2016年5月3日火曜日

三重県津市のお肉屋さんー松坂牛ー

左上からロース、ヒレ、牛タン、下はカルビ



 子供の頃のごちそうと言えば、すき焼きであった。誕生日で、何を食いたいかと母親に尋ねられると、決まって“すき焼き”と答えたものだった。関西風のすき焼きは、割り下はなく、鍋に薄く油をひいて、まず肉を焼き、そこに砂糖と醤油をいれて、豆腐、ねぎ、春菊、シラタキを入れるのが定番であった。生卵に肉をくぐらせ、食べる、こんなにうまいものはないと思ったものだ。

 その後、家庭用のホットプレートが登場すると、焼き肉がうちの家のごちそうとなった。実家の隣の家が尼崎のセンター市場の肉屋をしていたため、そこから肉を購入して、ワイワイガヤガヤ食した。大学から帰省する度のごちそうがこれになった。今でも実家にいくと、必ず寿司か焼き肉がその夜の夕食となり、歓迎される。

 今ではすき焼きも焼き肉も、あまりごちそうでなくなったが、それでも旅行先や休日に焼き肉を食いにいくことが多い。弘前では城東の叙々苑の味が好きで、たまに行くが、基本的にはイトーヨーカドーでアメリカ産の安い肉を食べることは多い。全国あちこちで、それこそ数えきれない程、焼き肉を食べたが、最近はブランド牛が増え、各地でうまい牛肉も多くなった。それでも牛肉と言えば、神戸牛と松坂牛であろう。

 神戸牛は地元だったので、食べる機会も多く、本当にうまい。特に鉄板焼きは肉のもっともうまい食べ方と思え、最高の肉が最高の焼き手により調理されると、すごい。尼崎の三和商店街の中央大通り沿いに、昔は神戸牛をメインとした高級鉄板焼きの店があり、親父の景気のいいときは、よく行った。また神戸の山手にも鉄板焼きのうまい店があり、堪能できる。

 それでもこれ以上うまい肉はないと思われるが、松坂牛である。知人が三重の津市に住んでいるため、数年前に訪れた時にごちそうになった。知人の歯科医院の隣に“津ミートカシワギ”という店があり、一階は肉屋、二階がレストランになっていて、ここで焼き肉をいただいた。友人が隣家でお得意さんからということからか、最高級の松坂牛を出してもらった。サシが多く、少し焼いただけで食べるが、あっという間に口の中で溶ける。油が甘く、唯一の欠点と言えば、胃にもたれて、あまりたくさん食べられないことである。ずいぶんたくさん用意してもらったが、食べきれず、こんなにうまい肉なのに、もったいないと最後は必死に食べた記憶がある。

 5月1日が誕生日で、60歳ということから、妻から何か食いたい物があるかと尋ねられ、思い出したのは“津ミートカシワギ”の肉である。地方発送もしているようなので、早速、3人前、一万円と奮発して注文した。松坂牛の高級品となると100g3000円以上するので、今回はおまかせで注文した。届いた品が写真のようなもので、計ると、ヒレが350g、ロースが230g、カルビが350g、生タンが230gの計1160gと量も多い。値段からすれば、おそらくすべては松坂牛ではなかろう。夫婦と次女と3人で食べたが、食いきれず、二日連続、焼き肉となったが、うまい。さすがに最高級とは言えないものの、やはり油の味が甘く、久しぶりにうまい肉を堪能した。さらにヒレ、ロース、カルビ、タンともそれぞれ味が異なり、楽しめた。10000円は高いかもしれないが、外の焼き肉屋で、三人でこの質の肉を10000円では絶対に食べられない。

 津市はおそらく県庁所在地の中でも最も寂れた市であり、この店はさらに中心部から離れた近鉄津新町駅近くにある。あまり観光客が訪れるところではないだろうが、明治からやっている古い店で、地元の方が今日はごちそうということで買いにくる店なのだろう。変に観光ずれしていないところがよい。ランチが安いと地元でも人気があるが、今度はすき焼き用の肉を注文しよう。

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