2024年7月2日火曜日

高級ブランドの闇

 




Forbes Japanの記事(2024.6.29)によれば、ミラノ裁判所が中国資本の下請け業者2社が労働者を搾取していたとして、そのサプライヤー監督をしているクリスチャンディールを1年間、司法管理におくことになった。今年の4月にもジョルジオ・アルマーニも同様な判決を得ている。こうした高級ブランドと言えば、イタリアの品質検査の厳しい工場で生産されたものと思われたが、実際はイタリアに不法入国した労働者を過酷な条件で働かせ、安い工賃、「中国製」の価格で製造されていたというものである。

 

こうした工場ではイタリア製のディオールのハンドバッグを53ユーロ(約9000円)で供給し、それをディーオールは48倍の2700ユーロ(約47万円)で販売していたという。こうした高級ブランドによる非倫理的な商慣習は長年にわたり公然の秘密で、不健全は労働環境、過度の労働時間、相応の賃金が払われない不法就労者の噂があるという。

 

この判決によりディオールの母体であるLVMHの株価は780ユーロから710ユーロに下がり、多くのブランドで最近急激な値上げをしたにも関わらず、その信用を裏切り、上質な製品を提供していないと顧客は知ったと報告している。

 

前回、紹介した綿貫社長のYouTubeチャンネルでも、グッチ、ミキハウス、西村屋の子供用シャツを比較して、縫製についてコメントし、縫製のレベルからすると、ミキハウスが日本製で綺麗な縫製をしているが、グッチと西松屋はほぼ同じ縫製レベルと断定している。グッチのシャツは8万円、ミキハウスは15千円、西村屋は1000円台である。先の報道では、ディオールのバッグは、原価が53ユーロで販売価格がその48倍の2700ユーロであった例を倣うと、グッチの8万円のシャツの原価は1600円程度となる。ミキハウスの縫製費が推定3000-5000円で、この費用で最高の縫製の上質の製品を提供できるのだから、8万円で売るグッチもこのくらいの縫製費用を出すのは全く問題ない。それをケチって3000円の縫製費をその半分にしようとするのが、グッチなどのイタリア高級ブランドの闇なのである。金儲けのやり方が汚い。高級フランス料理店が食材を格安スーパーでの購入するようなものである。さらに報道では、他のイタリアの有名ブランドも同じようなことをしているらしい。こうした会社の経営者は、顧客の上質な製品を届けるという理念は全くなく、あくまで金儲け、企業収入を増やすことばかり考えている。そのため、綿貫社長のチャンネルでも、高級ブランドショップ店員は、あまりブランドに対する思い入れはないようで、それに対して、ヨウジヤマモト、イッセイミヤケ、コムデギャルソンなどの日本のブランドはそうした手抜きはなく、ファンである顧客の信頼を裏切るようなことは考えていない。

 

「ミセス・ハリス、パリへ行く」という面白い映画がある。1950年代のイギリスの家政婦がディオールの服を見て、感激し、ありったけの貯金を持ってパリに行き、ディオールの服を買うという映画である。この映画では、ディーオールの完璧な製造工程を余すことなく伝えており、その価格に沿ったサービスと最高の技術を提供している。ここではディーオールは、最高の生地、レースを使い、最高の仕立て屋、縫製担当者がオーダメイドの服を作っている。高いが、それにふさわしい製品であったが、今ではパリのお店は綺麗であるが、それを作っている工場は、不法滞在している人々を低賃金で働いている。もちろん、まともな製品はできないであろうが、経営者は、ディオールのタグがついていれば、縫製などみるお客はいないとたかをくくっている。映画に登場する1950年代のお針子さんからすれば、今のディオールの製品には失望するであろう。

 

今時の大企業のCEOは、目先の利益、もっと簡単にいうなら、じぶんがCEOである期間でどれだけ業績を上げるかに血眼になっており、創始者の理念などは全くない。最高の服飾メーカであれば、最高の生地、縫製であるのは素人でも当たり前であると思うが、こうしたCEOにすれば100円でも安いやり方を選ぶ。ルイヴィトン、ジパンシーなどを扱うLVMHは売り上げは3兆円を超える企業で、その影響力は強く、こうした企業の闇が暴かれても一般人まで浸透することがなく、いまだにブランド信仰が強い。もちろんブランド品の多くは、最高の材質、仕立てで作られていると信じたいが、綿貫社長のチャンネルで暴かれた闇は数万人には視聴されていることはメーカーも気にして欲しい。私だったら、子供服を買うなら、縫製がグッチと西松屋が同じなら、価格が1/40以下の西松屋を選ぶし、製品の良質性を選ぶなら、縫製レベルがかなり高く、値段が西松屋の7倍のミキハウスを選ぶであろう。


 


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