2022年8月4日木曜日

昭和天皇のドラマ 「プリンスの修学旅行」 妄想






Netflixの番組では、「ザ・クラウン」が面白い。エリザベス女王とその周辺、英国王室を描いた作品で、さすがに現役の女王のことをドラマにするのは勇気がいったと思うが、エリザベス女王も見ているという。

 

この番組を見ていて思ったのは、日本にも天皇がいて、特に昭和天皇の生涯を作品にするドラマ、映画が出てきても、もはやいい時代になったと思える。イギリスと違い日本では、長い間、天皇家をマスコミ、特にテレビ、映画で扱うのは何となく抵抗があった。昔の“日露戦争と明治大帝」などでは嵐寛寿郎の演じる明治天皇の場合が少し出るだけで、映画によって顔は出さず、背中しか映画では出ない。あたかも欧米の映画でのイエスキリストの扱いに似ていた。ただ最近ではリメイク版の「日本のいちばん長い日」では本木雅弘さんが、昭和天皇の役を演じていて、少しずつであるが、皇室を扱う壁が低くなったように思える。

 

個人的に、是非、ネットフリックスで、昭和天皇を扱ったドラマ、大正10年、皇太子時代に行ったヨーロッパ諸国を回る欧州訪問を取り上げて欲しい。昭和天皇自身、人生の中で最も懐かしくて、楽しい旅だったと回顧しており、ドラマには向いている。タイトルはズバリ「プリンスの修学旅行」

 

ドラマは、大正9年の良子女王との結婚問題からスタートする。いわゆる宮中某重大事件と呼ばれるもので、良子女王の親族に色覚異常の人がいるということで元老の山縣有朋が結婚に反対した事件である。これは皇太子の欧米訪問を行うきっかけになった事件であり、その後、反対も多かったが、日本の皇太子が半年に渡ってイギリス、フランス、ベルギー、イタリアなどの訪問し、ここでの見聞が昭和天皇の人格形成に大きな影響を与えた。もしこうした経験がなければ、太平洋戦争後の状況も変わっていた可能性がある。ドラマの一つの縦の流れは、天皇教育を主眼とした戦前の皇室と皇太子の暮らし、横の流れとして、この欧米訪問を支えた二人の人物、お召艦、鹿島艦長、漢那憲和と旅行の全責任者、供奉長の珍田捨巳の生涯を描く。

 

配役は、まず昭和天皇は、その上品な顔つきから松田龍平。珍田捨巳役は、一番似ているのは亡くなった東野英治郎だが、現役では誰がいいだろうか。ここは阿部サダヨを思い切り老けさせ、津軽弁を喋らせる。漢那艦長はかっこいい向井理でどうだ。殿上人として世間の常識はほとんど知らない皇太子を、何とかヨーロッパの社交界に出してもおかしくない礼儀を身に付けさせようと、悪戦奮闘する様をおかしく演じて欲しい。日本からイギリスまでの船中での皇太子と軍艦、鹿島乗務員のふれあい、パリのエッフェル塔で買った初めてのお土産、イギリス国王、ジョージ5世がお忍びで皇太子の寝所にきて、珍田を通訳として、国王としてのあり方を聞くシーンがハイライトとなる。この時の経験が、昭和天皇の一生の宝となる。一方、漢那艦長の故郷、沖縄と珍田の故郷、青森の対比も面白い。南国の空と雪の対比、沖縄弁と津軽弁、琉球王朝と弘前藩、王族と士族、琉球神道とキリスト教(珍田)、など二人の環境は全く違い、それもドラマの横線となる。一方、皇太子の少年時代の思い出、学習院院長、乃木希典、幼児期の養育係、足立たか(のちの鈴木貫太郎首相夫人)、などとの関係も詳しく掘り起こせば、ドラマとなろう。

 

「ザ・クラウン」では実写シーンも巧みに使っているが、皇太子の訪欧旅行については、多くの古い動画を残っており、こうしたシーンもドラマに導入できる。戦前の皇室については、天皇家に残る古来からの慣習が随所にあり、天皇、皇太子の私生活も謎に満ちている。

 

最初のシーンは、昭和天皇の晩年の自室。回復を願う国民の記帳を、一人一人確認する天皇。その中に“漢那”の名を発見する。お付きに、これを記入したのは、軍艦鹿島艦長であった漢那憲和の親類の者かと尋ねる。これは実話。ここから昭和天皇の若い頃のヨーロッパ旅行の思い出に話は進む。

 

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