2015年2月14日土曜日

日本の奇跡:低い物価



 アジア圏を中心にして、各国の賃金差が急速に縮まっている。かって隣国、中国の物価は日本の二十分の一、月給でいえば5000円くらいであったが、今や都会では大卒で7万円くらいになっている。約1/3くらいまでに縮まっているし、さらに差は年々、小さくなっている。同じ隣国、韓国の賃金はほぼ日本と同じ、タイの平均月収は約11万円で1/2くらいである。

 こういった賃金差のなくなった一番の理由は、日本にある。30年に渡り、物価が上がらない、逆に下がった国は世界でも日本が唯一で、当然、賃金も変化はない。一方、世界各国では平均すると3、4%の物価上昇があり、アメリカでも1984年を基準にすると(100)、2014年で238となる。2.4倍となっている。同時期の日本では1984年が87とすると、2014年は1031992年からはほとんど変化がない。比較的物価が変化しないドイツを見ても、1984年が68であるが、2014年は117と2倍弱の上昇がある。世界の物価が上がる中、日本のみが真空状態で、変化はなかった。これはある意味、異常なことであり、奇跡と言えよう。生活者にとっては、変化のない社会であるが、先行きの読める社会であり、日本に住む外国の方と話すと、この状態は望ましいと言う。

 賃金、物価が全く変化のない日本を除く、他国は年々、賃金、物価が上がるのであるから、差がなくなるのは当然である。逆にアジアの他国からすれば、日本製品は非常に安くなっている。かって月収の4か月分の値段であった日本製炊飯器が今では、給料の1/4で買えるのであるから、中国の観光客は買う。翻って日本はどうかというと、海外から買う商品は相対的に以前より高くなることを意味する。前まで安かったものが、現地の物価が上がり、高くなる。ある程度は、利益を減らして価格を維持していても、輸出原価が上がると、当然、値段は上がる。こうして日本製品はアジア圏の人々からすれば随分安くなり、庶民にも手に入るため人気となる。通常、こうした場合、為替が絡み、円高となるはずだが、日本の会社の多くは生産拠点を海外に移しているため、ややこしく、逆に今は円安になっている。このあたりは素人にはわからないが、政府としては物価がまったく上がらない現状は、異常であり、何とか物価をあげようと一生懸命であるが、これは当然、将来的にはインフレになるはずである。ついでに賃金も上がってほしい算段である。

 先日の日本臨床矯正歯科医会(名古屋)の講演の中で、アメリカの先生から米国の矯正臨床コースの説明があった。歯科大学卒業後に矯正科に残り3年間の専門教育を受ける。矯正科が最も人気が高く、成績上位者が受験し、数十倍の難関となる。3年間の授業料は毎年8万ドル×3で計24万ドル、つまり日本円でいうと、2880万円かかる。平均して学生は30万ドルの借金をしており、卒業後、開業医に勤務するものが1/3、開業するものが2/3、そのうち半分はリタイヤした矯正医の診療所を引き継ぐ。卒業してすぐに金を稼ぐ必要がある。専門医の収入が比較的高いので(平均で年30万ドル)、銀行も貸すが、それでも教育費を含めると、莫大な金額を借りることになる。20年前は確か、3、4万ドルだったので、授業料も2、3倍になっている。日本の歯科大学では、アメリカのような卒後臨床コースはないが、それでも国立のフルタイムの研究生で、給料がもらえないにしても年間数十万円で、桁違いに安い。そのため、日本では矯正科に数年いても専門開業せず、一般歯科医に勤務することも多い。アメリカの学生からすれば何ともったいないとことである。

 こういったことを考えると、世界から見れば、日本は物価の安い国となりつつあり、今後、海外からの観光客はますます増加するであろうし、教育分野、医学系においても、授業料の安さから多くの学生が集まる環境となっている。同時に世界的な潮流をみると、日本だけが物価が低いままという時代はどこかで崩れるはずであり、資産管理も含めた個人的な防衛も必要かもしれない。


0 件のコメント: