2007年3月8日木曜日

ブラケット8(リンガルブラケット)




外から見えないリンガルブラケットについては私は使っていませんので、あまりよく知りません。
このブラケットの発展には4人の日本人が大きく関与しています。まずブラケットと歯との接着剤を開発した三浦不二夫先生がいます。三浦先生がいなければこのブラケットはあり得なかったと思います。1978年という早い時期に神奈川歯科大学の藤田欣也先生が世界で初めてリンガルブラケットを発明しました。ただその直後にKurz先生のリンガルブラケット(写真 上)がオームコ社から出たため、それが世界初と誤解されているようです。現在、欧米ではこのKurz先生のものが主流になっています。私も87,8年ころ2症例ほど大学で隠れてこのブラケットを試しましたが、形が大きく、違和感も高く、また治療期間も長く、1年ほどで外側からの通常のブラケットに変えました。歯は外側に比べて中側はかなり個体差がありため、ブラケットの位置づけを患者さんごとに合わせる必要があります。そこでTARGという大げさな装置を使い位置決めを行い、それをそっくり写して歯にくっつけるというややこしい方法をとります。精度も非常に悪かったと思います。80年代あるいは90年始めまで、リンガルブラケットによる仕上がりは通常のそれに比べるとかなり劣る印象を持ちました。1998年に現在、長野の塩尻で開業されている広俊明先生が、日本矯正歯科学会雑誌に画期的な論文を発表されました。リンガルブラケットを正確に、簡単に位置づける方法です。一読しただけで非常に合理的かつ実用的な方法で、日本ではこの方法がすでにかなり普及していると思います。広先生の功績は大きいと思います。それに比例して最近のリンガルの仕上りもかなり良くなっています。先月も東京で日本臨床矯正歯科医会の例会に出席しましたが、大阪の布川先生のリンガルの症例など、本当にきれいに仕上がっており、今や期間が長い、仕上がりが悪いといったことはないと思いました。さらに最近、東京の竹元京人先生がStbライトリンガルブラケット(写真中)というものをオームコ社から発売しました。かなり小さく、違和感は少ないと思います。まらブラケット間の距離も長くなり、でこぼこをとる期間も減ると思います。またリンガルにセルフライゲーションを利用したものも出ています(写真下)。こればOvationという外側につけるブラケットを中に使ったものです。これなら結紮も簡単でしょう。
このようにリンガルブラケットは日本人に手によって、本当に良くなったきました。それでも口の内側での操作はやりにくく、外側とはかなり違った概念や器具、器材が必要なため私は行っていません。簡単になったとはいえ、正確な技工操作が必要で、技工士を雇うか、技工所に発注する必要があります。また診療時間もかかるため通常の治療に比べてリンガルの治療は治療費が1.5倍くらいになるのはどうしても仕方ないものと思います。

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