2024年1月5日金曜日

殊勲艦 輸送船「おおすみ」

 




日本帝国海軍の第二次世界大戦の最高殊勲艦は、戦艦金剛と言われている。1941年のマレー沖海戦から、沈没する194411月まで幾多の海戦に参加し、活躍した。そうした点では戦後の海上自衛隊の殊勲艦を挙げるとすると、今のところ輸送船「おおすみ」となろう。

 

正月に起こった能登半島の地震においても、「おおすみ」は13日には早くもブルドーザーやダンプカーなどの約30台の大形重機を積み込み、呉基地を出港し、1月4日には輸送用エアクッション艇を利用し、重機を陸上げして被災地での活動を開始している。

 

日本で最初の全甲板の空母のような輸送船で、計画にはかなり論議を呼んだ艦艇である。基準排水量は8900トンで、その後、作られた護衛艦「ひゅうが」が13950トン、さらに「いずも」は19500トン、大きさも「おおすみ」の全長が178m、「いずも」が248mとかなり小さいが、隊員、物資、車両の運搬に優れているのか、災害となると真っ先にこの艦が災害地に派遣される。これまでの艦歴を見ると、まず最初に1999年にトルコ北西部地震被害の援助として仮設住宅をトルコまで運んだ。その後、2002年には東ティモールへ、2004年にはイラクへ車両を運び、2011年には東日本大震災の救援に、2013年には伊豆大島土石流被害のために、さらに台風30号被害救援のためにフィリッピンへ、2016年には熊本地震に対する災害派遣、2022年には火山噴火救援のためにトンガへ派遣された。

 

日本のほとんどの災害、あるいは海外の災害に派遣された艦艇で、より大型で速力もある「ひゅうが」、や「いずも」よりこき使われている感じがする。輸送船で災害救援にはこの艦の方が向いているのであろう。おおすみ型の輸送船は、この「おおすみ」と「しもきた」、「くにさき」の3艦あるが、どうしたことが「おおすみ」が使われることが多い。おおすみ型の一番の特徴は、エアクッション型の揚陸艇を二艇積んでおり、港のない、あるは破壊された地点にも物資や重機(2両)などを運ぶことができる。また収容能力としては大型トラックを60台以上も積めるし、固有の搭載機はないものの甲板を使ってヘリコプターの離発着を行える。さらに入浴設備や手術も可能な医療機能も備えており、災害派遣艦としても最も適した艦なのだろう。

 

「おおすみ」が就航したのは1998年で、すでに25年経つ。そろそろ次期の後継艦を計画してもよかろう。地震や台風などの災害の多い日本は、周囲は海で囲まれ、道路が遮断されると海からの輸送しかなくなる。そうした意味でも、また「おおすみ」の活躍を見ても、同形艦が是非と欲しいところである。もちろん戦闘を重視した艦艇も必要であるが、平時では災害を重視した「おおすみ」のような艦艇も重要である。

 

これまでの経験から、災害、例えば地震が起こると、まず道路は遮断され、トラックなどの陸路の輸送が障害される。能登半島地震でもそうしたことが起こり、まず、道路を修復して陸路による輸送を開始するまでどうするかということになる。その場合は、輸送手段としてヘリコプターや、さらに重機の運搬となるとエアクッション型の揚陸艇(LCAC)も活躍する。つまりヘリコプターとLCACが必須となる。これに該当するのは艦艇は強襲揚陸艦で、アメリカでは最新のアメリカ級強襲揚陸艦11隻を計画している。排水量は45600トン、全長は257m、オスプレイなら42機を積み込める。流石にここまで大型艦艇は必要ないし、大型艦の場合、出港までに時間がかかると急な災害に対処できないこともある。

 

理想的なことを言うと、どこかの港に、地震などの災害が発生した場合にすぐに対処できるように、ブルドーザーや大型重機、あるいは物資、医療品などをあらかじめ倉庫に集積しておき、艦艇にすぐに積み込まれるようにしたらどうだろうか。これまでの経験からある程度の必要資材はわかっていると思う。人員については、通常の搭乗員以外に、災害時には医官、消防庁の救助隊も同乗できるような仕組みも必要かもしれない。ヘリコプターの発着や海外への災害派遣を考えると、「おおすみ」の8900トン、22ノット、乗員132名はあまりに小さく、できれば「ひゅうが」の大きさと性能が求められる。輸送艦としては各国にドッグ型の輸送艦があるが、全甲板型のものは少なく、また速力は低い。重点を災害救助を目指した日本独自のドッグ型輸送船を開発してほしい。また防衛省がチャーターしている客船、「はくおう」なども、海上ホテルとしての機能があるので、食堂、風呂、個室などが完備されているので、長期の避難が必要なケースではもっと活用してほしい。こうした国内の災害に対応した艦船やシステムは、アジア各国での同様な災害にも活用でき、日本の存在感を示すいいツールとなろう。


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