2023年12月14日木曜日

最近の矯正歯科医

 

クリッピーC(トミー) これを使っている先生は意外に多い。 韓国でも人気


先月、久しぶりの大学矯正歯科の同門会が新潟で行われたので、参加してきた。若手の矯正歯科専門医と診療システムについて話す機会があった。私が開業したのが1995年なので約30年前であるが、開業する前に何軒かの矯正歯科専門医院に見学に行った。当時は多くの先生が装置の装着、ワイヤー交換からベンディング、あるいは技工までしていたので、私も開業した際には、全て1人でしようと思った。検査の時は、レントゲン、印象、口腔内写真を撮り、石膏を注いで、さらに固まったなら平行模型(ソーピング)製作までし、さらに機能的矯正装置、リンガルアーチも診療終了後に技工した。患者管理システムもファイルメーカープロで自作し、打ち込み、スライドの整理、保険のレセプト書きもした。家内と2人でしていたせいである。その後、衛生士、受付を雇い、かなり楽にはなっているし、平行模型などは技工所に発注して作ってもらっている。それでも現在もほとんどは自分でしていて、ワイヤー交換、ベンディング、技工物(多いのは保定装置)から、写真の整理、印刷、保険レセプト、紹介状、情報提供用紙打ち出しなどほとんど自分でしている。現在は、子供の患者を見ていないので、マルチブラケット装置の患者がほとんどで、1人の患者については15分をとっている。ワイヤーを外して、新たなワイヤーを曲げて、結紮するとこれくらいかかる。最近は外科的矯正の患者にはクリッピーというセルフライゲーションブラケットを使っているの、10分以内と速くなった。撤去の場合も全て自分でブラケットを外して、タービン、エンジンで綺麗にし、衛生士に印象をとってもらう。そして模型ができると、急いで上顎はベッグタイプ、下顎はホーレータイプの保定装置を作る。上顎は第二大臼歯の0.9mmサンプラ線の単純鉤、唇側は0,8mmの唇側線を曲げて、両者を銀ロウで引っ付け、研磨してレジンを盛り、お湯につける。ここまでその日のうちにして、次の朝に研磨して完成し、患者に装着する。リンガルアーチや、機能的矯正装置、パラタルバーなどの技工物も全て診療の合間か時間外に作る。保険診療のレセプトあるいは請求は、月に一回、日曜日か休診日の木曜日に3時間くらいかけて打ち込み、打ち出しをする。最近はレセプト枚数も80枚くらいあり疲れる。

 

長々と書いたが、私も含めて昔の先生は大体こんな感じであったが、最近の若い先生の場合、上記の作業のほとんどを衛生士、助手にさせるようである。まずワイヤーの交換はほとんど衛生士がする。018サイズの場合は先生がたまにベンディグをするが、022になるとほぼ口頭による指示だけとなる。もちろん検査、技工も先生はしないし、撤去あるいはレセプト打ち込み、打ち出しも従業員にさせる。先生がやる仕事となると、新患相談、診断、患者への治療計画の説明、紹介状、治療経過の把握くらいのものとなる。先生によってはセファロのトレースも衛生士にさせているところがある。衛生士、助手が5人ほどいれば、一日、60名から100名の患者を見ることは可能だという。私のところは、ほとんど全て1人でするので、一日、どう頑張っても40名、平日は大体20名くらいの患者を見ているが、逆に驚かれた。昔、アメリカの一般歯科の先生に日本では一日100名くらい見る先生がいるというと驚き、クレージーと言っていたが、アメリカの一般歯科の患者数は20名以下である。ところがこれは一般歯科の話で、矯正歯科の先生に聞くと、一日の患者数は200名という。一般歯科の場合は、麻酔、抜歯、形成など先生がしないといけない仕事が多いが、矯正歯科はやろうと思うとほとんどの仕事を衛生士、助手にさせられるからだ。この流れが日本でも最近は主流となってきている。県外から紹介されてくる患者さんの中には、ほとんど先生に見てもらったことがないという人もいる。

 

そのため、YouTubeなどで、例えばワイヤーベンディング、ロウ着などの動画を見ていても、遅いし、おぼつかない。さらに金属線の結紮に至っては、専用のプライヤーを使わないとできないようである。バードビークプライヤーのみで全てのベンディングができるし、ホープライヤーで結紮をしている。私のところでは、マルチブラケット装置の場合の基本セットはホープライヤー、バードピークプライヤー、ピンカッター、エンドカッターの4種類で、患者数だけセットを組んで、全て滅菌消毒して使っている。一方、衛生士、助手に調整をさせているところは、こうした感染予防システムはとっていないところが多く、たくさんのプライヤーをラックに置いていて、それを使い回しにしている。時代に逆行している。

 

矯正治療も患者が増えれば、アメリカ式の効率的な治療法がもとめられるであろう。ただアメリカのような一日に百名以上の患者が来るようなクリニックは少なく、一日の患者数が30名以下なら、スタッフに治療をさせてばかりだと先生は結構暇なのではと思ってしまう。若い先生は元気なのでもっと働いてほしい。


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