2023年8月2日水曜日

ゴールキーパーの悩み


 

長く日本代表であった横山謙三選手も身長が175cm今では、代表は無理であろう。



私は、中学一年生から高校三年生までサッカーのゴールキーパー(GK)をしていた。手を使えないサッカーで唯一、手を使えるゴールキーパーというのはかなり特殊なポジションである。大学、歯学部のサッカー部に入ってからは、一度フィールドプレーヤーをしたかったので、G Kをやめてセンターバックに転向した。結局、卒業するまで6年間、このポジションでプレーした。通常ならこんなことは許されないが、あくまで歯学部の同好会で、一期下に優秀なGKがいたので、こうしたことができた。フィールドとGKの両方を経験することはあまりないと思うが、経験してみて両者の差は大きいと実感した。これはGKの経験者だけがわかることだが、GKは孤独で、試合中のチームとしての一体感はない。味方が点数を入れれば、喜んだふりはするが、あまり実感はなく、むしろシュートを止めた方が嬉しい。

 

そういうこともあり、最近、YouTubeGKの練習を見ることが多い。小学校から中学、高校のGKの練習を見ていて、これは日本のサッカー全体のことと思うが、私が現役であった1970年に比べて、本当に進歩している。単純な例えで言えば、小学校のGKのレベルが、昔の中学生のレベル、昔の中学生のレベルは今の女子の中学生のGKレベルである。小学生くらいでも、横に飛んでボールを止めるセービングも普通にしている。私の場合、高校卒業まで、結局、華麗なセービングはできず、同級生からは「広瀬のセービングは遮断機のように左右に倒れるだけ」と言われた。流石に監督も見かねて、練習では下級生には悪いは、私の左右に下級生を寝させて、それを越えないと横に飛べないようにした。こうすれば、足が地面から離れて綺麗なセービングができると思ったのだろう。

 

また砂場でも相当、練習したが、結局、綺麗なセービングはできなかった。一番の理由は、土の堅いグランドで、飛ぶのが怖かったからである。土のグランドでセービングをすると、腰、肘、膝、を打つことが多く、何度も手の肘に水が溜まり、病院で水を抜いてもらった。もちろん、腰にも、肘にもサポーターをしていたが、セービングをして着地すると全体重がそこにかかる。結局、飛ばなくてもシュートの7割くらいは処理できるし、飛ぶようなコースにくるシュートは最初から止められないと勝手に決めていた。

 

こんな飛べないゴールキーパーでも、監督が神戸市、兵庫県でえらかったので、中学三年生の時には神戸市選抜で広島遠征に行ったし、近畿大会では優勝(4試合中3試合に出場)、国体候補にもなったが、それでも飛べない、左右にバタンと倒れるだけである。唯一、飛べたのは、近畿大会の行われた京都の西京極競技場で、ここは芝のグランドであった。どんなに飛んでも全く痛くなく、こんなところで練習できれば、うまくなると思ったが、実際、当時の学校で芝のグランドのある学校は皆無であった。GKの練習といっても、先輩、後輩の三人でコンビを組み、キャッチングや、グランドのセービングなど、ほとんど練習の情報がないため、適当に練習プログラムを作ってしていた。

 

昔の国体代表と言っても、現在ではほぼ女子サッカー部のGKレベルであり、中三で小学六年生、高校三年生で中学三年生レベルだろう。それほど50年前と現在では技術の進歩は著しい。これはGKに限ったことではなく、他のフィールドプレーヤでもそうで、私が六甲中学のサッカー部に入った時、確か20名くらいいたが、小学校でサッカーをしていたのは3人だけだった。今はおそらく80%以上は小学校でサッカー経験者である。中には小学校からGKをしていた生徒もいよう。当時は、トラップやキックなどの基本手技は中学に入った習ったものだが、今は中学に入学の段階でほとんどの生徒は基礎ができているのだろう。メキシコオリンピック当時の日本代表選手は10回もボールリフティングもできなかったという。多分、当時の日本代表の技術は今のU17歳以下であろう。

 

こうした日本のサッカーの広がりは、J-リーグとワールドカップの影響は大きい。子供達に最も人気のあるスポーツがサッカーで、それをサポートする指導者のレベルの高くなった。それでも芝のグランドのある学校は少ないだろうし、さらにいうと高校、中学で、ゴールキーパーコーチのいるとこなど、ほとんどないだろう。堅い砂のグランドでのGKの練習、試合ほど、痛いものはない。ついでにいうと、昔の全日本のGK、横山謙三は身長が175cm、川口能活選手は178cmで私とほとんど変わらないが、もはや身長180cm以下のゴールキーパーは現れないであろう。

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