2022年7月10日日曜日

アライナー矯正を特定商取引法の指定に



患者さんに聞くと、近くの歯医者さんに行ってもなかなか予約を取れない、新規の患者を取っていないという。こんなに歯科医院が多くなったのに、どういうことかと思った。

 

一つは、歯科医院数が増加から減少に逆転したことによる。歯科医師のピークは、弘前市の場合、60-70歳の先生が一番多く、その年齢層の歯科医が次々とやめ、閉院している。弘前市で言えば近年10軒くらい閉院し、これからさらに増えそうである。また一応は診療をしている歯科医院でも午前中のみ、4時まで、あるいは週に3日といった、セミリタイア体制になっているところもある。70歳で引退したいという先生が多く、そうすると、あと5年ほどで現在の歯科医院数は半分になる。一方、新たに開業する先生は、本当に少なく、年に一軒程度であり、結果、歯科医院の数は徐々に減っていく。

 

昔は一日、200名みていたと豪語する先生もいたし、私が開業する前にお世話になった先生のところでは、一番多い時は4時から6時までの2時間で40名見たこともある。私と二人でのことであったが、その前は一人で1日に70名ほどの患者を見ていたようである。こうした地方の昔の歯科医院では、驚くべき数の患者が歯科医院を訪れ、全て受け入れた。患者を捌くために、歯科助手に仕事をさせることが多かった。印象、義歯の印象・咬合採得、充填、根菅治療、補綴物の試適、装着などを歯科助手が行い、歯科医師は診断、形成、抜歯、抜髄などを行う。1、2番のチェアーの患者に麻酔を打ち、他のチェアーを回りながら、麻酔が効いた頃に1番は抜歯、2番は形成を行う。こうした8つくらいあるチェアーを回りながら治療をしていくのである。今は、こんなところはほとんどなく、新規の歯科医院では、1時間に4人くらいしか予約を入れないので、多くても1日に30名以上の治療はできない。そのため、そのキャパを超えると、新規患者の受け入れを中止、あるいは予約が取れないこととなる。

 

もともと日本の保険制度は、アメリカと違い、一人当たりの診療費は安く、多数の患者をみて、ようやくペイする構造となっている。そのため、多数の患者を受け入れ、それを回すために、歯科助手に治療をさせるような仕組みとなっていた。こうした構造に、世間から激しいパッシングがあり、もはやできず、それを解消する方法として大手チエイン歯科医院がとった方法は、新卒の歯科医を安く雇い、多くの患者を見させる方法である。ただ収益の点では、この方法も限界となり、今は少ない患者で大きな収益を生む自費診療への移行が中心となっている。

 

自費治療となると、インプラントは外科の知識、経験がないとやりにくく、症例自体も少なくなっている。同様にかっては自費治療の主体であった前歯部の補綴、ポーセレンの前装冠、ジャケット冠も昔ほど症例がなくなったし、金属床もそこそこ需要があったが、最近はあまりされなくなった。現在の自費診療の中心は、インビザラインなどのアライナー矯正で、ここ数年、すごい勢いで広がっている。まず知識、技術がいらないこと、利益率が高いこと、などが人気の理由であるが、それに比例して、長年、治療していているが治らない、口元が出ているのが気になると治してくれない、説明がない、などのクレームが増えているで。歯科医からすれば、もともと知識も経験もないから、患者からクレームがきても、どうしようもない。ただ治療開始から終了まで2、3年かかるために、クレームもタイムラグがあり、今頃になってクレームが爆発している。

 

数年前にホワイトニング、エステとともに矯正治療も、特定商取引法の指定に入ることが論議された。その時は、何とか指定されなかったが、ここまでインビザラインのクレームが多くなると、患者との契約書などの煩雑な手続きが増えるが、個人的には特定商取引法に指定された方がいいと思う。少なくともインビザラインなどアライナー矯正については、初診時にデジタル印象を取られ、もう装置を注文したから中止にはできないというひどい例がある。グリーンオフができる特定商取引法が適用される方が被害を食い止めることができる。日本矯正歯科学会でも、本体の矯正治療を守るためにも、アライナー矯正については学会から消費者庁に特定商取引法にするように要請する手もある。




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