2023年10月19日木曜日

日本のマンガ、アニメ文化


世界に誇る日本カルチャーの代表格は、アニメ、マンガである。欧米はじめ、アジア、南米、アフリカでも多くの日本のアニメは放送され、その影響を受けた子供は本当に多い。例えば、ドラエモンも見た世界中の子供達は、そのアニメ中に存在する日本を意識し、どら焼きとは何だろうかと日本人の生活を知ろうとする。昔、私も子供の頃に見た、「奥様は魔女」に描かれている家庭、大きな冷蔵庫や牛乳に憧れたのと同じであろう。昨年だったが、フランス、パリサンジェルマンのサッカー選手が来日で、「キャプテン翼」の作者、高橋陽一先生の前に子供のように接していた。皆、子供の頃の憧れのアニメであった。日本にくる海外の観光客にも、多くの日本アニメ好きがいる。

 

それでは日本のアニメの原動力は何かというと、これは昭和30年代の貸本と少年、少女漫画雑誌であることは間違いない。戦前も「のらくろ」などの漫画が、子供達に人気があったし、「桃太郎 海の神兵」などの傑作アニメ映画があったが、それが文化の主流にはならなかった。小学校に入る頃、昭和37年頃のことはよく覚えていて、まず近所に貸本漫画店があったが、当時、すでに古臭くて、汚い油紙のよって本がカバーされていて、汚い感じがしていた。本屋には月刊誌としては「少年」、「少年画報」もあったが、これは漫画より付録が楽しみで買っていた。人気があったのは週刊誌で、とりわけ少年マガジンが好きで、「チャンピオン太」、「8マン」、「丸出だめ夫」、「紫電改のタカ」などに熱中し、毎週販売日の水曜になると近所の菓子屋兼本屋に行き、車から雑誌が束になって下ろされるのを待って買った。兄と先を争うように読み、2、3日しっかり読むと、今度は「少年サンデー」や「少年キング」を買っている友達の家に行き、交換してこうした雑誌も読んだ。一週間で、マガジン、サンデー、キングの3冊の週刊漫画雑誌を読んでいた。

 

小学校45年になると、図書館で伝記もの、冒険ものなどの本をそれこそ図書館中の全てを読むようになったが、中学受験の勉強もしなくてはいけなくなり、忙しかった。その後も、ずっと高校卒業するまで買い続けた。大学一年生の昭和49年頃になると、少年マガジンよりジャンプが漫画雑誌の主力になったが、どうしてもマガジンからジャンプに鞍替えできず、そのまま週刊誌の購入はやめた。その後、たまにはビッグコミックなどを買うことがあっても、しばらくは漫画とおさらばして、ここ30年間はもっぱら単行本を買うようにしている。

 

今朝、テレビを見ていると、小学生の男の子に大人気の雑誌は「コロコロ」、女の子に大人気なのは「ちゃお」などだが、いずれもかなりページ数が多く、700ページ以上となり、漫画とはいえ、セリフを読むだけで大変である。かっては漫画なんか読まないで、きちんとした本を読めと親からも先生からも言われていたが、今や漫画でも読むだけマシと思うようになった。翻って考えると日本以外の国で、こうした子供向けの漫画雑誌があるだろうが。確かにアメリカにもキッズ向けの雑誌があるが、日本のコロコロのような漫画中心の雑誌は存在せず、同様のヨーロッパ各国、アジアでもないように思える。私が子供の頃から、すでに60年以上の漫画雑誌の歴史が日本にはあり、完全に定着し、それが継承されている。私は67歳であるが、この5歳くらい上までが、完全にマンガ世代となり、子供の頃から週刊漫画雑誌を読み、テレビでアニメを見た世代である。いまだに本屋で漫画コミックを買うのに抵抗はない。私も月に10冊くらいはコミックを買うが、全く飽きず、以前、入院した、時も、文庫本よりコミックの方が楽しめた。

 

こうしたほぼ全世代を包み込んだ、膨大な漫画ファンが日本にいて、日本のアニメ、漫画文化を支えている。ただ日本でも紙媒体の漫画の売れ行きは、年々減少しており、今や出版物の売り上げのうち20%以下の状況になっている。実際、私も、紙媒体のコミック本も買うが、デジタルで買ってみることも多い。若者にとっては、スマホでどこでも読めるのが魅力であろう。今や漫画のコンテンツは、テレビ、映画のアニメだけではなく、ゲーム、あるいはドラマ、実写映画など、あらゆるところで使われており、その分野では日本は圧倒的に有利である。確かに近年、韓国や中国などでも多くのアニメ、漫画が作られ、またアメリカのディズニー、ピクサーなどの巨大企業があるが、作者が一人で、ストーリを考え、作画するという日本のやり方は、他国では真似ができないようだ。例えば世界的ヒット、「進撃の巨人」など、どこからあんな発想が出てくるのか、不思議な作品である。また18年続いた「センゴク」などは、新しい歴史解釈で、よほどNHKの大河ドラマよりは面白い。本当に次々新しい作品が出ていて飽きない。ただこうした作品もまずは、週刊誌で掲載され、それが単行本、アニメ、映画と発展しており、ピクサーのようにいきなり映画とは本質的には制作過程が異なる。やはり作家が一人で取り仕切る日本の漫画には、週刊誌の存在が欠かせないと思う。新人が週刊誌に掲載され、人気がでて、長期連載となり、単行本化、アニメ化、そして映画化という流れの中、週刊誌がなくなってしまうと、新人発掘も難しいし、いきなり単行本を描けと言われても、作家としては難しいし、出版社も売れるかわからない作家の単行本を出版しない。それゆえ、最初の週刊誌あるいは月刊誌がなくなってしまうと日本の漫画文化、アニメ文化もかなり消退しそうである。


 

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