2023年10月15日日曜日

サッカー選手は厳しい

 


以前のブログで、プロのサッカー選手になるのは東京大学に入るより数十倍、数百倍難しいと言ったが、実際の選手について少し調べてみた。あくまでの一つの例であるが、高校サッカー選手権で優勝した2015年度の青森山田高校の選手のその後についてネットで検索した。

 

まず、当時の青森山田高校サッカー部の主将は賢い人で、サッカー推薦で慶應義塾大学に入り、現在は経営コンサルタントとして活躍している。ワントップのFWの選手は、仙台大学に入学したが、プロにはならず、今はわからない。MFの選手は、A選手は仙台大学を卒業し、J3のいわきFCに。B選手はモンテネグロのプロとなるが、半年で帰国し、WEB会社へ、C選手は高校卒業後に念願のプロ(ジェフユナイテッド千葉)に、D選手はこれも高校卒業後にプロ(清水エスパルス)、E選手は明治大学卒業し、今はJFLのラインメール青森に、バックスのF選手は、東京学芸大学卒業して、JFLのホンダロックSCに、G選手は高校卒業後に、ベガルタ仙台に入り、今はJ3の松本山雅FCに、H選手は阪南大学に入学、卒業後は不明。I選手は東京学芸大学卒業し、今はホンダロックSCに、GKは卒業後、FC東京に入り、今はJFLのラインメール青森にいる。

 

このメンバーで、高校卒業後にJ1入りしたのが二人だが、D選手は、U16,19,20,21,22の日本代表だったが、現在は怪我のために欠場でしていて、チーム自体もJ2に降格している。C選手は昨年、わずか8試合の出場で、今季はチームもJ2に降格している。そのため2023年現在、2015年度の青森山田高校の選手のうち、J1選手はおらず、J2選手が2名、J3選手が2名、JFL選手が4名、プロでサッカーをしていない人が4名となる。日本で最高の高校サッカーチームの卒業生の進路はこんなものである。進学校で有名な灘高校が一時、東京大学に100名以上入れていたのと桁違いである。

 

サッカー選手の年棒は、J1リーグでは平均で3658万円、最高は先日辞めたイエニスタ選手の20億円とかなり高額となる。ただJ2リーグになると平均年棒は400万円、J3リーグになると年棒が300-400万円程度で精一杯となり、ほとんどの選手がアマチュア契約で、バイトを掛け持ちしている状態となる。JFLになるとさらに厳しく、もはやアマチュアに近く、年棒で100万円以下という。とてもサッカーだけで生活できない。平均して256歳で引退するという厳しい世界で、この給与はかなり低い。

 

おそらく青森山田高校は、高校サッカー界のトップ校であり、まさしくサッカー界での灘高校や開成高校と言ってよく、実際、全国から優秀な選手が集まり、切磋琢磨してレギュラーになる。そのレギュラーの7年後の状況を見ると、ほとんどの選手が同世代の大卒の若者と同じか、それ以下の給与である。さらに残された選手生活の期間も少なく、サッカー以外には何のキャリアもなく、引退後は全くの新卒扱いのセカンドキャリアとなる。他の高校のサッカー部というと、うまくいって大学にサッカー推薦で入学できるくらいで、プロ、それもJ1に入る選手は稀であろう。最近で言うと筑波大学を卒業した三苫選手や、明治大学の長友選手のような例もあるが、25,6歳で辞めることを考えると才能のある選手はできるだけ早く活躍した方がよく、海外のプロ選手で大学卒業は珍しい。

 

慶應義塾大学などの有名私立大学に入るには、勉強して入試を受けて入学する方法以外に、スポーツなどの特技で入学する方法がある。サッカーや野球で推薦を受ける場合、慶應高校でいえば、高校の方が推薦枠は広く、大学は狭い。こうした有名大学に入れば、セカンドキャリも開けていて、卒業後はサッカーを辞めて普通の会社に就職するケースも多い。プロになってJ2、3のリーグに入るよりはよほど収入もいいだろう。さらにいうと、夢が叶って高校卒業後にJ1リーグに入り、10年以上の活動ができたとしよう。夢のような恵まれた状況である。それでも怪我もあるし、30代の半ばになると体力的には衰え、一般的には引退することになる。どこかのサッカーチームで監督、コーチとして雇ってくれればいいが、それでもJ1でコーチの給与は600万円、J2350万円、J3ではなんと250万円しかもらえない。大学、サッカークラブのコーチの給与も似たようなもので、100-280万円くらいで家族がいて生活できる額ではない。こうした境遇でも余程恵まれた方で、多くの若者は引退後、サッカーとは無関係な新たな仕事を行うことになる。

 

子供がサッカーなどのスポーツをしている親の中には、子供以上に熱心になり、送り迎えはもちろん、遠征にもついていき、中には部活とは別にサッカースクールに入れる親もいる。言い方はきついが、プロのスポーツ選手になるのは、芸能界も含めてあらゆる職業の中でも最も過酷な仕事であり、将来的にも子供にとって厳しい生活を強いる選択となることは、親としては理解しておく必要がある。

 

 


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