2022年8月9日火曜日

矯正専門医が足りない

 






数年後には矯正歯科も引退しようかと考えているのだが、患者も多く、なかなか決断ができない。現状では、矯正専門で開業するには、日本矯正学会の認定医の資格が必要であるし、将来的には日本矯正歯科専門医機構の矯正歯科専門医(仮)が必要となってくるだろう。認定医は現在、3000名くらい、矯正専門医はまだ発足していないが、初年度は300人程度が予想されている。

 

日本の人口は約1億2000万人で、少なくとも矯正治療をした方が良い中等度以上の不正咬合は30%いると思われるので、潜在的な矯正患者数は約4000万人、10から30歳代の若い世代を対象にしても600万人、毎年の出生数は80万人なので、このうち治療対象者は24万人いる。これを認定医数3000人で割るとそれぞれ2000名、60人となる。実際は一般歯科での治療が半分を占めるので、認定医一人当たりは1000名、30名くらいとなる。

 

アメリカの場合を考えると、人口は32千万人で、日本の3倍、矯正歯科医は10500人で、認定医でみると約3倍いるが、10万人あたりの矯正歯科医は3人で、それほど差はない。ただアメリカでは年間の新患数は約250名であるのに対して、日本では100名と半分以下である。私の知っている矯正歯科医院でみると、多いところで年間250名くらい、少ないと60名程度である。今後、日本でも矯正治療が普及していけば、アメリカ並みに患者数は増えていきそうである。

 

当院でも、子供を受けつけていた数年前まで、成人:子供の比率は30%70%で、ほぼアメリカと同じような比率であった。さらに成人のうちの半分は外科矯正患者だったので、純粋の成人矯正患者は15%くらいに過ぎなかった。それゆえ、子供を診なければ、かなりの患者減少が予想されたが、実際はコロナ禍により成人患者数が5倍くらいになり、結局、患者数はあまり変化ない。逆にほぼ全ての患者がマルチブラケット装置による治療のために、15分の診療予約枠が終日いっぱいとなった。ただこれも一時の上昇で、今後が減少していくと思う。

 

ただ十万人あたりの矯正歯科医数が3人くらいは必要で、青森県の場合は125万人なので、37人くらいは必要であるが、現在、青森県の認定医数は11名で、青森市に3人(充足数9名)、弘前市に4人(5名)、八戸市と三沢市に3人(認定医をやめた先生含む、充足数8名)で、むつ市に1名(1名) でかなり少ない。さらに言うと、青森市の2名、八戸市1名の計3名の先生は私と同級生で、おそらく後、数年には引退するであろう。もちろん新しく開業する矯正歯科専門医院も出ていると思うが、とても充足数には達することはなかろう。認定医あるいは今度できる日本矯正歯科専門医機構、矯正歯科専門医(仮)を取るのは、かなり期間がかかり、また費用もかかる、だいたい卒業後、一年の研修医を経て、4年間の大学院を出て、さらに二年ほど医員などを経てから認定医をとる。早くて30歳頃になる。専門医になるとさらに5年ほどかかるので、これでは10万人当たり3人の矯正歯科医と言うのは都市部では達成できても、地方では難しい。

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