2023年6月10日土曜日

矯正歯科専門医 1

 







厚労省から、日本の歯科学会の会員数と専門医数が発表されている。それによると最も会員数の多い学会は、日本口腔インプラント学会で会員数は14003人で、専門医と専修医合わせて1756名、12.5%となる。設立は1986年で大学にインプラント講座がほとんどない現状を考えると人気のある学会である。次に大きな学会は、日本口腔外科学会で、会員数は10203名で、認定医、専門医、指導医合わせて3694人、会員数の36.2%となる。設立は1933年で、昔から最も会員数の大きな学会で、第一、第二口腔外科などのように2つの講座をもつ歯科大学が多かった。三番目は日本顎顔面補綴学会で、会員数は8490名、認定医と指導医合わせて3367名、39.7%で、会員数の割には認定医数が多い。この学会も創立は1984年で新しい。

 

日本矯正歯科学会は、会員数6373人で、認定医数は2884名、専門医は297名で、専門医は認定医でもあるので、45.3%となる。1926年に創立され、もうすぐ100周年となる。歯科の専門学会では一番古い。ちなみにアメリカ矯正歯科学会は創立が1900年で、 会員数は19000名で、会員の多くは矯正歯科専門医で、日本の認定医に匹敵するメンバーであり、日本の3倍から6倍くらいの規模となる。

 

アメリカでは、矯正歯科医は収入が多いため、3年間の大学での研修コースは人気が高く、なかなか入学できず、授業料も年間1000万円くらいかかる。3年間の大学院コースを終了すると、矯正歯科専門医院で勤務し、数をこなしてから、引退した先生の医院を格安で手に入れて、できるだけ早く借金を返し、その後は貯蓄に励み、60歳から遅くて70歳には引退する。こうした循環はかなり早くからできていて、鹿児島大学にいた頃だから1980年代のアメリカ矯正歯科学会雑誌の最後のページには医院売りたしの広告が多く載っていた。少し変則的な方法としては、世界各国に散らばる軍関係の施設に勤務して、学生の頃の借金を返す先生もいて、青森県の三沢米軍基地の先生の多くはそうであった。基地勤務の兵士はただで矯正治療を受けられるため、数多くの患者を見ることができ、臨床技術が上がるというわけである。

 

現状、日本矯正歯科学会の問題は、ズバリ専門医のことである。最初に述べたように日本矯正歯科学会の認定医は2884名いるが、専門医(臨床指導医)は297名しかいない。現在、途中で止まったままになっている日本歯科専門医機構の矯正歯科専門医は、日本矯正歯科学会の専門医と他学会の認定医から受験できるようにしたため、第一回の合格者は300名程度と予想される。一旦、専門医機構の制度が施行されると、これまで日本矯正歯科学会認定医とネット上で広告できていたことが禁止となり、新たな専門医機構認定の矯正歯科専門医のみが表示できる。受験者を見ると平均年齢で60歳を超えており、引退する先生と新たに受験する先生を考えると、目標とする1000名以上の専門医数になるのは10年以上かかるであろう。例えば、青森県の場合、認定医を持つ先生は10名、そのうち臨床指導医は1名で、新しい専門医になるのはこの一人で、なおかつ65歳以上の先生が4名で高齢化が進んでいる。宮城県が、認定医が90名、そのうち臨床指導医が7名、岩手県が、認定医が38名に、臨床指導医が2名、秋田県は認定医が9名、臨床指導医が3名、山形県は認定医が15名、そのうち臨床指導医は3名、福島県は認定医が27名、臨床指導医は0名となっている。新しい専門医制度が施行されると、広告できる矯正歯科専門医の数は、知っている限り青森県は1名、宮城県は7名、秋田県は3名、岩手県が2名、山形県が3名、福島県が1名となり、東北で17名しかいないことになる。少なすぎて、増加する患者をこの数でカバーすることはできない。ただ認定医、臨床指導医の割合は、東京、都市部に偏っており、東京都の認定医は750名、臨床指導医は85名、神奈川が307名と42名、千葉、埼玉も合わせると、認定は1392名、臨床指導医は159名とそれぞれ全国に半分近くを占める。認定医で言えば、愛知県が186名、京都府が64名、大阪府が228名、兵庫県が135名、福岡県が182名で、計695名、関東と合わせて2077名で、全国の70%以上が都市部となる。

 


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