2023年11月5日日曜日

日本矯正歯科学会大会 新潟

                  月岡まんじゅう







今年の日本矯正歯科学会は、新潟市で行われた。新潟県で学会が行われるには20年ぶりくらいか。以前は、弘前からだと秋田市を介して、日本海側を新潟まで特急が走っていたが、今は秋田までかろうじて快速、特急があるが、弘前―新潟を結ぶ特急はなく、結局、新青森から大宮まで、そこから新潟まで新幹線で行った。かなり遠回りだし、費用も高い。時間は昔とあまり変わらず、6時間かかった。

 

久しぶりの新潟は、天気も良かったせいか、随分垢抜けた街になっていた。1970年代にサッカーの試合で新潟大学に行ったことがあり、そして20数年前に矯正学会があったが、どちらもどんよりした天気だったせいか、どうも新潟は暗い街という印象があった。

 

佐渡島を除くと、新潟市はあまり観光地がないため、今回の学会では一泊目は、市内のビジネスホテルに泊まったが、二泊目は、新潟近郊の月岡温泉に泊まった。あまりよく調べなかったのか、新潟駅から新発田駅までJRで行き、そこからタクシーで月岡温泉に行ったが、豊栄という駅からはシャトルバスも出ているようで、失敗した。旅館は「摩周」という高級旅館で、大変コスパの高い旅館であった。このブログでも以前、相当厳しく評価した軽井沢の星のやのホテルに比べると100倍、良かった。温泉は最高だし、部屋もいいし、従業員のサービスも完璧、料理は普通という塩梅だったが、料金に比べて非常にいい宿であった。周りには何もないところであるが、それでも楽しい。またこの月岡温泉のお土産として「月岡まんじゅう」があるが、これは郡山の薄皮饅頭に似ているが、それより皮はしっとりしていて、アンコもうまい。日持ちがしないためか、新潟市内では売っておらず、ここでしか買えない。

 

学会自体については、個人的には昔、咀嚼能力の研究をしていたので、そういた機能と咬合との関わりに関するテーマに興味を持った。不正咬合者は、咀嚼機能が正常咬合者により劣っており、脳機能や消化、呼吸とも関連することが示されていた。不正咬合で、それも重度であれば、こうした機能的な問題も多くなるようだ。それに関連して、子供の不正咬合に矯正治療については健康保険の適用とすべきだという声がかなり大きくなっていることが報告されていた。各種団体からの要望で、ほぼ国会では適用すべきという採決が行われ、今は実務協議に入っているようだ。子供の不正咬合、それも重度のものについては保険適用すべしという声は以前から強い。ひどくなった重度の骨格性は反対咬合や、逆の上顎前突や開咬では、外科を併用した外科的矯正治療が保険に認められている。一方、将来的に外科矯正になるような患者の一期治療については、保険治療は認められていない。早く治療を開始すれば外科的矯正を回避できたかもしれないが、悪くなってから保険が認められるというのはおかしい。重度の不正咬合については小児についても保険適用にすべきであろう。

 

こうした問題については。30年ほど前にも東京医科歯科大学の三浦名誉教授がリーダーで調査されたことがあり、重度の不正咬合にかぎって保険診療にしても、確か医療費予算は数百億円程度であり、国民一人あたり数百円の出費で、万一、子供が重度の不正咬合であれば、保険適用できるというのはメリットが多い。矯正治療は高額な治療費がかかるため、こうした制度は国民皆保険の趣旨からも必要な制度である。ただ誰が治療するかという点が問題であり。おそらく重度の骨格性の問題にある不正咬合が対象であるなら、その治療は難しいし、また将来的に外科的矯正の対象になる可能性が高い。

 

例えば、下顎骨のかなりの劣成長を伴う上顎前突症例が保険適用になったとしよう。一期治療では機能的矯正装置や顎外固定装置も使われるかもしれないが、いずれにしても下顎骨の前方への成長を期待する治療法がとられる。うまくいって下顎骨の前方成長があり、正常咬合になることもあろう。また凸凹があり、小臼歯抜歯、マルチブラケット装置による二期治療が必要なケースもあろう。ただ重度のケースが保険適用になるなら、下顎骨の前方への成長が少なく、歯の移動による代償的な改善、あるいは外科的矯正を併用する症例では、高度な矯正治療の技術と経験が必要となり、まず一般歯科医では対処できない。

 

こうしたこともあり、重度の小児の不正咬合の治療を保険適用にするなら、治療を従来の顎変形症を扱う矯正歯科医院に限定した方が望ましい。学会ではイギリスの不正咬合の判定基準に沿ったグレードを発表していたが、オーバジェットが6mm以上、−4mm以下といった視診による判定でもよかろう。学校検診の不正咬合の項目で、“要専門医受診”を勧告されるような児童については、学校歯科との整合性もあり、早急に保険適用になってほしい。うまくいけばここ数年以内に一部の小児の不正咬合については健康保険の適用になるかもしれない。

 

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