療法の修正が必要だからである。例えば、歯を動かす場合でも早い遅いがあるし、あるいは動かない場合もある。こうした違いに対応した治療法が求められる。かなり経験が必要で、私のような40年近く、臨床経験をしていても、いまだに診断ミスがある。
最近も、フィリッピンで治療費が安いからといって治療を始めて、途中で日本に帰国した患者さんがいた。治療継続を希望していたが、典型的な一般歯科医のマルチブラケットで、ただ単に歯にブラケットをつけてワイヤーでデコボコをとっただけである。口元は突出して、前歯も全く噛んでいない。抜歯ケースで、治療を始めからし直さないというと、じゃ治療をやめるというので結局は装置を外したが、多分、フィリッピンの歯科医院で口元の突出感を訴えても治療してくれないだろう。同じようなケースは日本でも多くあり、患者が“前歯が開いている、口元が出ている”などと訴えると、これ以上の治療はできない、歯を抜くのは理念に反するといって治療を拒否する場合がある。最近のワイヤーは形状記憶合金を使ったチタン系のもので非常に性能がよく、簡単にでこぼこは治る。ところが歯を抜いてその隙間を利用してでこぼこを直したり、前歯を中に入れたりするのはそれなりにテクニックが必要となる。問題は、ここであり、一般開業医でもマルチブラケット装置による治療をしている先生は多くいるが、このでこぼこをとる、レベリングという段階でとまっている。これ以上の上顎前突や反対咬合、開咬などのケースについては一般歯科医では治療がかなり難しい。
そのため、成人患者で一般歯科医院にて治療される方がおられるが、でこぼこだけで治るケースは非常に少ないことから、フィリッピンの歯科医院で治療を始めたケースと同じく、かなりリスクの高い医院選択と思われる。ただ一般歯科医の中にも、大学や矯正歯科専門医で長年、勤務していた先生もいて、そうした先生では十分なマルチブラケット装置による治療はできるが、そうでない先生ではまず専門医が納得するような治療は無理だと思う。そうした履歴がない場合は注意を要する。
治療の難度(永久歯列完成後、中学生以降)
軽度のでこぼこ>中程度、重度のでこぼこ>反対咬合>上顎前突>開咬
一般歯科医では無理と思われる症例(成人)
反対咬合、上顎前突、開咬、顎変形症 骨格性の問題(横、前後的)
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