googleの悪いコチコミを一件2、3万円で削除しますという会社のメールがよくきます |
昔、鹿児島大学の矯正科教授、伊藤学而先生からよく言われたのは、医療は患者さんの治してほしいという願いを叶えるものであり、それに対して医療者はプロフェッショナルとして全力で助ける。患者さんがガンであったとして、それを治す方法があったとしても、患者さん本人が治す意志がなければ、無理強いできるものではない。ましてや歯科医療は、一部の口腔癌を除いて、生死に関わる疾患は少なく、放っておいて必ずしも深刻な状況に陥るとは言えない。例えば、小さい虫歯があり、そのまま放っておくとさらに大きくなり、神経まで達し、猛烈に痛くなる場合もあるが、それほど進まない場合もある。仮に少しずつ虫歯が進むにしても、骨髄炎まで進行して入院するような事態になることは少ない。
患者さんの中には、歯科医院に来て、検査を受け、ここの虫歯が放っておくと大きくなり、神経までいきますよと言っても、逆に絶対にそうなるかと聞き返す患者さんもいる。最初に述べたようにあまり進行しない場合もあるので、絶対に進行するとは言えない。もちろん、小さな虫歯なので、少し麻酔をして虫歯を取り、レジンという充填物を入れるだけで簡単な治療であると説明するが、すると今度はレジン充填をすれば一生もつかと質問してくる。平均的な予後は論文で発表されているので、そうしたデーターを示すと、今度は、本当にそうかかと聞きなおす。結局、こうした不毛な問答ばかりが続き、何を求めて歯科医院に来たかわからない患者がいる。
同じようなことは矯正歯科でも起こる。一番多いのは、例年の今の季節、学校健診で不正咬合を指摘されたケースである。現在、学校歯科検診では不正咬合をチェックする項目があり、指摘されると学校から歯科医院に行くように指導される。こうした用紙を持って親が来る。もちろん正常咬合はおらず、でこぼこ、反対咬合、あるいは出っ歯の患者さんである。ざっと見て、大まかな診断と治療法を説明するが、最初の問い、“お子さんの歯並びについてどこか気になりますか”というと、親は“全く気にならない。治療しないといけないか”と答える。これは困る。こうなるとこちらは“治療は必要ないですね。矯正治療は本人、親が不正咬合を治したくなければ、治療する必要はありません”と答え、検診結果用紙にハンコを押して帰ってもらう。
不正咬合だと、確かに食物を噛むのは少し劣るし、でこぼこだと歯磨きがしにくいなどの機能的な問題があるが、大部分は審美的、社会心理的な問題である。先日、新患できた患者の親は、不正咬合を放っておくと何か問題になるのか、機能的な問題があるのかと問うので、そうした問題は少ないと答えた。そうすると放っておいてもいいのかという。ただ歯並びが悪いと、それがお子さんのコンプレックスとなることもあると伝え、気になったらまた来院してくださいと言うしかない。
逆に、矯正治療に完璧を求められる患者も困る。同じような治療をしても結果は患者によって変わるというのが医療であり、例えば90% に効く治療法があっても10%には効果がない。同じようなことは矯正治療でも必ず起こり、これを医療の不確実性という。もちろん医療者は最善の治療を行おうと努力するが、それでもうまく行かないことがある。これに対してどうしても納得しない患者がいる。高額な費用を取っているだけに余計に期待通りに治らない場合の不満は高い。もちろん最初の検査結果の説明の時には起こりうる主なリスクを説明するが、実際に骨性癒着(歯が骨とくっつき動かない)などが起こると、良い結果を得ることはできなくなる。こうした医療の不確実性については、本当に理解してもらうのは難しいし、経験、知識が増えると、確実性も増す。ただ経験も知識もない医師のよる誤った治療を、医療の不確実性の範疇に入れるのも問題である。
他にはちょっとした問題で、Googleクチコミで低い点をつける人がいる。最近1点の低評価をもらったが、受付の電話応対についてのものである。受付はウチの家内が午前中、他の方が午後だが、二人とも20年以上受付をしており、患者さんに失礼なことは絶対に言わない。最近は、矯正を受ける患者さんが多く、なかなか予約が取れず、患者さんは診療が終わると1ヶ月後の予約を入れるため、平日の4時以降や、土曜日に新患が入るスペースが限られている。これはお客さんの多いレストランで、金曜日の夜、休日前の日の予約は取れないのと同じである。おそらく患者さんから何月何日何時、予約できますかと尋ねられ、そこはすでに予約が入っています。それでは何月何日何時はどうですかと言われ、これも無理です、何回かこうした応答で、受付の対応にキレタのであろう。スタッフと相談し、患者に都合に良い日を聞くだけでなく、空いている日、予約できる日、時間を言うようにすることにした。ただ食べログでは、飲食店の三大要素は料理、空間、サービスで、予約や入店時の対応は、この三大要素のサービスのほんの一部分しか占めておらず、飲食店で食事をし、空間で過ごし、サービスを受けなければ、飲食店をレビューする権利はないとされる。レストランに予約の連絡をし、食べもしない、行きもしないで、その対応がまずいと評価を1にできないようにしている。病院や医院の口コミサイトには、受付の電話応対へのクレームのような書き込みが多いが、これは食べもしない客からの評価と同じであろう。以前から匿名の投書、書き込みは無責任で、何とかならないかと思っている。歯科医師会でも実名による患者からのクレームのみを対応しており、影響力の大きなGoogleのクチコミも原則的には実名表示を望みたい。
PS:医院ではこうした口コミサイトの評価で患者数が大きく、減少することがあり、低評価の医院に、削除を一件、数万円で請け負う会社からのダイレクトメールがしょっちゅうくる。一度は明らかにこの会社と結託した人の仕業だったので、google社に報告して削除してもらった。
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