2021年11月14日日曜日

コロナ下の日本矯正歯科学会大会

 


 今年の日本矯正歯科学会は、学会の臨床指導医資格sの更新のためだけに参加した。コロナ対策のため、今回の更新では、症例の模型などの資料は宅急便で送る方法も可能となった。ただ審査後の修正時間に会場に来ないで、もし修正箇所があった場合は、自動的に不合格となる。そのため、その日の朝10時の修正時間に行けるように前日に横浜に行き、次の日の結果を見てから帰る計画をした。結果は見事合格で、修正箇所はなかった。ただ隣の知人の先生は修正があったようなので、結構、修正が必要な症例もあったのかもしれない。昨年の更新はなかっただけに、今年、更新できなくなれば、資格が失効となるだけに、修正にこられなかった先生はどういう対応をするのであろうか。

 

 そうしたこともあり、学会自体は参加しないで、昨日と今日、オンラインで講演を聞いた。特に関心があったのは、記念シンポジウム、「アライナー矯正の光と影確」の講演で、座長の槙先生が言っていたように、演者にはアライナー矯正の失敗ケースを出して欲しいと要望したが、あまりそうしたケースの提示がなかった。特別講演では予五沢先生がアライナー矯正を完全に否定していたので、学会としてももう少し、アライナー矯正の問題点を提示して欲しかったに違いない。外国人の演者の中にはかなりアバウトな人もいて、よく見ると問題がある症例を平気でうまく治ったと自慢する先生がいる。今回の先生もこうした傾向がある先生がいて、これなら槙先生の症例を提示してくれた方が良かったと思う。予五沢先生も言っていたが、うまく治った症例ばかり見せるのは無意味であり、ことに今回、シンポジウムで提示された症例はたまたまうまく治った症例であろう。流石に演者も自覚しているようで、同じような症例でもこのようにうまく治らないと言っていたが、ワイヤー矯正では、抜歯あるいは抜歯部位を追加する、あるいは外科的矯正で対応すれば、確実に治せるが、アライナー治療だけで治せない症例は数多い。結論からすれば、アライナー矯正だけで確実に治せる症例は限定されており、ワイヤー矯正にするかアライナー矯正にするかを診断できる先生は、そもそもアライナー矯正を勧めない。逆にいえば、アライナー矯正を勧める先生はワイヤー矯正をできないといえよう。当然、これからもこの問題は増えよう。

 

 他にはJOSフォーラムも関心があった。特に昨年、試験を受けた日本矯正歯科学会、日本矯正歯科協会、日本成人矯正歯科学会の統一試験後の動向が気になっていた。昨年、症例審査とペーパー試験を受けたが、一年経ったにも関わらず、まだ確定していない。もともと日本矯正歯科学会単独であれば、何の問題もなく、そのまま日本歯科専門医機構の審査にパスしたはずだが、厚労省から三団体で十分に話し合った結論を出すよう指示があった。どうも政治力のある先生がいて、こうした結果となった。そのため、十数年前からこの三団体で話し合いが行われ、ようやく昨年、統一試験が実施されたが、ここにきて、日本矯正歯科学会以外のある団体の認定医の受験資格が日本歯科専門医機構の条件に合致していないことがわかった。このままではせっかく行った統一試験も白紙に戻りそうで、まだまだ矯正専門医の道は厳しい。一方、今後、厚労省の認めた日本歯科専門医機構の矯正歯科専門医しか、広告に載せられないようなので、もし、うまく進み矯正専門医が認められると、今度はこれまでHPで載せていた日本矯正歯科学会認定医、あるいは臨床指導医の名前は載せられなくなり、学会としては日本矯正歯科学会認定医の記載削除を求めることになる。認定医は矯正歯科専門医をとるための前提であるが、臨床指導医の意味が全くなくなることとなり、いずれ廃止となるかもしれない。

 

 私自身、そろそろ引退も視野に入る年齢なので、こうした学会、あるいは専門医に関しては、あまり関係がないが、それでも将来の矯正歯科臨床を考えると、きちんとした専門医制度ができ、国民にとって安心して矯正治療を受ける仕組みになってほしい。マルチブラケット装置による治療は、かなり経験と知識、あるいは習得に時間がかかり、矯正治療は専門医でという流れができたが、再び、アライナーの登場で、一般歯科医で治療されるようになり、トラブルも増えてきた。また小児の矯正治療の健康保険化もようやく端緒に尽き、個人的には若者の健康保険離れを防ぐ意味からも将来的には健康保険化を望みたいが、そうした折も矯正歯科の専門医制度が必要となろう。

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