2023年6月1日木曜日

堆雪帯を利用した自転車専用レーン 1

 




これくらいスペースがあれば安全、



先日(5/31)の東奥日報の明鏡欄に「堆雪幅を自転車レーンに」を載せていただいた。わずか480字のコメントなので、もう少し詳しくここで説明したい。

 

最近の自転車ブームを反映して、かっこいいロードバイクに乗る若者を見ることが多くなった。高そうな自転車に、ヘルメット、バイクウエアに身を固め、颯爽と走っている。爽快な気分で、楽しいであろう。ただ車を運転する人からすれば、こうしたスピードのでるロードバイクは大変危険な代物で、接触事故はそのまま大事故に発展するため、自転車に乗っている人、自動車に乗っている人、双方とも緊張する。道路交通法によれば、自転車は原則的には車道を走ることになっており、歩道を走る場合は、歩行者に気をつけて徐行速度で走ることになっているが、これも通学通勤の自転車、特に中高生の運転は荒く、近年、自転車と歩行者の接触事故で歩いている老人が亡くなるケースも出ている。さらに歩道は必ずしも自転車走行には向いておらず、車道と歩道の境に大きな段差があると、細いタイヤのロードバイクではタイヤのパンクや転倒にもつながる。

 

道路交通法では自転車は車道を走れと言いながら、実際に走るのは車道の側面に引かれた白線の内側ということになる。最近、電動アシスト自転車を買ったので、弘前市内のあちこちを走っているが、横に側溝がある場合、これも危険で、この溝にタイヤが挟まれると、即転倒、けがにつながるので、まずよほど太いタイヤをはいていなければ、側溝を自転車で走ることは避ける。そうすると、実際走れる幅は、車道の横に引かれた白線内で、側溝を除く部分となる。この幅が1mあれば余裕で走行できるが、道によっては10cmくらいしかないところもある。こうした道では、自転車は幅10cmくらいの白線上を綱渡りのように走行することを余儀なくされる。これは難しい。

 

青森県のような雪に多いところでは、雪が多く降った場合は、除雪車でその雪を道の横に移す。積まれた雪がどんどん溜まると、道幅が狭くなり、最悪の場合は通行できなくなる。こうしたこともあり、道を造る時にあらかじめ、雪を置くスペース、これを堆雪帯と呼ぶが、を計画する。弘前市で言えば、ここ20年くらいで作られた道はほぼ、この堆雪帯を有する。ただこうした計画を立てるときに、自動車と歩行者の観点はあっても、自転車の観点はほとんどなく、新たに作られた道でも自転車専用レーンを有するところはない。それではこうした堆雪帯はどこに作られたかというと、ひたすら歩道を広げることにした。今時、歩道を歩く人は東京と違ってほとんどおらず、1時間に歩行者数は10名もないところに幅5mの歩道を作る意味は全くない。むしろ堆雪帯を作るなら歩道の幅を広げるのではなく、自転車専用レーンを作るべきである。この例で言えば、5m幅の歩道を作るなら、1mの自転車専用レーンと4mの歩道を作るべきであった。計画の段階でこうした発想が全くなく、銀座の歩道のようなイメージで幅広い歩道を作ったわけであるが、全く役に立っていない。ただ役所の発想にも同情すべき点があり、昔は、自転車は歩道を走るものとされていて、今のように自転車は車道を走るという認識が定着したのは最近のことである。

 

それでは現状の道路で、自転車専用レーンは作れないかというと、それほど予算がかからず、作ることができる。まず、道路横の白線内に自転車マークを入れるだけで専用レーンとなる。幅が1m以上であれば、問題ないのであるが、1m以内であれば、その対策を考える。右折車用に二車線の道を三車線にしているところがある。二車線のところではこの白線内の幅が1mあっても、この3車線のところでは急速に狭くなり30cmを切るところがある。確かに右折レーンがあれば、朝夕のラッシュ時では車はスムーズに進むが、一方、それほど右折車がいないのに、直進レーンの道路幅が狭くなり、自転車と接触するリスクが高くなる。さらにいうと、冬になると道の両脇に雪が積もり、どっちみち、右折レーンはさらに厳しくなる。無理に右折レーンを作る必要はなく、二車線で両脇に1mの自転車専用レーンと歩道で解決する。また二車線だが、道幅は狭く、逆に歩道が広い場合は、歩道の車道側に1mの自転車専用レーンを設け、できれば、交差点での車道とこの歩道の自転車レーン段差をなくしてほしい。さらにいうと、歩道と車道の交差点の段差がたとえ1cmでも高齢者にとってはつまずきの原因となるため、歩道も車道と同じ高さにしても良さそうだが。

 

こうした自転車専用レーンについては、すでに新潟県長岡市では積極的に行政が主導して整備しているし、国土省も自転車利用環境の整備を本格化しており、何らかの整備助成費なども出ていると思う。できれば、こうした制度を利用し、青森県でも堆雪帯を利用した自転車専用レーンの整備をお願いしたい。

 

近年のエコブーム、温暖化対策に伴い、欧米、特にヨーロッパでは、脱クルマ社会が叫ばれ、市内への車の侵入禁止などにより自転車、鉄道、路面電車の利用が活発化している。それに伴い急速に自転車専用レーンが普及している。自転車先進国では、アシスト自転車が物資の移動手段として活用され、100kg以上の荷物の運搬にも使われている。こうした中、どこに行くにも車を使う、一人一台車がある、車がないと病院、買い物などができない、などある意味、車依存社会となっている青森県では、常に車が優先されてきた。一方、歩行者、自転車についてはほとんど省みられることもなく、放置されてきた。一方、冬場のクルマ利用の障害となる雪を除雪するために弘前市でも毎年10億円以上の予算を使っていて、文字通りこの予算は水と消えるものである。また除雪以外にも道路拡張の工事費や毎年の路面整備など、莫大な予算を投下している。こうした雪対策はせいぜい雪が降る1月から3月ころの3ヶ月のことであり、逆に言えば、これ以外の9ヶ月は、無意味なものとなる。せめて冬場の予算の一部がそれ以外の季節にも活用できる方法として、堆雪帯を利用した自転車利用の整備、専用レーンの設置を検討してほしい。








白線内を自転車での走行は無理、右折車線を廃止すれば、自転車専用レーンは可能







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