2022年1月1日土曜日

矯正歯科医院の形態

 

機能性反対咬合と呼ばれるもので、前歯が早期接触して下顎が前にでる典型的なケースである。周りに歯科医がいて何も言わないのは知識がなさすぎる。学生の頃に習ったでしょう。詐欺に近い。

矯正歯科医院といってもその形態は色々で、私が知っている限りで、最低限の開業形態は、昔、30年ほど前だが、関東の先生で、普通のマンションで治療していた先生がいた。ごくごく簡単な椅子で、ライトなし、バキュームなし、エアーは携帯用のボンベを使っていた。もちろん診療は一人でやっていた。この先生のことを知人から聞いた時、確かに矯正歯科医は、キャリーバック一つで大抵の治療は可能と思った。

 

例えば、通常のワイヤー交換であれば、ブライヤー数本と数種類のワイヤー、結紮線を持って行けば、治療できる。最近はいいヘッドライトもあり、それで照明は十分である。ただブラケットの装着となると、洗浄と乾燥が必要なので、介護用のバキューム、あるいはプラモデル用の小さなコンプレッサーが必要かもしれないが、通常の歯科治療とは違い、削ったりすることはないので、少し大きなキャリーバッグにバキュームやコンプレッサーを詰めてしまえば、どこに行っても治療は可能である。

 

私の歯科医院は、受付1名、衛生士1名、歯科医師の私、3名が標準となっている。そのため同一時間の患者は1名のみで、15分とることが多いので、一時間に4名、1日で26名が最大となる。今はほとんど患者が成人のマルチブラケット装置(MB)患者なので、私がワイヤーを外し、調整あるいは新たワイヤーをセットして終了となる、衛生士はバキュームで唾液を吸うか、結紮線を私に渡すだけである。ただ保定患者では、衛生士がエアーフローによる歯のクリーニングをするので、その場合は、もう一台のユニットにも患者を入れて、並列で治療をし、MBの患者は私一人で行う。こうした患者の合間に新患や検査を入れるので、この体制では一日、30-40名が限界で、これ以上の患者は見られない。

 

これ以上の数の患者を見るとなると、矯正医の仕事をスタッフに任せるしかない。具体的に言えば、ワイヤーの交換をスタッフに任せるしかない。ワイヤーを新たに曲げることは数例に一つもないくらいで、ワイヤーの交換を全てスタッフに任せ、矯正医はブラケットの装着、ワイヤーの屈曲とスタッフへの指示だけであれば、おそらく100名くらいはできるであろうし、アメリカ式にブラケットの装着もスタッフに、またワイヤーの屈曲もできるだけ少なくし、初診患者もコーディネーターというスタッフがほとんど説明し、矯正医は10分ほど喋るようなシステムなら200人くらいは治療できるであろう。

 

昔、アメリカの歯科医に日本の歯科医は1日に30名、多いところでは100名ほどの患者を診ると言うとクレージーと言っていたが、逆にアメリカの矯正医が1日の患者数が200名と言われた時にはこちらがクレージーと思った。アメリカの一般歯科医の診る患者数は10-20名くらいで、彼らからすれば、日本の一般歯科医でどうしてそんなに治療できると思うのだろう。

 

昔の矯正歯科医院といえば、スタッフも受付1名、歯科衛生士2名くらいが標準であったが、最近は患者数も増えたのだろうか、スタッフ数が10名以上いる矯正歯科医院も多い。YouTubeで矯正治療中の動画を見ると、多くの矯正歯科医院では、先生がワイヤー交換するわけでなく、衛生士がしている場合が多い。“おいおいプライヤーを逆手で扱うな”、“リバースカーブを入れたワイヤーを入れておいてくれと矯正医は指示するが、トルクなどきちんと入っているのか”、“なんでもモジュールで結紮するな”、“リガチャータイイングプライヤーではきちんと強く締められないし、まさか滅菌しないで使ったりしてないよな”などの茶々を入れたくなり、どうしても私の場合はスタッフにワイヤーの交換は任せられない。昔の矯正歯科学講座というと徒弟制に近く、結紮はホープライヤーだけでしろ、逆手でプライヤーを持てば叩かれた。私の前の世代は、ワイヤーも真っ直ぐな線から曲げるように言われ、それにファースト、セコンド、サードベンドを入れて、チェックされる。1本曲げるのに一時間かかることもあったという。多分こうした教育を受けた先生は、今でもスタッフにワイヤーの交換はさせないのであろう。

 

大学にいた頃は一日の患者数も2、3名くらいで、20名以上診るなんて、いい加減な治療をしていると批判的であったが、実際は開業医の方が大学より早く、綺麗に治療できる。同じようにスタッフに矯正治療の多くの仕事を任せたとしても、しっかりした教育をされていれば、先生より上手に治療できるのかもしれない。ただ自院の紹介や症例の治療前後を写した動画は、かなりの確率で、医療広告法に触れ、認定医の更新の際には修正を求められる。結果、認定医、臨床指導医を持つ矯正医は、Youtubeに出すことはなく、そうした資格のない先生が偉そうに喋っていて、内容もかなり問題がある。正しい情報が伝わらず、困ったものである。

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