2023年6月23日金曜日

矯正歯科(保険)のレセプトオンライン化を考える

 





矯正歯科といえば、ほとんど自費患者と思うだろうが、実際は口蓋裂、顎変形症などの保険適用の患者も多い。私のところで言うと、月レセプトの件数で80-90件くらいあり、毎日4、5人の保険患者が来院する。そのほぼ半分が口蓋裂患者で、残りが顎変形症患者となる。口蓋裂患者のほとんどは、近くに弘前大学医学部附属病院形成外科があるので、そこからの紹介患者で、年間数名、それでも延べで300名以上の患者となる。最近は紹介してもらう年齢を小学校入学以降にしてもらっているが、前は3歳くらいで紹介されていたので、そうした子供の場合は、15年以上の通院となり、徐々に患者数は蓄積されていく。一方、顎変形症患者については、当初は下顎前突の患者が主体であったが、最近では顔面非対称、上顎前突(下顎骨後退)の患者も増加し、また口蓋裂以外の先天性疾患、例えば、ダウン症、第一第二鰓弓症候群、6歯以上の先天性欠如を伴う部分無歯症の患者も増えてきた。こうしたことは私のところの診療所だけでなく、全国的にもそうであろう。

 

先日、東北の矯正歯科の先生とオンラインで会議があった。来年度からレセプトのオンライン化が始まり、それへの対処について少し議論した。結論からすると私のところともう一人の先生を除くほとんどの先生がすでにレセコンを導入して、レセプトオンライン化をしているとのことであった。驚いた。唯一、まだレセコン導入していない先生は月のレセプト数が100枚を超えると言っていたので、これも結構多い方である。この先生はエクセルで簡単なレセコンを自作し、それをプリントして紙出しで請求していたようだ。私のところでも20年前にファイルメーカープロで自作の患者データーベースとそれに連動した簡易の保険請求ツールを作り、それでずっと請求してきた。逆にソフトを自作する手間が面倒という先生は早い時期から、ソフト会社の矯正歯科用レセプトソフトを購入したため、このような結果となったのであろう。ちなみにレセコン導入した全ての先生は、Mediaの矯正歯科用レセコン、エポックというソフトを使っていた。初期投資が数十万円、月々の使用量が4,5万円ということだった。ただ例えば、保険患者が10人、月のレセプト数が5枚、大部分が自費患者という状況で、保険診療専用のレセコンを導入は相当厳しいと思うのだが。

 

私のところでも、早急にレセコンを導入するか、あと3年ほどで引退予定なので、紙出し請求で逃げ切るのか、難しいところである。ただ新規開業の先生については、来年度以降はオンライン化を義務付けられ、紙出し請求はできなくなる。そのため、新規開業する先生は必ずレセコンの導入とマイナンバー資格確認が必要となる。結局は二つのシステムが必要となり、合算すると結構大きな金額となる。もちろん新規開業する一般歯科医院でも、この費用は大きな負担となるが、それ以上に新規開業する矯正歯科医院では、はなから保険診療をやめるところも出てくるだろう。結局、導入しても保険患者が数名しかいない場合、レセコンの月々の使用料は高すぎる。

 

ただ最初に述べたように近年、顎変形症の適用はかなり広がっており、これまで矯正治療のみで対応してきた上顎前突や顔面非対称(交叉咬合)なども積極的に外科矯正として扱う場合が増え、保険医療機関でないと、かなり治療法が限定されてしまう。これは矯正歯科専門でやるには不安材料となり、できるだけ多くの治療法を患者に提示して、その中から最良のものを選択するという姿勢に反する。また一期治療で治療をしてきて、顎の成長のために外科矯正となった場合、その時点で、保険医療機関でないと、他院に紹介することになり、これも専門医としては恥ずかしい。

 

東京、大阪などの都市部では、仮に口蓋裂や顎変形症の患者がきても、歯科大学附属病院を紹介すれば、いいかもしれないが、例えば私の住む青森県でいえば、一番近い歯科大学は盛岡の岩手医科大学歯学部附属病院となり、患者さんにとってかなり通院は大変である。地域的な特性を考えれば、地方で新たな矯正歯科医院を開業する場合は、費用はかかるがレセコン、マイナンバーカード読み取りなどを最初から設置せざるを得ないと思う。もうすぐスタートする矯正歯科専門医制度でも、実施要領で、口蓋裂、顎変形症を取り扱う施設要件を満たすことが望まれるとしているし、課題症例でも外科矯正を入れられれば、かなり症例の選択は容易となる。

 

今回、私の場合、矯正歯科医院でもこんなにレセコンが普及しているのか驚いたが、私の知ること限り、これまで日本矯正歯科学会、日本臨床矯正歯科医会などで、矯正歯科専門医院での、1。月平均レセプト枚数、 2。レセプト導入率などを調べたことはない。学会としてもこうした情報を把握して、今後の指針を示して欲しいところである。


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