2024年1月15日月曜日

災害時の輸送に無人ヘリコプター

 




能登半島沖地震の物資救援は難航している。各地で、道路の崩壊が起こり、途中まで車で輸送できても、そこから先に物資を送ることができず、自衛隊員が人力で運んでいる。本当にありがたいことではあるが、こうしたことは今後の災害でも起こりえることだし、戦時下でも同様なことが想定できる。

 

当初はもっとヘリコプターを利用できないかと思ったが、冬場で天候が悪い日が多く、リスクの大きなヘリコプター運航は簡単でない。また一気に大量の機材や物資を送るとなるとある程度の平坦な着陸地点が必要であるが、そうした条件が揃えられないとヘリコプターによる物資を送るのは投下することになる。空中投下もまた住民が住む地点では大きなリスクが伴い、万が一住民の家にあるいは人にぶつかると大変なことになる。

 

YouTubeで人力による輸送を見ていると、道路が崩れ落ち、そこを迂回して石だらけ、泥だらけの山の中を隊員がリュックに食材などを詰めて運んでいる。一人20kgでも相当運ぶのはキツく、余震による新たな二次災害の可能性もある。国内のドローン製造会社により作られた日本UAS産業振興協議会が実験的にドローンを使って短距離、寸断している道路部分で薬を輸送した。これは最悪の場合でもドローンの墜落だけなので、もっとも安全な輸送方法と言え、今後の災害支援のいい考えだと思われる。ただ搭載量は5kgしかなく輸送方法としては用途がかなり限られる。

 

例えば、農薬散布で定評のあるヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプターは50kgの荷物を 90kmほど運ぶことができる。少し小型の積載量35kgの「FAZER R G2」で価格は134万円と民生用なので非常に安い。パトリオットミサイル一発、4億円で、何と300機の無人小型ヘリコプターが買える。一機で50kgを運べるとすると300機では15トンの物資を運ぶことができる。ウクライナ戦争では、従来の戦争に比べてドローンを利用した戦いが大きな比重を占めており、それも軍用だけでなく、民生用も多く活用されている。なかば消耗品扱いで、大量のドローンが戦争に使われており、値段が安いことと扱いが普通の兵士でもできることが一つの条件となっている。ヤマハの無人ヘリの場合は、農業でも使用を考えており、農業従事者にも扱えるように、また万が一の場合も損害のないように多くの安全装置がついており、自衛隊の通常の兵士でもある程度訓練を受ければ使えるだろう。実はこのヤマハの無人ヘリは中国も興味を持っていて、以前、不正輸出事件があったくらいである。

 

自衛隊においてもウクライナ戦争の教訓としては、ドローンを使い捨て機器としてもっと活用する戦術が必要となり、同様に災害時においても、大型の有人のヘリコプターも重要であるが、ヤマハの小型無人ヘリコプーターや他の民生用のドローンなども安くてある意味使い捨てで活用でき、こうした機材を利用した作戦も検討してもよかろう。今回の能登半島沖地震で言えば、輸送艦「おおおすみ」、大型の「ひゅうが」、あるいは小松基地を第一次拠点として物資の蓄積し、そこから小型の無人ヘリコプターを活用して、孤立した地域への物資搬送に使う。あるいは初期段階では被害状態の偵察にも使える。道路が寸断したところでは、寸断した道路までトラックなどの陸路で物資を運び、そこから孤立した地域まで無人ヘリコプターでピストン運転をする方法もある。隊員一人で20kgの物資を運ぶなら、無人ヘリコプーではその2倍以上の物資を数十分の1の時間で供給できる。おそらく「おおすみ」や「ひゅうが」であれば、十機以上の無人ヘリコプターは搭載可能であろう。

 

いざ軍用となると、妨害電波、悪条件への対処、爆撃装置など、新たな開発かかり、少数生産となるため、民生用とは桁違いの価格となろうが、むしろウクライナ戦争で分かるように消耗品扱いで、民生用を少し改良する程度で、安い調達費用で数を揃えたい。実際の戦争でも、今回の地震と同様に孤立した集落、地帯への武器、食料などの発送が必要になるケースは想定でき、救援物資を空中投下で行う方法以外にも、少量の物資を無人ヘリ、ドローンで発送する方法も検討しておく必要があろう。できれば防衛庁とヤマハで、災害用に活用できる輸送用無人ヘリ、あるいはドローンの共同開発もあるだろう。川崎重工は貨物搭載能力200kgの大型無人ヘリコプターをつい最近開発した。ローター直径が7mのかなり大型のものである。アメリカでも積載量550kgの無人ヘリが開発されているが、輸送となるとドローンより無人ヘリの方が積載量が多いようだが、あまり大型では今回のような災害救援には向いてない。


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