青森県の出生数は、昭和25年は46000人、私が開業した平成7年には14000人、そして令和5年には5700人まで減少している。速報では令和6年の出生数は5099人で、昭和25年の1/9、平成7年の1/3になっていて、人口減少傾向は凄まじい。婚姻件数は、昭和25年が12300件、平成7年が8300件、そして令和5年が3300件となり、それぞれ1/4、1/3なので少子化も浮き彫りにされている。青森県の人口は118万人なので、出生数は人口の0.4%となり、予想では2050年には人口は75 万人になると言われている。さらに深刻なのは、若い人が東京などの都会に行くことで、若者の数はどんどん減ってきている。
唇顎口蓋裂患者の頻度は500名に1人とされ、推定患者数は、昭和25年では青森県で92人であったのが、平成7年では28名、令和6年では10人程度になっている。当院の唇顎口蓋裂患者数を見ると平成7年から14年くらいまでは年間12名程度で、県内の半分くらいの患者が来ていたことになる。矯正歯科専門医は八戸市、青森市にもいるが、ほぼ半分くらいが来ていることになる。ところがここ5年ほどの患者数を見ると年間4名くらいになっており、出生数の減少と一致する。
これは全国的にも同じで、令和6年の出生数は686000人、推定患者数は1370人と数としては決して少なくないが、それでも少なくなっている。全国の形成外科を有する医学部、医科大学は74校、歯科口腔外科のある歯科大学は29校、さらに公立病院、私立病院でも唇顎口蓋裂の手術をするところもあるので、おそらく全国300以上の施設で手術を行なっていると思われる。そうすると一医療機関での年間手術数は5件以下となる。
口唇形成術(片側、両側)、口蓋形成術、骨移植術、鼻形成術、外科矯正、など口蓋裂患者に対する酢術は多岐に渡る。手術のレベルは経験数にも比例するので、少なくともベテランの領域に達すには、口唇形成術だけでも100症例以上の経験が必要となる。昔、宮崎医科大の口腔外科にいた時は、口唇口蓋裂の手術、全てに参加した。小さな領域の手術なので、通常は教授と私の二人だったが、ネーベンで主として鉤引きをしていた私でも手術は狭すぎてほとんど見えなかった。完全に術者のみが知り得る手術であり、個人で何症例経験したかが重要となる。それゆえ、完全に個人の才能の含めた臨床能力が手術の成否を左右する。
昔、世界の5つくらいの施設での、手術法の違いによる評価を調べた研究があった。結論は、手術法に違いより個人の技量による違いの方が大きかった。大学病院は教育機関で、口腔外科の専門医をとるために、若手の先生に手術させることがよくある。器用、不器用の差がきれいに出てくる。ある程度、数をこなすと力量は上がってくるものの、それでも個人の生まれ持った能力、手先の器用さも関係する。
一時期、日本のスポーツは低迷で、オリンピックでもメダルが減少してきた。その時にとられたのが、主として共産主義国家で取られていた方法、全国から優秀な人材を集めてナショナルトレーニングセンターで練習させることであった。水泳、卓球など多くの成果を上げてきた。同じように口蓋裂患者数の急激な減少を考えると、全国から優秀な形成外科、口腔外科医を東京、大阪の専門医療機関に集めて、そこでトレーニングしたらどうだろうか。本人の意思、あるいは所属機関長の推薦で、“国立口蓋裂センター”のような施設に派遣させ、そこで症例数を上げていき、技術を高めていく。そして世界トップのレベルを目指し、さらにいうならアジアでの口蓋裂患者の手術とその地域の医師の教育を目指す機関はどうだろうか。昔、日本の歯科口腔外科の有志がチェニジアに行って手術をしたような実績があり、双方にとっても大きな意味を持つ。
小耳症に対する耳介形成術は、全国で年間300件くらいあるが、半分は札幌医科大学の形成外科の四柳先生のところでしていて、ほぼ拠点化している。わざわざ札幌までいくのは大変だと思われるが、それでも全国から患者が集まる。口唇口蓋裂の手術ランキングを見ると、一位は昭和大学藤が丘病院で278例、二位は東京都立小児総合医療センターで140例だが、27位の長崎大学病院からは30例以下となる。この手術数はおそらく口唇、口蓋、あるいは再手術や骨移植術を含めた数値で、プライマリーの口唇、口蓋形成術の数は少ない。医師の技術の向上のためにはそろそろ集約化が求められる。薄く、広くよりは札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の5箇所、あるいは国立口蓋裂センターのような機関であれば東京と大阪の二カ所くらいで十分にカバーできると思われる。
少子化に対応した医療システムの構築が求められる。

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