2023年2月22日水曜日

情報収集の方法(郷土史、弘前)

 










昭和30年代の観光都市図弘前市



これまで「明治二年弘前絵図」、「津軽人物グラフィティー」、「日系アメリカ人最初の女医 須藤かく」、「弘前歴史街歩き」など5冊の本を出版してきた。範疇としては郷土史になるので、その内容は弘前、津軽に関する地名、人物などの情報によるものが主体となる。インターネットや本からできるだけ必要な情報を集め、それを選択して、文章にして、本の原稿を書くという流れである。レポートを書く場合の参考になるかと思うので、私の調べる方法を少し話そう。

 

基本的にはインターネットを中心に、例えば、“弘前駅”に関する情報を得る場合、まず“google”による検索が基本となる。

 

1.Googleによる検索

 まず調べたいことがあれば、Googleによる普通の検索で当たりをつける。そこそこ情報の多い人物や事柄であれば、例えば、明治の外交官、“珍田捨巳”であれば、かなりの検索ができるし、動画検索も可能であるが、“須藤かく”のようなほとんど知られていない人物の場合、最初、調べた時は、1件しかヒットしなかった。結果的にはその1件のヒット、「須藤勝五郎の生涯」(佐藤幸一、1992)が出版の契機となった。Googleには他には画像検索もできるので、これにも情報があるし、また書籍検索も重要である。書籍検索は以前よりはマシになったが、それでもかなり、誤字が多く、最終的には図書館で、文献をチェックしなくてはいけない。

 

2.図書館での検索

津軽の郷土史ということなので、利用する図書館は、主として弘前市立図書館の2階の資料室を使うことが多い。図書館には司書という人がいるので、調べたいことがあれば、直接聞いても良いし、google bookなどで検索した本をここで、借り出して閲覧する。検索した本があるかどうかは、図書館のHPに簡易検索が載っているので、前もって調べておく。必要な記事は、図書館のデスクで複写の手続きをして、コピーする。資料によっては、青森県立図書館や、弘前大学附属図書館も利用する。郷土史の本については、開架にある本は比較的探しやすいが、書庫にある場合も多く、書庫にある本はこちらから指定して閲覧しなくてはいけないので、ややこしい。また弘前図書館について言えば、古い本の収集には熱心でないため、古書店の成田書店にしかない本も多く、図書館にはない本があれば、ここで購入している。

 

3.インターネットによる検索

本格的な調査をする場合、最もよく使うのが、国立国会図書館のデジタルコレクションである。これは国内最大のデジタルコレクションで、検索をかけるとその文献そのものを見ることができる。ここではさまざまな検索ワードを使って検索を試みて、すべての本をざっと読んでいく。「弘前歴史街歩き」の場合、例えば、まず“弘前”、“津軽”などで検索していき、ヒットした本をすべて確認していく。さらに「紳士録」や「電話帳」などにも情報が隠されている場合が多い。他には弘前図書館では、古書のデジタル化が進められているのでそれを利用して、例えば、新編弘前市史などもここで全文が読める。絵図なども充実している。「日系アメリカ人最初の女医 須藤かく」では、主としてNewspaper.comという有料であるが、古いアメリカに新聞を読むサイトがあり、これを中心にアメリカ留学時代の須藤かくの活動を調べることができた。また場合によっては、アメリカの図書館に直接問い合わせることもある。阿部はなに写真が欲しかったので、ニューヨーク州にカムデンという小さな図書館にメールを送り、コピーを送ってもらったことがある。あるいは、シンシナティー友人に頼み、シンシナティー図書館に司書に調べたもらった資料は重要であった。感謝している。

 

4.所蔵図書からの検索

図書館にない本やよく使用する本は、購入して持っておいた方がよい。青森県の人物を調べるためには、「青森県人名大辞典」(東奥日報、昭和44年)が詳しい。2002年に出た「青森県人名辞典」より、古い本の方が詳しく、古書店で2000-3000円で売っている。また地名を調べるためには、絵図、地図が有効であり、所有する「明治二年弘前絵図」、「明治八年弘前地籍図」だけでなく、Key Words of Hirosakiという1977年に発行された弘前案内図、ヤフーオークションで購入した明治初期の手書き地図、あるいは大正五年に発刊された「青森県弘前市俯瞰地図」、大正13年に発刊された「大日本職業別明細図之内信用案内図 青森県」、最近では1999年に発刊された「青森県弘前市住宅地地図」(ゼンリン住宅地図)も参考になる。また弘前商工会議所で発行した「昭和10年の弘前の街へタイムスリップ ひろさき懐かし地図」(2011)や昭和30年代の「観光都市図 弘前市」(富士波出版)なども参考になる。地図情報はかなり多いので、古書店やオークションで見つけたなら、できるだけ買うようにしている。今は、明治期の住宅地図のようなものや昭和30年から60年代のゼンリン住宅地図を探している。弘前の街は基本的には江戸時代とほぼ同じなので、その土地に誰が住んでいたか、かなり継続的に見ることができる。

 

他には、インタビューをして直接聞き取った情報もあるがが、これに関しては古い記憶なので、かなり間違いも多いので注意が必要である。調べたい項目があると、こうした資料を駆使して、例え一行でも関連することが記載されていれば、ノートに出典とともにメモし、本を書く時の参考にする。膨大な資料を元に執筆し、出版しても、その後、新たな資料が発見され、完全に間違っていることも多々あるが、それは仕方がないものとして諦めている。弘前市立図書館では、古書、絵図を中心にデジタル化していただき、大変助かっているが、弘前藩の士族、卒族の由来などを記載した、「由来書」、「代数調」の公開はまだごく一部である。以前、図書館に方に聞くと、個人情報法の観点から公開できないといっていたが、明治五年の壬申戸籍ではあるまいし、公開してもその子孫に類が及ぶような項目がなく、すべての公開が望まれる。

 




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