2023年12月11日月曜日

未来は今とそう変わらない

 


まず上に挙げた懐かしいJR東海のコマーシャルを見てほしい。最初の深津絵里のCM1988年、次の牧瀬里穂のCM1889、高橋理奈のCM1990年、以下、だいたい30-35年前のCMである。山下達郎の名曲「クリスマスイブ」を使ったCMは今でも全く色褪せず、もはやクリスマスソングの定番になっている。動画をよく見ると東京駅もほとんど変わっていないし、駅に集まる乗客の服装も今とそんなに違わない。もちろん恋人を待つ女性の服装や髪型などはやや古臭いと思うが、それでもこのままの格好で、2023年の東京駅にいても違和感はなく、誰も振り向かないだろう。曲、風景、人物、空気感、そして恋人を待つ切なさも今とあまり違わない。私の娘や、さらに年齢の低い高校生が、このCMを見てもそれほど違和感はなく、いい映像と思うだろう。

 

よく考えてほしい、この35年という歳月を。私が20歳のとき、すなわち1976年の35年前は、なんと1941年、ちょうど太平洋戦争が始まった頃となる。1941年というともちろんテレビCMもないし、東京駅で恋人との別れのフィルムがあっとしても、まず列車は蒸気機関車、曲はどんな曲をつけようか。1941年のヒット曲を調べると、水原美也子の「心の日の丸」、高山美枝子の「別離傷心」があるが、さすがに古い。すべてが1976年当時と比べても違っており、何一つ一致点が見出せないくらいである。

 

それでは1988年と2023年の違いと言うと、まずコンピューターの進歩が大きい。インターネットは一般的ではなかったが、それでも私もNECのパソコンは持っていたし、すでにファミコンは1983年から、ゲームボーイは1988年から販売されていた。この分野も格段の進歩があったが、それでもその原型は1988年には存在した。一番の違いは、スマホであろう。アップルがI -phoneを開発したのが2007年、16年前である。その後の普及はご存じの通り、もはやこれなしの生活は考えられない時代となった。スマートフォーンはと呼ばれる商品で、世の中を一変させた。発明者のスティーブ・ジョブズの功績は大きい。

 

ではスマホのない2023年を想像してみて、1988年と比較してみよう。新幹線は少し速くなったが、ほぼ同じ、それは飛行機や船でもそうである。家の中を見回すと、まずテレビは、1988年はブラウン管テレビであったが、今は薄型テレビとなっている。洗濯機、冷蔵庫、エアコン、掃除機、炊飯器などの家電はほぼ同じであまり変化はない。車もガソリン車ということでは、性能的にも変わらない。会社に行く、電車、バスも同じである。週休2日制はすでに1988年当時でも大学病院ではあった。服装はどうであろうか。スタートレックで描かれる未来は、一枚の薄い布で、あらゆる環境でも適合する衣類が発明された設定になっているが、ヒートテックのような下着ができたものの、基本的にはほとんど変わらない。細かい変化はあるにしても1941年と1975年ほどの大きな変化はない。何しろ1941年にはほとんどの家電はなかった。

 

こうした変化のなさを一言でいうなら、文明の発達が停滞あるいは平坦化しているといえよう。戦後、家電の代表されるように、テレビができ、冷蔵庫ができ、洗濯機ができたように次々と新しいものができた、文明カーブというものがあったとすると急激な増加時期であった。その後、開発の限界が現れ、その時点で大きな進歩はなく、平坦化していく。110年前のタイタニック号と今の豪華客船との差は少ないし、1958年の就航したボーイング707と最新の708を比べると航続距離や最高速度などの基本的性能はほとんど同じである。どちらも技術的にはプラトーになっていくのだろう。

 

おそらく今後考えられる一番大きなブレークスルーは、核融合発電の実用化で、これができれば、電気量は格段に安くなり、全ての交通機関は電動となり、また家庭内の冷暖房も格安になろう。海水の淡水化も安くなり、世界中で米などの食料自給ができるようになる。今のところ核融合発電のコストは石油発電の1/6、石炭の1/3で、これだけ安くなれば、ほとんどのエネルギーが電気になろう。2050年になっても核融合発電が実用化されなければ、おそらく30年後の未来、つまり2053年の未来になっても、2023年現在とはそれほど違わない未来のように思える。できればスティーブ・ジョブズのようなブレークスルーを起こす人物が日本から現れてほしい。下のコカコーラのCMもほぼ35年前のもので、今の若者からすれば、むしろこの時代に行きたいという人もいよう。









 


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