2023年11月17日金曜日

ゴジラ -1.0

 




子供の頃、尼崎東宝で、若大将シリーズと抱き合わせで、「ゴジラ対キングコング」、「モスラ」などの怪獣映画を夢中になって観た。流石に小学校も高学年になる頃、ゴジラの息子が出てくる頃には、ふざけるなという気持ちになり、もう見に行くこともなくなった。ゴジラに息子がいて、その息子を可愛がるゴジラ、とんでもない映画である。その後、ハリウッドによるリメイク版もあったが、あえて映画館で見る気持ちもなく、DVDでは見てみたが、それほど面白いとは思えなかった。ところが2016年公開の「シンゴジラ」は面白いと評判で、久しぶりにゴジラ映画を映画館でみたが、これはよかった。最後の新幹線を使ったシーンは馬鹿げたことを大真面目に撮影し、スカッとした。

 

今回の「ゴジラ-1.0」は「シンゴジラ」よりはるかに映画としてはよくできた作品であった。従来のゴジラ映画は、ゴジラの破壊とそれへの攻撃が主眼であったが、今回の「ゴジラ-1.0」は人間ドラマがもう一本の流れとなっていて、映画としてははるかによくできていた。特にミリタリー好きの私にとっては「震電」の登場には痺れた。

 

ネタバレになるが、爆弾を機体前方に詰める機種は、日本には震電しかない。機種前方に250kg爆弾を積むのだが、前方部の片方の機銃を片付ければ、なんとかなりそうで、それほど大きな矛盾はない。最初のシーンで零戦52型が250kg爆弾をつけたまま着陸するが、これも特攻機では爆弾を投下できない構造のためにこうした危険な直陸が行われた。大戸島というのは架空の島であるが、特攻機の不時着機用の基地として喜界島や徳之島があった。一番気になったのは座席射出装置で、これは大戦中の日本機には装着していない。ただ大戦末期のドイツ機には射出装置が装着されていて、アメリカ軍の協力があれば、震電にも簡単な射出装置はつけられたかもしれない。確か、震電は前脚が長く、試験飛行中に折れたようだが、前方部へ250kg爆弾を積むと、帰還時には前脚は確実に折れていたと思われる。一方通行の出撃である。映画には旧日本の艦船として、巡洋艦高砂や、駆逐艦雪風などが出るが、これも戦後に残っていた艦船でこうしたシーンで登場しても違和感はない。駆逐艦隊の指揮官として少し太った人が映画に出るが、おそらく史実で考えれば、駆逐艦雪風の名艦長、寺内正道中佐が似ている。ざっと観たかぎりミリタリーオタクにも納得する内容になっている。最後のゴジラへの震電による攻撃は完全に「永遠の0」の再現であるが、結果は嬉しい、どんでん返しで、これは観客も納得する。

 

監督の山崎貴は、「永遠の0」、「Always3丁目夕日シリーズ」、「海賊と呼ばれた男」、「アルキメデスの大戦」など、昭和をCGで再現するのが得意な監督であるが、このゴジラ映画でも遺憾無く発揮され、ゴジラが銀座を襲う場面はこれまでのゴジラ映画の中でも秀悦である。ただ主人公の名前は敷島というが、すぐに関行男中佐の初めての特攻隊、敷島隊を思い出し、ちょっと安直なネーミングのような気がしたし、神木隆之介も悪くはないが、朝ドラ「らんまん」のイメージが残り、もう少し、影のある俳優の方が良かったかもしない。また厳しい言い方だが、子供役、明子の子供、二歳くらいだが、顔は可愛いのだが、発音が不明瞭で、芦田愛菜であれば、二歳でももっと演技できたのかと思ってしまう。

 

それでも、「ゴジラ マイナスワン」は過去多くのゴジラ映画の中でもベスト3に入る映画で、かなりヒットになるのは間違いない。ただ内容がかなり日本的なので、ハリウッド映画に慣れたアメリカでどこまでヒットするか。例えばいきなり主人公の家に典子が子供を連れて上がり込んでくるが、相当期間が経っても男女の仲にならないのは理解しにくいだろう。12/1よりアメリカ公開するが、観客動員数が注目される。日本ではレーティングはGだが、アメリカではPG-13なのは残念であった。この映画がアメリカで受け入れられれば、今後、アニメ以外の日本映画ももっと海外進出を目指してもいいかもしれない。おそらく続編はあると思うが、次は娘の明子が中心となる物語となろう。大人になる昭和40年から50年頃、バブルの前後が舞台か。掃海艇の話であれば、1950年の朝鮮戦争への出動した特別掃海隊か、その次は1991年の湾岸戦争派遣があるが、これは年齢的には無理であろう。ただ日本周囲の海での掃海活動はずっと行われていたので、監督が得意とする昭和30年頃を舞台にしても構わない。典子の首元にあるゴジラ模様の黒い火傷痕、気になる。


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