2020年3月9日月曜日

中国における新型ウィルス問題


 昔から国を滅ぼす要因の一つに疫病が挙げられる。国が混乱するとなぜだか疫病が流行し、多くの死者が出て、さらに混乱が加速して亡国となる。そのため、施政者にとって疫病対策が最重要課題となる。今見ている韓国ドラマ“ホジュン”でも疫病が発生すると、国家的な事件、あたかも戦争が起こったような事態となり、全ての医師が総動員されてその鎮圧に励む。それほど疫病は恐れられたし、実際にその犠牲者は莫大な数となる。

 こうした点で見ると、現代中国の新型コロナウィルスへの対応は古代からのそれと全く変わらない。この疫病に対する対応を間違えると亡国の危機があるだけに、習近平指導者始め、中国共産党の対応は戦時に準じた本気モードである。今のところ中国の患者数は終息方向に進んでいて、その対応は成功したように思えるが、まだまだ油断はできない。

 今回の騒動でも、中国人の冷静な対応と臨機応変な行動に感心した。武漢市始め、北京や上海などの1000万人以上の都市で、ほぼ外出制限のかかった隔離状態に近い状態であるが、それほど大きな混乱はない。もちろん共産党ならではの公安や警察による厳しい管理があるとは思うが、こうした状態でも市民は冷静に対応している。それと同時に多くのボランティアが活動しており、日本以上に近所同士の助け合いが濃厚に残っていると思われるシーンが見られる。また市民のIT化が日本以上に進んでいるために、学校教育もネットで何とかしているようだし、外出が困難の状態でも食料はネットや管理人を通して注文している。おそらく事態が終息しても、中国におけるIT化はますます加速するであろう。ただ農村部のインターネット普及率が低く、2019年度で普及率は61.2%で日本の90%より低いが、今後は政府が農村部への普及を後押しするだろう。中国では良いことだけ報道されているという批判は正しいが、それでも多くの中国人が困難な状態に耐えているのは間違いなく、建国以来の大きな困難という認識は強い。

 最初に中国では新型ウィルスがやや終息方向に進んでいるとしたが、このまま終息すればあたかも戦争に勝ったかのように、中国国民の連帯と共産党支持が高まる可能性がある。危機は政権にとっては諸刃の剣で、失敗すると政権崩壊に繋がるが、逆に成功すると強化となる。現指導部への支持強化は、すなわち習近平主席が長期に政権を握ることを意味し、民主化への道はさらに難しくなることを意味する。また中国の共産党のやり方を嫌い、民主化を希望していた人々も新型ウィルスへの日本も含めて西側国家の手ぬるい対応に失望し、共産党の強いリーダーシップを受け入れることもあろう。一国の経済を犠牲にしてまでの中国が強い信念でウィルス対策をする理由はこんなところにある。国家としての危機感が日本をはじめ西側諸国の感覚とは違う。

 あと今回の新型ウィルス問題で驚いたのは、発生から基本構造の解析、検査法、治療法、ワクチンの開発などの情報が瞬時にネット上に掲載され、以前とは考えられないくらいの速さで、論文発表となっているのには驚いた。私たちに矯正歯科の分野で言えば、研究をして論文を書くのに半年、その後、査読、掲載かで3ヶ月くらいかかるのが普通であるが、今回の場合は2、3日単位で次々と新しい研究結果が報告され、すでに今月くらいから測定時間の早い検査法が実用化され、ワクチンの開発も進んでいる。あと半年から一年くらいで、対応策もかなり進んでいて、感染は抑えきれなくても、画期的な治療法が見つかるかもしれないし、そうなれば、いくら感染が広がってもそれほど心配はいらない。東日本大震災では、民主党の政権で原発問題では菅総理のあたふた状態を見て、本気でこの国は潰れると思ったが、今回は、自民党、それも長期政権の安部首相であるので安心している。

 娘の会社は、中国での生産の多いアパレル会社であるが、2月の初めはこちらから中国にマスクを送ったが、最近では中国企業がマスクを調達して日本の会社に送ってくれている。新型ウィルス問題を契機に日中両国の市民レベル、ことに会社レベルでの友好と信頼関係はかなり強くなったように思える。こうした危機的な状況での両国の助けは、お互いに忘れない。

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