2023年8月20日日曜日

 弘前の日本料理店

 



弘前観光で一番の問題点は、自慢料理がない点であった。札幌と言えば、味噌ラーメン、ジンギスカン、海鮮料理、福岡と言えば、博多ラーメン、モツ煮、水炊き、屋台という風に観光客にとっては、名所、旧跡、自然とともに食べることも旅行の大きな魅力の一つである。折角、弘前に観光に来るなら、地元の美味しい料理を食べたいというのはもっともな話で、ましてや海外から来る観光客、とりわけお金持ちの観光客からすれば、最高の食事をしたいと思うだろう。

 

ところが弘前では、観光客に紹介したいレストラン、食事店が本当に少ない。以前、アメリカからお客さんが来て、弘前駅まで迎えに行った。ちょうど昼前だったので、昼食ということで駅前の高級中華料理店を選んだ。理由としては、その外国の方が中国系アメリカ人で、馴染みのある料理と駅から近いということでここを選んだが、喜んでもらった。夜は、弘前城近くの翠明荘、ここは旧高谷家別宅で、部屋の雰囲気が素晴らしい。ただ料理に関しては、豪華ではあるが、それほど感動するほどのものではなく、今は閉店している。その二年後もアメリカの友達と弘前にきたが、この時は自宅に招いて、家内が料理を作った。

 

お客さんが弘前に来た時にどこで食事をするか、これは本当に難しい。特に招待するお客さんがグルメで東京、大阪、京都の名店によく行っている人の場合は悩む。イタリア料理であれば、弘前大学医学部病院近くの「オステリア エノテカ ダ サシーノ」があるので、ここに連れて行けばまず間違いないが、外国の方となると日本料理をチョイスしたい。弘前にも美味しく、人気のある日本料理の店も多いが、例えば、本社の社長が弘前に来たとしよう。弘前支店長が最高のおもてなし料理を味わっていただくとして、果たしでどの店でいいだろうかと考える。日本中の名店で食してきた人を迎えるとなると悩む。私自身も、友人の台湾の先生がいて、台北では散々お世話になり、いずれ青森にも行きたいと言っていた。ただ招待したいと思う店がなく、困っていたところに、ようやく弘前にもミシュラン星レベルの日本料理店を見つけた。

 

成田陽平という期待の若手料理人が、オーナシェフを務める「陽」という店である。元々はフランス料理の人で、フランスのミシェラン2星の「ル・ジャルダン・デ・サンス」、3星の「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」で修行し、その後、和食に転じ、有名な京都の3星日本料理店「菊乃井本店」で九年修行して、開業という経歴で、「RED U-35」という若手料理人のコンテストで20162019年に準グランプリを受賞している。先日、家内と二人で食べに行ったが、噂に違わぬ、すごい店だと思った。全ての料理が計算され尽くし、一品で何度も違う味、香り、食感が楽しめる料理となっており、どの料理も感動するほど美味しかった。全体で10品ほどのコース料理で、同じ時刻に同時にスタートする方法で、すべてオープンキッチンで料理自体を見て楽しめる。よく割烹旅館などで出される日本料理とは根本的に違うもので、例えば、肉料理なども、開始から1時間後に肉料理の順番になるのを見計らって内部の熱が入るように計算し、配膳直前に表面に火を入れて仕上げるようにしている。全て計算された料理の真髄を味わえる。

 

青森県は三方を海に囲まれ、魚の種類も豊富で、きのこなどの山の幸、川の幸、野菜、肉にも恵まれている。ただ流通経路に問題があり、京都であれば、信頼のおける八百屋、魚屋、肉屋に料理材料を持って来させることができるが、弘前では例えば岩崎漁港でいいズワイガニが取れても、それを弘前まで通年的に運ぶルートがない。また滅多にはない巨大な天然ホタテ、日本最高のカレイ、八戸のトラフグ養殖、幻のキノコ、松露、赤石川の金アユやイトウ、小田原湖の天然うなぎ(アユ、うなぎはこの日のメニューにありました)あるいは深浦港でとれるマグロは大間にも負けない。また深浦の須藤豆腐店の油揚げや世界最高級品の陸奥湾の干しなまこ、青森シャムロックなどの地鶏、ずぎ芋、長谷川自然豚、アブラツノザメ、トゲクリガニ、メバル、沖サバなど、青森県は素材的には本当に恵まれた環境にある。ただ、こうした材料を集め、提供する中間業者がないため、美味しい料理を提供するのに材料集めに恐ろしく時間がかかる。

 

例えば、五能線の一部列車にクーラーボックスをおけるようなスペースを作り、朝の早い便に漁港でとれた魚を積み込み、弘前駅で下ろす、こうしたルートはできないものだろうか。岩崎漁港近くの陸奥岩崎駅、深浦港近くの深浦駅での停車時間を1、2分延長できれば、食材の搬出は可能であろう。例えば、陸奥岩崎駅6:49、深浦7:26分の電車に、魚の入ったクーラボックスを積み込むと弘前には10:12には到着して、そこからは車で店まで運べる。こうしたサービスもJRには検討してほしいし、県や市でも実現可能かを考えて欲しいところである。冬場、毎日、仕入れに深浦漁港まで車に行くのは危険だし、大変である。注文は今やスマホで簡単にできるので、その日にとれた魚をスマホで見て注文すれば良い。他にも出荷量がごく僅かで、鮮度の短いものについても、流通が何とかなれば、レストランなどで食材と使えるので、注文、配達の仕組みができないであろうか。将来的には、深浦―弘前間は直線距離で50kmくらいなので輸送用のドローンであれば1時間もかからない。

 

若くて優秀な世代もどんどん増えており、弘前も将来楽しみである。我々のような年配者は、商工会議所、各種団体や弘前市、青森県の関係所庁を通じて、そのお手伝いができればと考える。





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