2024年7月6日土曜日

料理人はお店で修行して技術を習うが、歯科医は講習会で習ったつもりになるのか。

 



矯正歯科医の引退のためには少なくとも二年間ほどの準備期間が必要で、昨年の11月から新規患者をすべて断り、治療中の患者のみを見ている。さすがに8ヶ月過ぎると、目立って患者数は減ってきて、暇な時間が多くなってきた。土曜日はまだまだ混んでいるが、平日は10人程度で、1時間以上空くことも多くなってきた。暇なため、今年の1月のギブアップした新たな矯正歯科専門医試験を受けようと資料を作成している。すでに症例報告、ペーパテストは合格しているが、日本歯科専門医機構の専門共通研修を申し込みを忘れていた。もう引退するので取らなくていいかと思ったが、8月にまた研修があるようなので、もう一度トライしようとしたわけである。今回の申請には、五症例の記録、それぞれ三部を提出するようなので、またコピー機のフル活用である。まあ何とか終了して、あとは研修を受けるだけである。

 

7月には、弘前市の養護教師向けの矯正の講習会と、弘前歯科医師会の講演会があるが、これも以前作ったスライドがあるため、すでに用意はできている。引退後のことは全く考えていないが、バイトなどするとまたなかなかやめられないので、今のところは完全引退しようと思っている。それでも、誰か、矯正治療を勉強したい人がいれば、これまで40年間の経験を教えますと、何人かのお子さんが後を継ぐ予定の先生に言っているが、今のところ、この話に乗ってきたのは、台湾、台中からの留学生で、1年間、土曜日に勉強してもらい、先月も研修先の日大松戸から顎変形症の1日コースに来てくれた。マンツーマンの講義なので、かなり内容の濃い話ができたと思う。ちょっと残念だったのは、友人の息子さんが来春にこちらで開業するので、矯正したいなら勉強に来ませんかと誘ったが、そのままになっていた。ところがTwitterを調べると福岡の筒井塾の矯正のコースを勉強に行くという。確か5回くらいのコースである。費用も高いし、福岡に行くのも大変だと思う。講演する先生のことは少し知っているが、矯正専門医がわざわざこの先生の矯正の講習会に行くことはないと思う。日本でも多くの優れた矯正医がいるが、私が知る限るほとんどの先生は講習会をしないし、仮にやるにしても一般歯科医向けでなく、矯正歯科医向けの講習会を行う。なぜならほとんどの矯正歯科医は、一般歯科の先生には悪いが、一般歯科医向けの講習会をしても意味がない、絶対に習得は不可能だとわかっているからである。特にマルチブラケットについては、最低でも常勤で2年間の治療経験が必要であり、数回の講習会で学べない。

 

講習会で、講演を聞いて、タイポドント実習をすれば、患者にも使えそうに思える。ただ、いざ臨床で使おうと思っても全く役に立たない。大学にいたときに、熱心な先生が講習会終了後にマルチブラケット装置による治療を行い、何度か相談に来たが、まずブラケットポジションが酷く、詳しく説明し、全てやり直してもらったが、やはり酷く、途中で教えるのをギブアップした。やはり横に指導する先生がいて、いちいち確認してチェックしていかなくてはダメである。技術を学ぶには弟子と師匠という環境がどうしても必要で、これらは講習会では学べない。そういうわけで、実際に患者の治療をしてもらい、その中で教えてもらうのは実践的で、なかなか得難い体験と思うが、台湾の留学生以外は誰一人学びに来ないのは寂しい。もちろん授業料などは取らない。

 

ただ最近の若い人のホームページを見ていると、講習会を受けに行くことが目的で、こうした講習会を受けましたという履歴が必要であるようだ。私の講習を受けるより、有名な先生の講習を受けて、それをホームページに載せるのが重要なのである。伝説の歯科医、森克栄先生は、こうしたことを嫌って、門下生の院長室に講習会修了証があると激怒した。私の知っている尊敬すべき先生は、アメリカで数年、留学しても、そのホームページには一切そのようなことは書いていなし、また青森市で勤務している先生はアメリカのタフツ大学の審美歯科コースを修了したが、全くそれを売りにしておらず、普通の保険治療をしている。青森市の先生も知らない。

 

料理人、理容師、美容師は、技術が全てなので、何件ものお店で修行をして、技術を磨いていくが、どうも歯科医というのは億劫なのか、講習会を聞いて、なんちゃって技術習得をしたように思うようである。料理を習うなら、レシピもあるし、YouTubeを見てもいいかもしれないが、プロの料理人になるためには、有名な店で修行をし、師匠や先輩に叱られながら習う必要がある。あくまで講習会は参考にすぎず、技術というのは、今も昔も徒弟関係で習うものだし、それなりの修練期間が必要とする。さらに破廉恥なのは、一回のインビザラインの講習会を聞いただけで、患者に百万円の治療費を要求する輩である。講習会の費用やそれを聞く旅費に費用がかかっているので、これくらい取るのだと豪語し、40年間、矯正治療だけしてきた私のところの料金の2倍を取るのである。ちょっと愚痴ってみた。


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