2020年3月31日火曜日

新型コロナウイルス と歯科医院 2


 メリーランド大学歯学部の齋藤花重先生の緊急レポートの第二弾が出ていたので報告する。https://www.whitecross.co.jp/articles/view/1592

 アメリカでは現時点のような非常事態下、エッセンシャル(生活必需)に当たらないビジネスは閉鎖するようと勧告されている。そして歯科医院でも「緊急性のある治療」以外はエッセンシャルでないと位置づけられ、緊急性のある急患がなければ休診することになる。こうしたエッセンシャルでない施設として、映画館、劇場、ナイトクラブ、コンサートホール、博物館、フットネスセンター、ジム、美容院、床屋、スパなどが指定され、場合によっては公園、アパレルショップも指定される。ただ不思議なことに、ペットショップ、酒屋、ランドリー、クリーニングはエッセンシャルに指定されている。

 齋藤先生は、メリーランド大学歯学部病院の急患対応を紹介している。朝8時に、担当スタッフはミーティングし、まず電話にてスクリーニングをして、来院した患者を建物エントランスで一般歯科医が再度、問診をして緊急性があるか問診をする。そして患者をみる場合も各診療用個室は使用後消毒し、最低でも90分以上、なるべく3時間の間隔を開けてから使用する。コロナウイルス3時間くらい空中に漂うからである。そして隣同士の個室は使わない、事前に器具をユニットテーブルやその他の台に置かないことになっているので、準備する時間もかかる。さらにエアゾールを防ぐためにタービンの使用は原則禁止となっており、バキュームによる吸引すら必要な時のみに限られている。結局、著者が診たのは4名で、それもインプラント手術に伴う抜糸だけであった。ごく簡単な処置である。

 レポートにはN-95マスクのことが書かれているが、もちろんそれ以外にもゴーグル、シールド、ガウン、グローブなどフル装備で治療したと思われ、原則的にはこれらは患者ごとに交換である。さすがアメリカの大学は違うと感心したが、よく考えればこれらの費用はタダではなく、後で莫大な請求されそうである。処置時間以外に3時間空けるのであれば、1日に歯科用チェアー、一台で二名しか見られないことを意味する。うちのような歯科医院では、完全に分離した個室となっていないので、1日に二名しか見られないことになるが、ただ窓を全開すれば換気は30分くらいで大丈夫だろう。前回述べた武漢大学歯学部病院の場合は、タービンは使っているようなので、アメリカほど厳格ではないが、例の白ずくめの防護服で交換なしで治療しているのかもしれない.

 アメリカ歯科医師会ではHP上に、この緊急性の高い処置の具体例を挙げているが、矯正歯科の分野ではワイヤーが刺ったり、矯正装置により潰瘍ができた場合の処置がある。他は歯の痛みに関するものが緊急性のあるものとしている。ただ処置はできるだけ最低限の処置をするようにとなているので、痛みについては鎮痛剤か、開放あるいは抜歯、義歯の疼痛は義歯を外して様子見るくらいか。これまでの休日診療の治療内容から見れば、本当の緊急性のある処置は少なく、おそらく弘前市、20万人程度の町でも二軒くらいの歯科医院で十分に対応できる。マスクやガウンのことを考えると固定した診療所が望ましい。あるいは武漢大学病院のように中心病院のみの受診が良いかもしれない。
https://www.ada.org/~/media/ADA/Advocacy/Files/200324_cdc_director_cov19_guidance_nosig


PS: 喘息治療薬のシクレソニド(オルベスコ)が初期から中期の新型コロナウイルスに効くという報告が3/9に神奈川県足柄上病院からあり、その後、日本感染症学会はその効果検証のための投与観察研究参加を提唱した。その結果が、少しずつ出てきた。3/30の報告では、大阪急性期総合医療センターの報告が、旭労災病院でもファビピラビル(アビガン)と併用した報告が出た。他にもファビピラビルによる2例報告が出ており、早い段階の治療法としてオルベスコとアビガンの効果が少しずつ出てきた。アビガンには催奇性があるが、催奇性に関係ない患者では、他には大きな副作用も少ない。インフルエンザ薬、タミフルのような使い方ができれば、大きな福音になるかもしれない。

0 件のコメント: