大学の推薦入試は近年、ますます多くなり、私立大学では入学者の半分くらいを推薦入試でとる。というのは今の試験方法では一人が何校も受験でき、大学で補欠合格者も多く出しても、実際の入学者を見込めないためである。推薦入試で確実に入学する学生をまず確保し、その後の一般入試で多めの合格者を出して調整するのである。
こうした私立大学の入試で、推薦入試がかなりのウエイトになっているにも関わらず、肝心の高校側があまり関心ない。うちの二人の娘の場合も、高校三年生の夏休みに担任に先生に相談に行ってもあまり興味はなく、娘が決めてきた大学の資料をざっと眺めて助言するだけであった。推薦入試に必要な志望理由書をまず私が字数制限を守って書いたが、それを担任に見せると、これじゃダメだという。何をぬかすかと思ったが、特に修正してくれるわけでなく、そのまま出した。多分、高校の教師程度の文章能力では、まともな志望理由書はまず無理であろう。東京では推薦入試向けの予備校があるようで、こうした予備校の先生くらいになると適切な助言ができる。地方に住む受験生は、ここですでに教育格差ができている。そこで少し、志望理由書の書き方と今後の方法を提示したい。
1. 高校時代にネタを作っておく
志望理由のネタと言えば、まず運動部の活動を考えるが、これは案外、ネタにならない。そもそも試験官、教授はスポーツで大学を入学した訳でなく、志願者の部活自体にあまり興味ない。一番書きやすいのが、ボランティア活動で、わずか1回でも高校中にボランティア活動すれば、それをネタに十分に書ける。それゆえ、ロータリークラブのインターアクトクラブなどが高校にあれば、これに入部するのも良いし、あるいは観光地で外国人相手の観光ボランティアをしても良い。うちの場合は、たまたまアメリカの高校生二人が別々の時期に4ヶ月間、うちにホームスティしていたことあり、これと国際交流を軸に文書にまとめた。この場合もロータリークラブの交換留学生を預かったので文として書けるが、個人で海外旅行してもそれを書くことはできない。公的なものでないと書けないことになっており、ロータリークラブで言えば、アクトの翼で台湾に行き、そこでホームスティした体験は推薦入試の書類に書けるが、自分で行った海外のホームステイについては記載できない。同じようなものはライオンズクラブやあるいは市や県で海外の姉妹都市に派遣する制度があるので、こうした機会を高校生の間に利用した方が良い。また弘前市に住む外国人の方との交流会などもあるので、市の広報などで確認し、参加するのもよかろう。行きたい学部と関連するような公的な行事、講演会でもいいので、まず出席すべきである。
2. 試験官の気持ちになって書く。
例えば関西の大学の場合、その問題点としては受験者が西日本に限定され、東日本、特に東北、北海道からの受験者は少ない。全国区の大学になるためには、こうした東日本からの受験生を集めたのが本音である。ここを狙う。どうして遠く離れた関西の大学を東北から受けるかという理由を志望理由書にきちんと書くことが大事である。志望理由を自分の体験と絡めて述べる。入社試験と同じく、嘘ではダメだが、話を膨らませるのは問題ない。例えば、キリスト教系の大学であれば、弘前の教会との関係をそれとなく含ませるがよかろうし、試験官になりそうな教授の研究テーマや論文をある程度、調べておき、それに少し触れる手もある。教授の研究のキイワードを少しずつ文に打ち込めば、そこに目がいく。要はどれだけ色々と調べたかである。
3. ありきたりのことは書かない
自己推薦文といえ、点数をつけて合否を決める。少なくとも限度文字数いっぱいに書くべきで、空欄があるのは絶対に良くない。さらに当たり前だが誤字脱字は減点となるし、行一字開けなどの文の決まりも守らなくてはいけない。こうした基本の上、内容はできるだけユニーク、論理的で内容の濃いものでなくてはいけない。例えば文学部ドイツ文学科に行きたいなら。“子供の頃、ミカエル・エンデのモモを読み、ドイツが好きになり、ドイツ語を少し勉強して、ドイツの高校生と文通し、彼と日本で再会した。ドイツに将来、留学したい”くらいのことは書かないといけない。行きたい学科によって単語を変えれば応用できる。
4. とりあえず推薦入試を受験しろ
学校の先生が何も言わないのか、弘前の高校生はあまり推薦入試を受けない。受験チャンスが多くなるのだから、私立の受験を考えている学生は基本的には受けるべきである。そしてこれも鉄則なのだが、絶対に一般入試では入れない大学を推薦入試では受けるべきである。かって推薦入学はランクを落として入ったものだが、今の推薦入試はランクを上げて受験すべきである。万が一合格できれば、もう勉強する必要はなくなるのだから、これはダメ元で受けるべきである。少なくとも推薦入試を受ける大学は、東京では慶応、早稲田、上智、MARCH、国際基督教大学、学習院、東京理科大学くらいであろうし、関西では関関同立、名古屋では南山大学くらいであろう。また偏差値の低い高校こそ、推薦入試の恩恵が大きい。というのはこうした高校の方が成績評定が高くなるからである。大学入試担当者からすれば、地方の高校のレベルなど知るわけなく、単純に評定をチェックするからだ。
今の入試制度は推薦入試も含めて本当に複雑であり、地方の公立高校でも入試担当教官を決めて対応すべきであり、これまでのように担任の先生にのみ任せては無理であろう。日本ではまだまだ学歴社会の要素が、とりわけ就職において残っており、どこの大学に行くのかは、子供達の将来に大きく関係する。であるなら、地方の高校でも比率の高くなった推薦入試制度を十分に研究し、生徒に適切な指導をするようにすべきである。
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