2007年3月24日土曜日

Q&A 床矯正はどうなんですか


テレビの番組で床矯正の紹介がありました。一般の先生方でもこの装置を使うところが最近随分増えてきました。床矯正の歴史は非常に古く、100年以上前から使われてきました。1980年頃まで、ヨーロッパは床矯正、アメリカはブラケットと二分化した状況が続いていました。これはヨーロッパでは矯正治療が健康保険に適用できる国が多かったため、比較的安価な床矯正装置が使われてきた歴史があります。日本でもブラケットを使った治療は非常に難しかったため、1970年ころまでは床矯正装置も割合多く使われていましたが、ブラケットの普及に伴い、現時点では矯正専門医で床矯正装置を積極的に使っているところはないと思います。
使わない理由は、後戻りが多いからです。上あごについては、17,8歳ころまでは正中口蓋縫合という上あごを左右に分割する縫合がまだ十分にひっついていないので、強い力で上あごを広げるとここの縫合が広がり、2,3か月で骨ができます。床矯正よりもっとがっちりした装置が使われ、予後も安定しています(毎日0.2mmくらい広げます。急速拡大)。ただ下あごのついては真ん中の縫合が生後すぐにひっついてしまい、このような方法ができません。ねじなどで広げると主として歯が移動します(多少骨も移動しますが)。下あごの糸切り歯と糸切り歯の幅は変化を加えることは難しく、広げると戻ります。これは舌と口唇の圧との平衡関係と関係します。現在よく使われるねじを使った床矯正装置はシュワルツの装置と呼ばれ、1930か40年ころのものです。その後、口唇からの圧を排除して後戻りを防ぐ、フレンケルという装置が脚光を浴びましたが、装置が複雑で最近はあまり使われなくなりました。下あごを手術で左右に割り、ねじで急速に広げてそこの部分に骨を作る方法も最近発表されています。
上あごは横に広げることができるが、下あごは非常に難しいというのが結論です。実際、でこぼこのケースでは上下とも広げる必要があるため、あまり拡大装置は使いません(上あごだけが狭いケースは積極的に広げますが)。
あまり過激で好きなHPではありませんが、http://www.kameido-kyousei.com/six/index.htmに無理して拡大された悲惨な症例が載っています。床矯正装置で拡大できるの下あごで2-4mmがいっぱいでしょう。

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