2023年8月3日木曜日

弘前の若者 がんばれ


 

ブルータス、おとなの古着 全国の古着店57で取り上げられた弘前のSlowpoke




お客さんより建物の見学が多いと嘆くアンティーク家具、雑貨のPPP



少し前のことだが、旧キャッスルホテル裏にあるインテリアショップ「PPP」を訪れた。以前、椅子や雑貨など、数点、買い取ってもらったことがあり、その後、売れたがどうか確認したかったからだ。残念ながら、ブナコの菓子皿以外がまだ売れていないとのことで、悪いことをした。ちょうど東京銀座の無印ホテルで、“Modernism show”の一環として、全国各地のヴィンテージ家具屋さんが集まり、展示するため、その準備の最中であった。参加するお店は、東京が中心であるが、それ以外は大阪、京都、福岡などの大都市からで、北日本からはこのPPPだけが参加している。欧米の家具、雑貨、特に私の好きな北欧のものは根強いファンがいるが、いざ弘前でどれくらいいるかとなると、経営は大変そうである。オーナーは金沢大学の工学部出身という秀才で、エンジニアという仕事を辞めて好きな家具販売の道に入った。非常におしゃれな店で、明治時代に作られた建物とマッチして気持ちのいい空間で、特に二階からの眺めは素晴らしい。東京での催しが終了すると、オランダに仕入れに行くというが、オーナーの家具への想いは強い。ヒロロからの遊歩道にある自転車屋に3年ほど前に、保有していたイタリアのレニャーノの自転車を売ったが、全く売れずにバツが悪かったが、最近、東長町にできた眼鏡屋にその自転車を見つけ、安心したことを報告した。PPPのオーナーもこの自転車のことを知っていて、かっこいいと思っていたと言ってくれて嬉しかった。その足で、今度は土手町のかくみ小路の「まわりみち文庫」に行って同じように話をすると、この東長町の眼鏡屋のオーナーはこの古書店によく来るようで、その折に新しく買った自転車のことを大変気に入っていることを知った。つながっている。

 

この自転車屋も家具屋同様、専門知識が豊富な人で、古い自転車が好きでベルギーなどに自転車を買い付けに行くという。家具屋はオランダに、自転車屋はベルギーに買い付けに行くというインターナショナルな感覚である。まわりみち文庫もそうだが、東京にあっても良さそうな店が弘前にある。そういえば、旧中央市場の裏近くにある「slowpoke」という店が、最近の“ブルータス、おとなの古着”で全国の古着屋57に選ばれて載っていた。東北は全国的に有名な仙台の「True Vintage」とここだから、業界では有名なところなのだろう。そういえば、最近近所に「シーソー」という店が、同じ代官町にも「ザフィクション」という古着屋が、また土手町には「Button up clothing」という店ができた。東京の下北沢のようなおしゃれなお店が弘前市に次々とできていて、嬉しいことである。ただこうした古着屋はビンテージものを扱い、値段も決して安くない。お店のHPを覗くと、タイタニックのTシャツが4万円、ラルフローレンのセーターが10万円近くする。いずれも人気のあるビンテージで、値段としては妥当なものであるが、それでも弘前の若者で買える人は少ないだろう。東京では20歳代で一千万円以上の収入のある人がいるが、弘前ではTシャツに4万円出せる人は限られている。

 

三浦展はその著書「再考 ファスト風土化する日本 変貌する地方と郊外の未来」(光文社新書)で、良い街の条件とした、良い居酒屋、良い銭湯、と良い古本屋に加えて、良い古着屋、良い中古レコード屋、そして良い古道具屋か中古家具屋を加えたとし、これら6つが揃っているのが東京、西荻窪としている。そして中古品というのは、大量生産される既製品を売る店とは異なり、中古品を介して個人の自由で多様な活動が多発し、交流が促進される場所なのだとしている。弘前も東京都は規模が違うが、上記にように古着屋、古書店、中古家具屋、さらに車で30分もいけば本格的な温泉が数軒あり、居酒屋も多く、Joy Popという中古レコード店も再開した。こうしてみると弘前市は三浦さんが提唱する良い街の条件を全て備えている。

 

弘前の人は昔から新しいものが好きで、東京で流行るとすぐに弘前でお店を開きたくなるようだ。しかしながら敢えて苦言を呈すると、東京で流行っているものを直接、弘前に持ってきても、若者人口が2桁、3桁も少なく、そうした状況をよく考え、あまり尖った方法をとらないか、あるいは違って方法をとり、少なくとも経営的に長く続く体制を作って欲しい。東京で流行っているとすぐにそれを真似ても、結局はお客が来ないで、閉店してしまう。一つの方法は、近所にある宮本工芸で、ここではアケビ、ブドウ皮細工物を製作しているが、多くは県外で売れている。同様に医学部病院近くのイタリア料理サッシーノもお客の多くは県外の人である。これの変形として、二唐刃物は主たる収入は、鉄骨材料を製作しており、その傍らに刃物を作っており、これを県外、あるいは外国に売っている。市内、あるいは県内で稼ぐのではなく、県外、外国で稼ぐやり方である。

 

逆に地元の若者を対象にするなら、値段が安くて買いやすい商品も扱うべきであるし、皆が集まり会話する場所とするなら、喫茶店など日銭を稼ぐ場所も併用すべきなのかもしれない。さらに県外、あるいは海外を対象にするなら、これは東京の真似を超えて、完全なオリジナルなものを探していかなくてはいけない。たとえば、ファッションでいえば、青森発祥のBOROと呼ばれる古布を用いた衣服が世界的に注目されているが、その分野のパイオニアとなり、オリジナルな作品を発表していけば、可能かもしれない。あるいは家具、雑貨で言えば、地元産業、ブナコや刺子などとのコラボ作品などもヒントになろう。県外、あるいは海外で売るためには、東京の同業者の真似ではなく、それを超えなければ、わざわざ地方に来ない。よほどの覚悟が必要であるが、若者のこうしたチャレンジする勇気は応援したい。



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