2019年6月3日月曜日

矯正治療がうまくいく患者さん



 私の診療所は、子供の患者さんが多くいます。それも小学校低学年から高校卒業までの長い期間、見ることがあります。あんなに小さかった子供が、こんなに大人になってと、自分の歳も忘れてびっくりします。だいたい子供の患者さんはマルチブラケット装置による治療後二年で一旦卒業にしますが、その際に初診時の写真を親御さん共々見て、お子様の成長にお互いに驚くこともたくさんあります。

 矯正治療では、様々なところで患者さんに協力してもらうことがあります。まず装置を入れるとかなり歯磨きがしにくくなりますので、丁寧に時間をかけて磨く必要があります。そうしないと虫歯になったり、歯周病になったりします。また治療中にゴムを使ってもらうことがあります。決められた箇所にゴムをつけてもらいますが、基本的には食事中や歯磨きの時間以外は終日使用です。使わなかったり、使用時間が少ないとうまく治療できません。またお子さんによってはヘッドギアーなどの顎外装置を使ってもらうことがあります。さすがに終日使用は無理ですが、それでも10時間以上は使って欲しいところです。お子さんの協力が不十分だと治療がうまくいかないため、治療、特にマルチブラケット装置を入れる前には十分に納得してもらってから治療を始めます。

 個人的にいつも思うことは、勉強のできる子は、元々の頭の良し悪しもあると思いますが、それよりは素直な性格が大事だと思います。勉強には王道はなく、毎日きちんと授業を受け、家でも勉強することが求められますし、試験になれば、一生懸命に勉強しなくては良い点数は取れません。いくら頭がよくても、勉強しなければ、いい成績が取れません。こうした性格は矯正治療でも全く当てはまり、勉強のできる子は性格が素直なので、治療に当たっても非常に協力的で、治療期間も短く、仕上がりもよい傾向があります。一方、非常に頭が良いのですが、後3、4ヶ月ゴムを使ってくれたら治療が終わると言ってもなかなかゴムを使ってくれないお子様がいます。それも10時間くらいは使ってくれるのですが、20時間は使ってくれません。しつこく強く言うと、がんばって使い、よくなりますが、次の月にはまた使ってくれず、元に戻ることもあります。結局、この時点から1年間経過しても全く変化せずに不十分のまま装置を撤去することになります。多分、こうしたお子様は、勉強においてもあと一歩、例えば、試験期間中の数時間、テレビを見たり、ゲームをしたりするのでしょう。こうした後一歩の努力ができるかどうかは大きな意味を持つように思えます。勉強のできる子は、後一歩の意味をよく知っているように思えます。おそらく勉強だけでなく、運動部の試合でも同じなのでしょう。矯正治療をこうした後一歩の努力を知る良い体験ですので、うまくいった時にはできるだけ褒めるようにしていますが、もうひと頑張りの大切さを教えるのは難しいと思います。

 素直な性格は何かを決断する場合も大事で、大学進学や就職などにおいても、素直に家族や友人知人に喋れるため、いいタイミングで、いい話を聞くことができます。一方あまり素直でないお子様の場合、せっかく周りの大人が将来を思って心配しても、素直に従わず、その時期になって悔やむこともあります。矯正においても、中学生頃に親もこちらも矯正した方が良いよと言っても反発し、高校二年生頃になって急に治療したいというお子様が割合います。素直なお子さんの場合は、治療も始めてとうに終わっていますが、高校二年生からの治療は治療期間が不足し、結局、大学に入ってからしなさいということになります。費用的にも東京での治療は弘前の2倍くらいかからことになります。万事がこうで、素直でないことが、結局いろんな点で損をすることになります。

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