2023年1月22日日曜日

外科的矯正の術前矯正について
















今日、外科的矯正の適用はかなり広がって、適用症例も増えている。昔は、通常の矯正治療だけでは治らないケースが、外科的矯正の適用とされたが、今日では、患者の顔貌への要求、より安定した咬合のために、外科的矯正を選択されることが多くなった。

外科的矯正の中心、下顎前突の症例でも、正常被蓋で、術前矯正でわざわざ反対咬合にして手術するケースも増えている。また上顎前突の症例でも、顎間関係が私の場合、ANB10度を超える症例では、外科的矯正も洗濯に入れており、実際にここ数年、上顎前突の外科的矯正の症例も増えている。逆に開咬については、アンカースクリューやマルチループテクニックで治る症例も多いが、下顎骨が後方回転した上顎前突の開咬では上下同時移動術、上顎の上方への移動と、下顎の回転、オトガイ形成術など複雑な手術を要する。またA点が前方にある上顎前突では、歯槽骨骨切り術を行い、良好な結果を得ることができる。

 こうしたこともあり、最近では年間20例以上の外科的矯正の患者の治療を行い、これまで27年間ではの延べ400名以上の外科的矯正の患者を治療してきた。

ただ術前矯正に関しては、教育を受けた大学の考えによるのか、大きく分けて二つの考えがある。一つは咬合を重視する考えで、大臼歯関係はI級が理想であり、外科的矯正の目的として前歯の被蓋、とI級の大臼歯関係とする。そのため第三大臼歯以外は非抜歯による術前矯正を行う。結果、上顎前歯のデンタルコンペンテーションを十分に解消できず、下顎骨の後退量も少なく、オトガイの前突感が残る。もう一つは、顔貌の改善を主として、フェイシャルダイアグラムなどから理想的な上下顎関係になるには、顎をどのように動かすかというところから考える。たとえば、下顎を後ろに10mm下げるのは理想的な願望であれば、上顎第一小臼歯を抜歯し、上顎切歯を中に入れてから手術をする。こちらの方ではオトガイの前突感が残ることが多い。

私が教育を受けた鹿児島大学では、徹底して顔貌中心の治療計画を鍛えられた。もちろんいろんな要因で、十分な顔貌の改善ができない場合もあるが、それでも手術法の選択、たとえば、上顎骨を回転させて下顎骨の後退量を稼ぐなどの手段を用いた。

仙台の菅原準二先生は、ずいぶん以前から術前矯正をしないSurgery Firstの治療法を提唱してきた。よく知った先生であるが、当初この治療法については批判的であった。というのも鹿児島大学にいた頃だから30年以上前に、黒江和斗先生を中心に、術前矯正をほとんどしないで外科矯正をする治療をしたことがあった。一番困ったのは移動量をどうするかで、かなり適当にした記憶があり、結果にムラがあった。ところが菅原先生の方法では積極的に矯正用アンカースクリューを使うことで、ほぼ計画的に仕上がるようで、期間の短縮にもつながっている。ただこれも移動量を決めるのはかなり熟練を要するのか、日本ではそれほど広がっていない。

個人的には、術前矯正で、なかなか治療が進まない患者がいる。上顎小臼歯を抜歯して、マルチブラケット装置をつけて上顎切歯を舌側に動かそうと思っても動かず、中には逆に唇側に移動することもある。グラグラした前歯を舌で押しているのである。こうした症例では小臼歯の抜歯空隙が大臼歯の近心移動で閉鎖するために、全く上顎前突と同様のフォースシテムを組むことになる。あるいは大臼歯ががっちりかんでいる症例では、上下歯列のコーディネーションのために上顎歯列を狭くしようと思っても、進まない場合が多い。こうした症例では、術前矯正で治すよりは術後矯正で治す方が圧倒的に早い。Surgery Firstの利点としては、こうした咬合力、舌や口唇の習癖を考慮しなくて済む、逆に術後矯正で利用できることが挙げられる。

 


 


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