2020年5月8日金曜日

切ない歌がききたい 川井龍介 著



 最近、ちょっと新しい読書経験をした。以前、お会いしたことのある川井龍介さんの新著「切ない歌がききたい」(旬報社、2020)である。これは川井さんが切ない歌としてセレクトした日本の歌37曲と海外の歌25曲の計62曲、この紹介と説明が3ページ分量で書かれている。説明の中には、同じ歌手の他の作品や関連する作品も載っている。

 以前であれば、こうした音楽解説の本、例えば、ジャズ名盤ベスト1000という本があっても、本の内容を確認するのは、実際にCDを買うしかなかった、あるいはこうした本を通じてCDを買っていた。ところが今や書かれている作品そのものをYouTubeで検索して聞くことができる。例えば、本書で紹介されている「アンフォゲッタブル」、それもナタリー・コールと父親のナット・キング・コールのヴァーチャルデイオもyoutubeにある。画面上に映し出される亡くなった父親の画像とのディオ、とんでもなく美しい演奏で感動する。あるいは著者は名曲「My Funny Valentine」でもChet Bakerのものを選ぶ。渋い選択である。こうした1ページごとに紹介された曲をYoutubeで検索し、聴きながら本を読む、これの繰り返しで、通常、このボリュームの本なら2日くらいで読了するが、この本でいえば一週間くらい、間もおいたが、かかった。本自体の面白さもあるが、著者には悪いが、音楽そのものの感動が多く、大変楽しい経験であった。片手に本、片手にMac-Air、本と音楽のコラボレーションである。

 私の家に初めてステレオがきたのが、小学三年生くらいの時で、ちょうど歯科医院も景気の良い時で、父親が家具調ステレオを奮発して購入した。兄と少年ケニアや零戦はやとなどのソノラマを購入したり、姉は当時のヒット曲のレコードを買って聴いていた。中学に入ると、どうも周りの友人は少し不良がかったやつが多かったせいか、数人で金を出し合い、それで友人のSくんが梅田のLPコーナーでロックのレコードを購入して、それを皆で回して聴いていた。レッドツエッピリン、シカゴ、ディープパープル、キングクリムソン、ピンク・フロイド、EL&Pなどで、ビートルズやボブ・ディランは前の世代であった。同時に姉は、神戸山手女子短大のフォークソング部に入っていたので、ブラザースフォーやジョン・バエズ、マイク真木なども懐かしい。姉はアリスの堀内孝雄と一緒に歌ったことが自慢である。それでも中学、高校は自分のステレオがなかったし、金もなかったのでレコードもあまり買えなかった。大学に入ると幾分、ロック好きを自称していたので、吉田拓郎などのフォークは嫌いであったが、友人にオフコースの好きなやつがいたので、結構フォークも聴いたし、仙台のライブハウスにも何度か行った。この頃から音楽趣味のレパートリーも変わり、Jazzやソウルも好きになり、一度、O.V. Wrightの仙台公演に行くとガラガラでみんな前に集まって聴いた記憶がある。また仙台市内の道でクルセイダースのメンバーにばったり会い、ジョ・サンプルにハイと挨拶したら返事してくれたこともある。Jazzも新しいのはほとんど聞かず、アートペッパー、マイルズデービス、チャーリーパーカーなどビバップばかり聴いていた。その後、結婚して子供ができるとあまり音楽を聴かなくなったが、それでもIPodが登場すると再び音楽を聴きだし、この頃になるともはやジャンルは何でもよく、若い頃毛嫌いしていた、フォークや歌謡曲、あるいは果ては民謡まで聴きだした。三橋美智也も好きである。川井さんとは年齢も同じで、彼は高校時代、どちらかというとフォーク、ブルース派であっただろうが、その後、分野に捉われずにいろんな曲を聴くようになった過程も似ていて、この本で紹介された曲は知らなかった曲も含めて共感できる。1950-1960年代生まれの方には是非ともお勧めしたい本である。

 可能性としては、アマゾンプライムなど無料で見られる映画も増え、同じような映画案内の本があれば、本を読んで、映画を見ることもできるかもしれない。ただその場合は、一冊読むのに数ヶ月かかるかもしれない。

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