2021年11月9日火曜日

植野食堂 技術の継承

 


 面白くない番組しかないときに、よく見るのがBSフジの「植野食堂」である。「dancyu」の編集長、植野広生がよく行く普通の食堂の名物料理、人気料理の作り方を教授してもらい、それを認定してもらい、そのレシピをテレビで公開している。全く同じ材料を使い、隣に食堂の主人がいて指導しても、その店のいつもの味にはならず、ちょっとした茹で時間、炒め方法で味が全く違うというのがよくわかる。最後にレシピを紹介しているが、おそらく紹介された店と同じ味になることはないだろう。

 

 ただ同じ人が、その店の厨房に入って、3ヶ月、特訓すれば、どうであろうか。かなりの確率で、その店の味を習得することはできるだろう。レシピ、動画+経験が必要で、これが揃うことで、料理の継承が可能になるのだろう。一方、店主の高齢化と後継者がいないことから、お客がいても閉店を余儀なくされる店が多い。中には常連客や息子が、後継者として店を継続することもあるが、多くは馴染みの客に惜しまれて閉店することになる。

 

 こうした店は一度、閉店すると2度と復活することがない。ここでは料理店について述べたが、近所にリンゴ用の脚立を作っているところがあったが、最近は閉まったままだし、隣にはアケビ細工の店があり、ここは幸いにもかろうじて後継者ができて、製作している。こうした伝統品の製作まで含めれば、数多くのものが、後継者がおらず、そのままなくなる。惜しいことである。

 

 ここで提案したいのが、技術継承会社、機関の創立である。おそらく料理分野、伝統工芸分野のほか、農業分野などがあるように思われる。料理分野では、高齢のために閉店する人気店で、その名物料理のレシピ、作り方をマスターする。もちろん、集客性の高いレシピには店主に高い金額を払う。技術継承会社のスタッフが数ヶ月、ここでバイトしてその作り方をマスターする。もしその料理を、自分の店のメニューに加えたい人には、会社に料金を払い、担当者が同じ味になるまで指導する。伝統工芸分野は会社としては採算がとりにくい、習得に時間がかかるため、会社として扱うのは難しいかもしれない。むしろ国、県、市町村などが経費を出し合って、若手に継承させた方が良いかもしれない。例えば、刃物作りは最近では人気が出て若手も、その継承する場合もあるが、鍬などの農機具、大工道具などとなると継承者は少ないであろう。弘前では伝統工芸品、津軽塗はこうした補助を行って技術の継承を行なっているが、リンゴ籠や、リンゴ用の脚立など、伝統工芸品と呼ばれないものは、こうしたシステムもない。農業分野についても、古い種類の地場野菜あるいは海外の変わった野菜の種と栽培法を生産者から習い、それを希望者に料金を取って教える。ただ古い地場野菜、果物は育てるのが難しく、その割に価格が低く、販路も限られ、消滅するものもあると聞く、そうした絶滅しそうな品種を育て継承する、あるいはすでに絶滅した野菜、果実を復活するような試みは民間では難しく、公的機関で行なって欲しい。

 

  他にも高齢のために技術の継承が途絶えるものは、色々あると思う。少なくとも、市町村がそうした仕事を把握し、全国に公表して、誰か継承者を探すような仕組みを持って欲しい。場合によっては金銭のやりとりがあってもいいが、市役所内に地域の技術継承を相談するセクションがあり、もし病気などで閉店する場合は、そこに連絡するようにシステムが欲しい。


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