2023年3月26日日曜日

深川江戸資料館から学ぶ

 





先日、東京に行ったときに、1日、自由な時間があったので、江東区の深川江戸資料館に訪れた。小さな博物館で、大江戸線の清澄白河駅に降りたものの、なかなか見つからず、ぐるっと近所を一周して、なんだこんな小さな建物かと思うような資料館であった。

 

資料館の中に入ると、江戸時代の深川の街並みが再現されていて、小さな長屋や商店がぎっしりと並んでいる。家内と二人で見ていると、年配のボランティアの方が「30分くらい、案内をしたいと思いますが、お時間ありますか」と言ってくれ、一つ一つの建物を詳しく説明してくれた。建物自体は全て復元建築であるが、どのような人物、年齢構成の家族が住んでいるかをきちんと設定し、学者の意見を取り入れながら、小物を集めて江戸時代の生活を再現している。長屋の大家の家は精米業もしており、杵があったり、臼があったり、内部はやや豪勢で、二階建てである。長屋の住人の家は、間取りが4畳半くらいしかない。大工の人の部屋は汚く、汚れているが、同じ間取りの部屋でも亡くなった夫が下級武士だった後家の人の部屋はこぢんまりと片付いている。細かい工夫がある。そしてボランティアの人は、そうした江戸時代の庶民の暮らしを、再現された部屋や建物を通じて説明してくれた。とりわけ驚いたのは、火の見櫓で、想像以上に大きな建物であった。江戸時代の街のイラストで説明してくれたが、これくらいの大きさの火の見櫓で、かなり広い範囲の火事を発見でき、その延焼、鎮火などの情報をこの火の見櫓の鐘で知らせた。また堀割にあった船宿と猪牙船も再現されており、その船の大きさに驚いた。テレビの鬼平犯科帳や忠臣蔵に登場する船はかなり小さいが、本物は大きく、頑丈に作られ、ガイドさんの説明によれば、今のタクシーと言うよりはハイヤーに近いもので、そこそこ金がなければ、気安く使えた船ではなさそうなことは、実際にこの猪牙船をみればわかる。

 

一見にしかずと言っても江戸時代の生活を見ることはタイムマシンでもなければ難しいが、この深川江戸資料館でかなり体験することができ、好きな作家、深川を舞台にした小説を書く山本一力さんの作品がより近くなり、そうした意味でも嬉しい。

 

弘前にも、仲町地区に現在、4つの武家屋敷がある。全て復元建築ではなく、実際の建物である。そして玄関にはボランティアの方が座っていて、見学者の方から質問があれば、答えてくれるが、積極的に建物の案内はしていない。また建物にはほとんど調度品はなく、どちらかというと建物の説明が主であり、江戸時代の生活を体験、経験してもらうようなものではない。武家屋敷が観光客のための施設であれば、先に紹介した深川江戸資料館の例を参考にもう少し工夫をした方が良いように思える。弘前の観光について少し考えたい。

 

具体的に言えば、

1.           建物を紹介するのではなく、江戸時代、弘前の士族の生活を説明する、体験してもらう。

以前、旧笹森家で旧弘前藩の武術の紹介があった。長い刀をどのように狭い部屋で使うかなど、初めて知ることばかりであった。また江戸時代の行燈や明治時代のランプなど、電気が普及するいぜんの夜の暗さは一度体験してみたいし、料理の作り方、食事の仕方なども時代劇のテレビや映画でそうした光景を見ても、実際の場面は知らない。こうした江戸時代の生活を体験する場として仲町の武家屋敷の活用を希望する。

 

2.           積極的なボランティアの活用とガイド

深川江戸資料館で案内していたのは5、6名の年配の方で、全てボランティアと言っていた。来館したのが平日の午前中で、来館者は少なかったが、日曜休日はもっと来館者も多く、ボランティアも多いのだろう。弘前市にも観光ボランティアガイドの組織があり、桜まつりの時は弘前城内にテント小屋を作り、希望者があれば、ボランティアガイドが城内を案内している。ただ期間外では事前に予約していないといけないし、博物館、武家屋敷、弘前城資料館、レンガ倉庫美術館、禅林街にも常時のガイドはいない。弘前に来る観光客は多いが、来てもあまりガイドによる案内もないままで終わるのだろう。旅行の思い出は、景色だけではなく、地元の人々との触れ合いも大きな要素であり、そうした意味では、地元の人によるガイドは大きな思い出となる。

 

3.           観光案内の掲示

深川江戸資料館は小さな建物だったので、見つけるのは苦労したが、それでも街のあちこちに案内図や看板などがあり、観光客へのおもてなしの気持ちが見つかる。それに比べて弘前市は観光地のくせに街の中には案内板や説明の看板は少ない。唯一あるのは、30年ほど前に作った町名の標柱くらいで、これも相当汚くなっている。駅前から中央通り、土手町、弘前城周辺などにはもっと多くの案内図を掲示すべきであろう。また明治2年弘前絵図は、私がデジタル化しており、これを利用しアプリにして現在地をこの絵図上で示せば、昔の弘前を街歩きできる。希望があれば、自由に私のデジタルデータを使ってもらって構わないし、事実、数年前には弘前青年会議所で使ってもらった。ところがいまだに弘前市から何らかのアクションはない。こちらから売り込むようなものではないが、もっと活用してほしいところである。

 

4.           外国人観光客への対応

深川江戸資料館にも、フランスからの団体客が来ていたし、東京都庁の展望台はその9割が外国人観光客で、コロナも終了して、これからは外国人観光客も増えそうである。都庁ではこうした外国人向けのボランティアガイドがいて対応していたが、流石に英語以外の各国語の対応はしていないが、深川江戸資料館の年配のボランティアガイドの人は、果敢にフラン人観光客に時折英単語を交えて説明していた。通じないかと思ってみていると案外わかっているようで、何も英語が堪能でなくとも案内はできると思った。英語の勉強も兼ねて弘前城など外国人観光客が集まるところでは、若い人の観光ボランティアを募集してもいいのかもしれない。その場合、詐欺とか警戒されるために、少なくとも弘前市の正式なガイドを示す証明書やTシャツくらいは発行しても良い。

 

私もそろそろリタイアの年齢になってきたが、できれば体が健康であれば、こうした観光ボランティア活動をやってみたいし、これまで集めた絵図や地図など、活用できれば嬉しいことであるので、希望があれば是非ご連絡してほしい。



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