先のブログで弘前のブランド化について述べたが、観光客からすれば、弘前城以外のもうひとつのキイが必要であろう。現在、弘前には博物館はあるが、美術館はない。博物館と美術館はお互い役割が異なり、弘前で言えば、弘前藩からの甲冑、刀などの武具、絵図あるいは古い津軽塗やこぎん刺しなどの歴史的な作品は博物館の範疇に入るが、奈良義智、佐野ぬいなどの現代美術は美術館の範疇に入る。
弘前は、多くの文芸家がいるところだが、同時に美術家も多い。古くは現在、青森県立美術館で開催されている平尾魯仙、そして野沢如洋、版画家の下澤木鉢郎などがいて、地元作家だけでも結構な数になる。
ラインアウトとしては、平尾魯仙、この画家は知名度が低く、必ずしも画家とは言えないが、全国的にもっと知られていい画家であり、その画法はユニークである。野沢如洋は生前の有名さに比べて、現在の評価は下がるが、すばらしい作品もある。また下澤木鉢郎は、棟方志功の版画の先生というだけでなく、津軽の風物を美しく描く版画家で、この人ははずせない。今純三も版画家としては入れたい。
日本画の工藤甲人、洋画家の奈良岡正夫も有名であるが、題材が形式化しており、あまりおもしろくない。それでも地元の作家としては入れるべきであろう。
現代絵画の分野では、色々な作家がいる。まず奈良美智は全国的にも知名度は高く、美術館の目玉であろう。松本市立美術館の草間彌生に相当する。さらに前女子美術大学学長の佐野ぬいさんの作品もすばらしい。また版画家としては天野邦弘さんの現代版画も入れるべきであろう。また岩手県出身であるが、長らく弘前大学の教授をしていた村上善男さんの作品も付け加えるべきであろう。
ざっと挙げるだけで、これだけの地元作家がいて、人材的には十分に美術館があってもよい土地である。場所は、吉井酒造煉瓦倉庫しかない。ローケションもよく、建物も風情があり、横浜、函館、金沢の煉瓦倉庫に匹敵する。これらを参考に周辺の施設を作れば、かなりいいものとなろう。モダンなものにするなら、いっそ現代美術館として、上記作家群のうち、奈良、佐野、天野、村上の作品を中心にする方法もあるが、私としては少なくとも平尾魯仙と下澤木鉢郎は入れてほしい。
吉井酒造煉瓦倉庫は内部の構成もすばらしく、耐震化などは大変であろうが、できるだけ現状を保持した形式で残してほしい。A to Zで味わった、あの感激は未だに、経験した美術展のベストスリーに入る。作品だけでなく、建物の威力を知った。
いい美術館ができればいいと思う。写真は上は平尾魯仙の妖怪図、下は紺屋町の魯仙の隠居所、再下段は佐野ぬいさんの絵である。
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