2023年11月19日日曜日

お勧めしない矯正歯科医院

 


今年の1月には、マウスピースモニター商法による矯正歯科治療のトラブルをめぐり集団訴訟が起こり、「デンタルオフィースX」が倒産し、今年の9月には「キレイライン」によるアライナー矯正をしていた東京プラス歯科矯正歯科が倒産し、さらに同じく9月末には「あーすマウスピース矯正Lab新宿本院」が倒産し、歯科医のいないマウスピース医療として関心を集めたアメリカ大手のスマイルダイレクト社も10月には倒産した。今後もマウスピース矯正専門にしている歯科医院にとっては厳しい状況となっている。矯正治療は2年以上の長期の治療期間が必要なために、治療途中で医院が倒産してしまうと、その後の治療ができず、患者さんにとって費用は払ったのに治療できない困った状況となる。一部のアライナー矯正歯科医院ではこうした患者の治療の継続をすると言っているが、患者さんにとっては再度治療費用がかかるので安心することができない

 

こうした行ってはいけない矯正歯科医院を知るいい方法はないのか。ズバリ医院のホームページを見れはわかる。

 

1.インビザラインプロバイザーを書いているところはやめる

インビザライン社は年間の利用患者数の多いドクターをステータスランクで表彰している。症例数により、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンドプロバイダーの6つのランクに分けているが、これは全く歯科医の技量を評価するものでなく、注文数の多さ、インビザライン社からすればお得意様を表彰しているだけである。こうした企業によるランクをホームページ上で表記することは医療広告法では固く禁じられており、違法である。こうした違法表記を平気で、それも広告として大きく掲げている歯科医院は、問題である。一つはこうした医療広告法を知らないのであれば、それは知識不足であり、知っているのに出すのはもっとタチが悪い。

 

2.症例数、最高、日本一などの誇大広告、比較優良広告、体験談

何の根拠もなく、症例数を書くことも医療広告法では禁止されている。敢えて書く場合は、客観的に実証できる数値でなくてはいけないし、第三者が情報の開示を求められれば、それに応える必要がある。比較優良の制限としては、最高、日本一、県内唯一、日本有数のなどの言葉は使えない。誇大広告の範囲も広く、マウスピース矯正センターという名称も誇大広告、安全な治療ですという表現も誇大広告となる。またインビザラインは、未承認医薬品であり、薬機法としては医療機器と認められてはおらず、その旨、入手経路などを記載していなくてはいけない。さらに日本の矯正歯科の学術的な中心である日本矯正歯科学会では2度、異例のコメントを出しており、適用症例には軽度の凸凹、空隙など歯の移動量が少ないケースに限られ、精密な移動はできないとしている。もちろん反論もあるであろうが、学会としての正式なコメントであり、もし治療結果について訴訟などで意見を求められれば、学会、大学、専門医としてはアライナー矯正についての否定的な意見を言うだろう。現状の多くのインビザラインをしている歯科医院は、患者に訴えられれば訴訟に負ける。

 

3.品位を損なう内容の広告

これは主として値引き広告である。今ならーー特別価格で、期間限定で00%引などの表現は全て品位を損なう広告として禁止されている。私のところでも兄弟割引、二人目は10%3人目は20%引きとした記載が品位を損なうと削除を求められた。金策に追われ自転車操業をしている歯科医院は、急いで現金確保を狙うため、一括払いの方が安いと勧める。矯正歯科治療は期間がかかるために、途中での転居などもあるために分割での支払いが望ましい。

 

要するに医療広告ガイドラインに違反しているHPを平気で出している歯科医院での矯正治療はやめた方が良いのである。まず日本矯正歯科学会の認定医では、学会の委員会は全てのHPをチェックし、修正されないと認定医をもらえないため、概ね認定医の医院ではガイドラインに違反することはない。歯科、医院が、野放しで宣伝をするようになると、病気、命が商売になってしまう。これを想像してほしい。「あなたのかかっているガンは1日で治る。ただし治療費は一千万円」、「この薬を飲めばコロナには絶対かかりません」、「この機械を使えば近視が治ります」、究極は「この治療を受ければ不老不死です」。こうした広告が常時、テレビ、新聞、雑誌で掲載されれば、どうであろうか。いくら経営とはいえ、これほど社会混乱することはない。そのため欧米では「医療は商業として実施されてはいけない」という原則の元に、厳しい広告規制が取られている。

 

ある歯科医に聞くと、宣伝に金をかければ、実際に患者が来るそうで、患者の方も安易な広告に乗りやすい点があるのだろう。そうした点では、日本でももっと厳しい医療広告規制を行うべきで、違反者には医師、歯科医資格剥奪も含めて厳しい処分を求めたい。特に治療前後の写真などは本体禁止事項であるが、限定解除というザル要件があるので、なし崩しとなっている、早急に限定解除要件は廃止すべきである。

 

なお医療広告違反については、厚生労働省の「医療機関ネットパトロール」という監視体制があり、違反件数は医科に比べて歯科がほぼ2-3倍も占める(2018)。多くは矯正治療も含めた審美歯科関係で、インビザラインのケースもここに含まれる。ただ評価委員会から改善、中止を求められるだけで、一旦中止して、また少し変えて再開するのだろう。


 


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