2018年5月4日金曜日

矯正歯科のクレーム



 先日の千葉の歯科医院の突然の閉院に伴う矯正治療費の問題もそうだが、相変わらず矯正治療費や治療内容についてのクレームが多い。 矯正歯科のクレームについて少し考えてみる。

1.      矯正料金費
矯正治療費には、治療費そのものへのクレームと転医の場合の返金が問題となる。
1)      治療費
矯正治療費はさまざまなタイプがあるが、多いのが基本治療費と調整料という組み合わせであろう。さらに小児からの長期に渡る治療が必要な場合は、一期治療と二期治療にわけ、それぞれに基本治療費と来院の度の調整料、観察料をとる。あるいは調整料も含めてトータルフィとする場合もある。国立大学病院を除くと装置ごとの値段を決めることは少なく、治療終了までに必要な装置はすべて基本治療費に含まれる。さらにいうと、矯正治療の場合は治療が終了して保定に入ってから、後戻りが起こる。患者が再治療を希望したなら、この費用も基本治療費に含めることは多い。またインビザラインなどの治療でうまくいかない、期間がかかり、他の装置、マルチブラケット装置で治療する場合も追加料金はかからない。ただ医療については最善の方法を用いても、うまく治らないこともあるため、医療契約は準委任契約と呼ばれ、医師は患者さんのために最善の治療を行うが、治癒までは必ずしも契約の成果物としないことになっている。すなわち患者にとって満足がいかない結果であってとしても治療が行われたなら治療費が発生する。
 2)転医の場合の返金
 転住により今、通院している歯科医院に行けない場合、通常、転住先の引継の歯科医院を探し、治療段階に沿った料金の清算を行う。最初の咬合状態から終了までの、どの段階かを判断して、総額の治療費から清算額を決める。例えば総額で50万円、治療の半分で転医となった場合は、前納していれば、半分の25万円が清算額となる。こうした方式は欧米では決まっていないが、日本では日本臨床矯正歯科医会が提唱し、さらに日本矯正歯科学会も推奨している。ただ日本矯正歯科学会では国立大学の矯正歯科がこうした返金システムをとれないが。
 契約書に“途中、治療が継続できなくなっても、一切返金しない”と記載しているので、一切返金に応じない医院もあるが、これまでの裁判例では認められない。同様に患者がそこの医院の治療に疑問があって他院へ転医するのも、“患者の勝手で転医するのだから返金しない”という先生もいるが、これも裁判例では認められない。
 これについては特定商取引法が施行されると、治療前、治療後にかなり細かな契約書が必要であり、これがなければ、いつ何時に患者から治療を辞めて他のところで治療したいと言われれば、ほぼ全額返金となる(ルール上、契約した時点からクーリングができるが、契約がないと言われた時からクーリングができる)。もちろんHPで一般的でない誇張した宣伝をすれば、最悪、業務停止となる。

2.      治療結果について

 医療においては、人体を扱う関係上、100%成功するとは限らない。矯正治療においても理想的なかみ合わせを100とすると、それを目標にしてもなかなか95以上にするのは難しい。さらに治療後、10年、20年、30年後を考えると、時には矯正治療をするのを辞めたくなる。少なくとも80以上を目標に治療を進めるが、それでも中には治療途中で歯根の吸収があったり、歯が動かないことがある(骨性癒着)。こうした場合は60くらいの結果しかあげられないことがある。また患者によっては、常に100を求め、少しの問題があっても厳しく問われることがある。保定2、3年し、保定装置を止めて数年後、下の前歯が少し、後戻りしてでこぼことなったとしよう。これは矯正専門医ではよくみることだが、厳しい患者からは再治療を求められる。そうした場合は、当然、再治療をして固定式の保定装置を入れるが、それでもまた後も戻りすることがある。10年間で3回再治療したことがある。

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