2007年12月13日木曜日
キリム 1
セネのキリムです。もう少し、細かい画像を載せたいのですが、どうもBloggerのアップロードの調子が悪く、かなり容量を落とさなくてはいけないようです。
このセネのキリムは数年前の兵庫県西宮のアートコアで購入したもので、非常に気に入っています。セネはイランの北西部にある都市で、現在はクルデスタン州の州都サナンダジとなっています。18世紀、ペルシャ中央政府はクルド人の統治を容易にするためこの地にテヘランから役人を派遣し、都市を作りました。その際、クルドの伝統的文化とペルシャのモダンな文化が融合され、キリム、絨毯も独特な発展をしました。
キリムというのは、あくまで絨毯の脇役たるもので、多くのキリムはだいたい絨毯をやや省略したデザインとなっています。極端な例では、絨毯を包む布代わりにキリムが使われていたようです。絨毯は財産と考えられていましたが、キリムはどちらかというと日常品と考えられていたようです。そのため1970年ころ世界中でキリムがブームになるまで、商品とはあまり考えられていなかったと思います。
セネのキリムも、絨毯同様、かなり緻密に作れており、真ん中にメダリオンがあり、花を変形させた独特の模様(ヘラティ文様)も絨毯をデザインを変形させたものと思います。めまいがするような模様です。このキルムはおそらくは1930-1940年ころの製作と思われます。もっと古い、19C末あるいは20初のものは赤みがもう少しあせています。ただボーダと呼ばれる周囲を取り巻く模様をよく見ると、全く左右対称になっていません。イスラム文化では対称性が求められ、商品化されたものでは少しの非対称もありません。1950年以降のキリムはかなり対称なものになっており、その点でもそれよりは古いと勝手に考えています。
たて糸には綿糸、横糸にはウールが使われていて、非常に薄い仕上げになっています。また編み方もSlitweaveと呼ばれる高度の技法が用いられ、曲線が連続的に表現されています。そういった意味でセネのキリムはペルシャの中でも最も優れたキリムと言えると思います(セネの絨毯はもっとすごい)。このキリムもメダリオン部の白の色彩と周囲の赤のコントラストがすばらしいと思います。
セネのキリムは古いものでも比較的コンデションがよく、おそらくは敷物ではなく、壁掛けとして使われたのではないでしょうか。セネのキリムはハーレムの間仕切りに使われ、他の婦人より目立つように複雑な模様にしたというエピソードがあります。現在もセネでは輸出用のものが生産されていますが、どぎつい色彩が使われていて、このキリムのようなしっとりした感じはないと思います。古いものほど人工染料の使われ方が少なく、その分色調がしっとりしています。
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