2015年2月15日日曜日

飛行機の話





 先日、変な夢を見た。飛行機とヘリコプターが空港から急に発進したかと思うと、離陸した直後の飛行機が家の近くに墜落、炎上し、それによる火災が我が家に迫ってくる、何を持ち出そうかとあせっているところで目が覚めた。
変な夢だなあと思っていたところに、その日、台湾の飛行機事故の映像が飛び込んできた。

 全くの偶然であったが、なまなましい映像に驚いた。パイロットが住宅密集地を避け、河に着陸しようとしたが、不幸にも高度が足らず、墜落した。当初、パイロットの英雄的な行為に賞賛の声が挙った。その後のボイスレコードの調査から、片方のエンジンが停止した時点で、その再始動をする際に誤って回ってきるもう片方のエンジンを停止させ、両方のエンジンが一度に停止し、失速して墜落したという。完全にパイロットの判断ミスの可能性が出ている。

 離陸時に片方のエンジンが急に停止した場合の緊急対応は決まっており、ある程度の離陸速度が出ている場合のそのまま離陸する。健全なもう片方のエンジンで飛行して、着陸することになっている。もう20年前になるが、青森空港から大阪に行く時、当時の東亜航空のMD-81で、こういった事故に遭遇した。離陸して数秒後、上昇中に左側後部でバーンという音がした。そのまま飛行を続け、1、2分後に「エンジン故障に付き、緊急着陸します」というアナウンスがあり、ゆっくりと左旋回して、完璧に着陸した。さすがに着陸後に乗客からは期せずして拍手がおこったが、その後、1000円の無料、食事券をもらい、喫茶店で休息後、東京経由で大阪に向かった。ふと飛行場を見ると、職員が飛散したエンジン部品を回収していた。このMD-81はエンジンが尾翼の前にあるため、片方のエンジンが故障しても片肺での操縦はそれほど難しくはなかったが、通常の主翼にエンジンのあるタイプでの片肺飛行はバランスをとるのが難しい。主翼に2基ずつエンジンのぶら下がった飛行機では理論上、4基のエンジンのうち3基が停止しても飛行は可能性、着陸できる。今回のようにすべてのエンジンが同時に止まる可能性は非常に少なく、燃料系の故障以外にはありえない。燃料が空にもかかわらず、計器の故障でわからず、両エンジンとも停止した事故があった。
そういった意味では今回の事故のように両エンジンが同時に止まり、墜落することは通常あり得ず、原因の追求が待ち遠しい。

 私は飛行機が好きで、多い年で年40回くらい乗ったが、一番恐ろしかったのは、上記の事故ではなく、ネパールのカトマンズからエベレストの麓、ルクラ空港への飛行であった。8人乗りの小型のSTOL機で、パイロットの横の席に座らせてもらった。機体からみるエベレストをはじめネパールの山々の姿は、それはすばらしいものであったが、飛行機が上下するたびにコクピットの前のボールペンが無重力状態となり、浮き上がる。シートベルトをきちんとしないと、それこそ体が天井に叩きつけられる。それでも飛行機好きにとっては、パイロットの横に席に座るほどワクワクする経験はない。いよいよルクラ空港に近づいたが、この飛行場は世界で最も危険な空港の名の通り、山の側面を削ったもので、パイロット席からは前方に小さなくぼみがあるだけである。最終の着陸コースに入ったものの、前には山があるだけで、そこにぶつかっていくのである。飛行場の手前、数キロ前でようやく小さな飛行場が確認されるが、そのまま突っ込み、着陸するやいなやSTOK機特有の急速な停止を行ったが、300m程度の滑走路のギリギリで止まるという案配であった。当時、滑走路は舗装もされず、土のままである。あと怖い思いをしたのは、これも青森空港で30年前のことである。当時の飛行機はYS-11で、空港上空は濃い霧に包まれていた。2度の試みにもかかわらず、着陸できず、これはだめかなあと思っていると、機内アナウンスでパイロットから「お待たせして申し訳ございません。何とか着陸してみせますので、ご安心ください」と決意をみせ、着陸した。帰りのタクシーでは十メートル先の車が見えないほど、すごい霧で、よくこの天候で着陸したと後になって怖くなった。昔の青森空港には、今のような濃霧の中でも自動的に着陸出来るカテゴリーIIIbではなかったので、すべて目視による着陸であった。ちなみにカテゴリーIIIbは民間の計器着陸計器としては最高精度のものだが、自動着陸システムを搭載する機種は、東京—青森のB738は搭載しているが、大阪、札幌行きのボンバルディアQ400CRJ200、エンブラエル170については、オプションでは自動着陸装置はあるが、搭載されているのであろうか。また名古屋便のFDAのエンブラエル170は会社情報から装置を搭載しているが、パイロット、副パイロットが資格を持っているか不明である(飛行には資格も必要)。


 三菱の地元、名古屋で聞くと、名古屋経済はトヨタの売り上げより、三菱重工の新型ジェット旅客機、MRJに大きな期待をもっている。部品製造単価が車より圧倒的に高く、部品メーカーも利益が大きいようである。現在、受注状況は300機、どうか無事故で初飛行を行ってほしいものである。安全性が認められれば、今後十年で数百機の受注があり、数兆円規模の経済的利益が得られる。機体はすばらしいので、何とか成功して、今後の日本の飛行機産業の端緒になってほしい。

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