2024年1月11日木曜日

ネットの力は強い

 



ネット上に医院のホームページを作ったのは2008年頃だが、15年間続けていたホームページを昨年の11月に閉鎖した。開業したころは、ホームページなどを見て来る患者さんなどいないと思っていたので、友人に比べて公開するのも遅かった。1995年の開業以来、新しい患者さんには、どのようにしてここの医院のことを知ったかと聞いていたが、最初の頃は友人、知人から聞いたという本当の口コミによるものが多かった。ただホームページ開設後は、次第にホームページを見てきましたという患者さんが多くなった。

 

数年前からは子供の治療をしていないので、成人患者のみをとっていたが、それでもここ2、3年は年間250名程度の新患がいた。ところが昨年11月にホームページを閉鎖し、新規患者の受付をやめたところ、一気に新患の予約電話が減った。11月、12月の2ヶ月間の問い合わせが5件、そのうち3件は子供の矯正治療についての親からの問い合わせなので、成人患者からの問い合わせがわずか2件しかなかった。昨年の10月までは月に20名くらいの問い合わせがあったことから激減したことになる。もちろん新規患者は受け入れていないので、電話で問い合わせがあっても全て断っているが、そうした情報がこんなに早く周囲に広まったとは考えにくい。

 

子供の矯正治療をしたい場合は、親はどうするか。まずネットなどで評判や費用などを調べるであろう。さらに親類、友人、知人、あるいは矯正治療をしている子供の同級生の親からの意見の参考にする。多くの親は知人、友人から聞いて、私の歯科医院を知ったという。一方、成人、特に若者は、主としてネットだけで検索して、矯正治療をするところを探す。もちろん知人や友人に矯正治療をしている人がいれば、直接聞くと思うが。そのためホームページを閉鎖した瞬間に、こうした若者からの予約電話が激減した。知人の矯正歯科医が、宣伝に費用をかければかけるほど患者は来ると言っていたが、特に若者をターゲットにする場合はこのやり方が効果的なのであろう。若者で矯正治療を希望している人がいるとしよう。彼らはまずネットで「弘前 矯正歯科」などで検索して、ヒットした医院のホームページを比較して、予約の電話をするようである。さらに5ちゃんねるや、You Tubeなどでかなり勉強する人も多い。費用がかかり、期間もかかるため、できるだけ一生懸命に情報を集めて治療しようと考える。

 

ところでここにネットの大きな落とし穴がある。まず医療広告法により、広告できる内容はかなり厳しく制限されていて、比較優良広告、誇大広告、品位を損ねる広告など、こうした規制を厳密に守ろうとすると見る人にとって全く魅力的な広告にはならない。治療前後の比較写真、体験談、割引、症例数など、患者にとって最も知りたい魅力的なことをホームページ上には載せられない。日本矯正歯科学会でいえば、認定医の審査、更新の際にはホームページのチェックが行われ、修正が求められる。一方、矯正歯科学会の認定医でない先生の広告は野放しで、好き勝手な広告をしている。そのため、ネットやYou-Tubeで派手な広告をしている先生のほとんどは日本矯正歯科学会の認定医を持っていない。日本においてまともな矯正治療をできるのは、認定医の資格を持つ先生であり、こうした先生のところで矯正治療を受けないとうまく治療できない可能性が高い。

 

矯正治療を受ける成人患者の多くは、ネット上で治療を受ける医院を探す。そしてどうしても宣伝の派手な、いいことしか書いていない医院を探しがちで、こうした医院に予約して行くと、すぐに治療を勧められ、治療することことになる。インビザラインで問題の多い歯科医院では、来院するとすぐにデジタル印象をとり、そのシミュレーションをして、同意すると次回から治療に入る。あまり考える暇を与えずに治療に入るやり方である。ネットでは信じられないくらい多くの情報があり、その中から真実を探すのは非常に難しく、勢い、いいことを魅力的なことが書いている歯科医院に飛びつき、そこで治療を開始することになる。こうした医院では、特に矯正治療の教育を受けていない先生が治療するために、まずまともな治療結果は期待できず、高い費用を払った上に失敗に終わる。

 

逆説的に言い方をすると、派手な、魅力的な宣伝をしている歯科医院での矯正治療は受けてはいけないことになる。なぜならきちんと矯正歯科を学んだ認定医以上の資格を持つ先生は派手な宣伝をするのを禁止されているからで、さらにいうと医療広告ガイドラインを平気で破るような歯科医院は金儲け歯科といっても良い。Googleなどの口コミサイトも企業に金を払えば、高い評価が集まるので、高評価となる。あまり参考にならない。一番いいのはそこで治療を受けて終了した患者さんの意見であるが、腹の立つことはコメントに書くが、特に問題がなかったことについては報告しないもので、まず知人、友人にそうした人がいないとわからない。ネットでいい矯正歯科医院を探す最低限の方法は

 

1.矯正歯科専門医院が良い。   一般歯科の合間に矯正治療ができるほど甘くない。

2.院長の経歴を見る  日本矯正歯科学会認定医以上の資格を持たないと矯正治療の基本、マルチブラケット装置での治療は無理である。できれば、大学の矯正歯科学講座に8年以上いて、助教、講師以上のキャリアを持つ先生が院長。

3.開業歴が長く、患者が多いところが良い  信頼がおけるということになる。

4.早急な矯正治療を強く勧めない。通院条件を配慮する(転勤、卒業後の進路) 矯正治療は緊急性がなく、将来的に転勤、あるいは卒業後に遠方に就職予定なら、そちらでの治療を勧める、紹介状を書いてくれる。

5.特定の治療法を勧めない インビザラインのみしか勧めない歯科医院は問題が多い。多くの選択肢の中から選ぶシステムが良い。

6.派手な宣伝文句のところはやめる 本当に名医で患者の多いところは、これ以上の患者は来てほしくないので、ほとんど宣伝しない。逆にYouTubeに頻繁に出たり、派手な宣伝をする歯科医院は、患者の集客のため、つまり金儲けのためである。

 


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