2022年1月13日木曜日

矯正治療費の内訳(材料費)

 



アメリカではおしゃれの一環で、こうしたFake Braceと呼ばれる取り外しできるブラケットをつけるものがあります。


 矯正治療は自費で料金が高いというのが一般的であるが、実際、矯正治療の材料そのものは安い。先生によっては矯正機材の値段の高さを強調する先生がいるが、これは間違いである。

 

ここでは一般的な矯正用ブラケット装置を用いたマルチブラケット装置の例を示す

 

1.     矯正用ブラケットおよびチューブ

 金属ブラケットは安く、平均すると一個、300-500円くらいである。チューブも同じくらいの値段である。硬質レジンの審美性ブラケットは少し高く、それでもセールや、購入個数により値引きがあるので価格はまちまちだが、だいたい一個600-900円くらいで1000円を超えることはない。セラミック製のブラケットはもっと高く、さらにデーモン3のようにセルフライゲーション機能がつくともう少し高い。それでも定価ベースで2400円くらいが最高であり、セラミック製ブラケットはだいたい1000-2400円となる。これを見ると矯正用ブラケットは安いと1個300円、高いと2400円くらいであるが、総額からすればせいぜい、高くても5万円以下である。

2.ワイヤー、結紮、ゴム

 マルチブラケット装置では毎回、ワイヤーを交換したり、調整したりする。ワイヤーの費用はよく使うステンレスワイヤーの場合、1本は100円くらいで、ゴムメタルワイヤーのような特殊なワイヤーでもせいぜい1000円くらいで、なおかつ最初のレベリング期間を除けば、それほど毎回交換するものでもない。通常の2年間、24回の調整で使用するワイヤー、結紮線、ゴムの材料費の総額は、1万円以下であろう。

 

 マルチブラケット装置の場合は、ブラケットとワイヤー、ゴムが装置のほとんどとなり、それにヘッドギア、パラタルバーなどが入るが、それらすべてを入れても材料費の総額は8万円を超えず、私のところでの例で言えば、レジンブラケットを使っているので、ブラケット材料費は小臼歯抜歯ケースでは16本で約13000円、大臼歯のチューブ代が8本で4000円、ワイヤー、結紮線、ゴム代が5000円の計、22000円が材料代となる。これに保定装置を技工所に出すと上下で約2万円であるが、自分で作れば材料費は1000円以下となる。私のところでは、すべて自分で作っている。他にも、印象材、滅菌消毒関係の器材、プライヤー、バー、小器具を新たに購入する費用も含めて、私のところで言えば、材料購入費の割合はだいたい総収入の6%程度となる。

 

 もちろん矯正治療費は、これら材料費以外にも、滅菌消毒費、ユニットやレントゲン装置の減価償却、さらに人件費、光熱費、テナント料など入れた値段となる。ただ飲食店の原価率、30%が目安という尺度から見ると原価率は低いが、同じような業種である美容院の原価率を調べるとだいたい10%くらいである。美容院も物を売って利益を得るというよりは、技術を売って料金を取る職業であるが、矯正歯科の場合もこれに近いかやや低い原価率となる。ちなみに一般歯科の場合、保険点数が低いこともあり、原価率は約20%とかなり高く、勢い原価率の低いインプラントや矯正治療などの自費治療を患者に勧めることになる。同様に医科の場合も、材料費、委託費を含めた医業原価率は21%くらい、これに加えて人件費が30%くらいなので、かなり経営は厳しい。 

 

 こうして見ると矯正治療の材料費そのものは低い。人件費、テナント料、減価償却などは一般歯科と同等とみれば、少なくとも治療費における粗利益率は高く、その理由は、技術料が高いことに尽きる。矯正治療の純粋の材料費は、治療費の10%以下にすぎず、高額な治療費は、きちんと治すという技術料が大きなウエイトを占める。人によっては、技術料が高すぎるから値段をやすくしろというかもしれないが、コンピュータのソフト、アプリ開発、弁護士費用、建築設計など、原価はほぼ0に近い仕事であり、原価が安いので、安くしろという理屈は合わない。


 技術力を知るのは非常に難しく、中には高い費用=高い臨床技術と勘違いしている人がいるが、一番確実なのは、ネット上での口コミサイトではなく、実際に治療受けた人からの情報である。そして治療を始める前に何軒もクリニックを訪ね、よく説明を聞き、納得してから治療すべきである。そして再治療や転医の場合の費用、一般的には再治療は調整料以外に新たな費用は発生しないし、転医の場合は進行程度により料金の返金がある、などよく聞いておく。


0 件のコメント: